「セックスしない若者」と「セックスしたいと叫ぶ障害者」


 一方で、セックスをしたい、やりたいと宣言する脳性麻痺の男性もいる。番組の中では、そんな障害者の性欲に対応した派遣型ファッションヘルスで働いている女の子や、障害者の付添い人として彼らをソープランドなどに連れて行く人などがインタビューを受けていた。当たり前のことだが、障害者にも性欲はあるのだ。

 ただ気になるのは、障害者に対応したヘルスで働いている女の子が、普通に顔出しでカメラの前で喋っていたこと。通常のヘルス嬢であれば、こうした事態は起きないのではないだろうか。性風俗で働く女性は一般的にどこか後ろめたいものを持っており、堂々とカメラの前に立つようなことはないように思う。純粋にその女の子が自分の仕事に誇りを持っているということなのだろうが、明るく話す彼女には違和感を禁じえない。単に健常者を相手にするヘルスと障害者を相手にするのとでは、やはりモチベーションが違うのかもしれない。

 そのほか番組の中では、障害を持っている人同士の男女の出逢いパーティや、筋ジストロフィーの女性作家のヌード写真集を製作している脳性麻痺の男性の姿などを追っていたが、そこで描かれていたのは、障害者の恋愛や障害者のエロではなく、よくある恋愛模様とエロスだった。

 今の日本では、まだまだ障害者は弱者と捉えられており、それゆえ無垢な存在と思われがちだが、当然ながら彼らのなかにも良い人間も悪い人間も一般社会と同じようにいるはず。そして、もちろん性欲も同じだけある。当たり前のことだが、現代はそんな当たり前のことがタブー視されている、まだまだいびつな世界なのかもしれない。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)

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