全ての発言を振り返ってみると、森氏は確かに「なんとか頑張ってくれと思って皆見ておられたんだろうと思いますが、見事にひっくり返っちゃいましたね。あの子、大事な時には必ず転ぶんですよね。なんでなんだろうなと」と発言している。だが、その原因は団体戦に彼女を無理に出してしまったからだと分析しており「彼女が出て3回転半をすると、ひょっとすると3位になれるかもしれないという淡い気持ちでね。浅田さんを出したんですが。また見事にひっくり返っちゃいまして、結局、団体戦も惨敗を喫したという」と発言。
続けて「その傷が浅田さんに残ってたとしたら、ものすごくかわいそうな話なんですね。負けるとわかっている団体戦に、何も浅田さんを出して恥をかかせることなかったと思うんですよね。その、転んだということが心にやっぱ残ってますから、なんとしても転んじゃいかんという気持ちが強く出てたんだと思いますね。だからそういうふうにちょっと運が悪かったなと思って見ております」と述べている。
つまりは、勝算が薄かった団体戦に浅田選手を参加させてしまい、結果的にミスを誘発してしまった可能性を反省する言葉とも受け取られ、メディアで報道されているほどの傲慢さは感じられない。しかし「大事な時には必ず転ぶ」「団体戦は負けると分かっていた」などといった配慮に欠ける言葉が散見されるのは事実であり、リード姉弟を帰化させたという意味不明の誤認があるのも確かだ。
また、森氏は五輪後に開催されるパラリンピックについて「オリンピックだけ行ってますと、組織委員会の会長は健常者の競技だけ行ってて、障害者のほうをおろそかにしてるんだと。こういう風に言われるといけませんので。ソチへまた行けと言うんですね」とも発言。ソチ行きの飛行機の乗り継ぎが悪いことから「今また、その日程組んでおるんですけど『ああ、また20時間以上も時間かけて行くのかな』と思うと、ほんとに暗いですね」と語っている。長旅が大変なのは理解できるが、これも言葉遣いのワキが甘すぎる感が否めないだろう。
思ったことをそのまま言ってしまう森氏の豪快さは人間味があるともいえるし、マスコミが発言を切り取って失言の“捏造”をしている部分もある。だが、2020年の東京五輪・パラリンピックは日本の国家的イベントであり、ちょっとした舌禍で国益を損なってしまうことにもなりかねない。主役は選手なのだからリップサービスは程ほどにして、粛々と裏方として準備を進めてほしいところだ。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops)