明日、スポンサーがいない…抗議騒動の『明日、ママがいない』異例の事態で放送中止の危機

明日、スポンサーがいない…抗議騒動の『明日、ママがいない』異例の事態で放送中止の危機の画像1※イメージ画像:日本テレビ系『明日、ママがいない』公式サイトより

 過激な内容が物議を醸している連続ドラマ『明日、ママがいない』(日本テレビ系)の番組スポンサー3社が、22日に放送された第2話でCM放送を見合わせた。

 児童養護施設を舞台に様々な事情で親と暮らせなくなった子どもたちを描いた同ドラマは、第1話で施設長が「おまえたちはペットショップの犬と同じ」などと暴言を吐き、子どもたちに暴力を振るうなどの過激なシーンが描写された。これに対して、ドラマのモデルになった「赤ちゃんポスト」を設置する熊本市の慈恵病院や全国児童養護施設協議会などが「養護施設や里親制度への誤解や偏見を与えかねない」として放送の中止や内容改善を求めて抗議している。

 同協議会の藤野興一会長は「いかにフィクションとはいえ、当事者の子供たちはこれを見せられたらしんどい。自殺者が出たらどうするんだ、という思いだ」とコメントし、里親会の星野崇会長が「すでに辛い思い出がフラッシュバックするなどして傷ついている子供がいる。改善がなされない場合、番組スポンサーと話すことも考えている」と発言するなど、抗議は熾烈さを増している。

 この事態にスポンサーが動いた。第2話では、エバラ食品工業、JX日鉱日石エネルギー(エネオス)、キユーピーの3社がCM放送を取りやめ、その“穴埋め”としてACジャパンの公共CMが流された。3社とも抗議を問題視しており「視聴者や関係者の意見を考慮し、総合的に判断した」としている。

 第1話で提供スポンサーとして表示されていた花王、スバル、日清食品、三菱地所グループなど5社は第2話でもCMを放送したが、通常はオープニング後に紹介される提供スポンサーのテロップや、おなじみの「この番組はご覧のスポンサーの提供でお送りします」というナレーションはなかった。

 今回のようなスポンサー対応の前例としては、同じ日本テレビで05年に放送された天海祐希主演の連続ドラマ『女王の教室』がある。過激な内容によってスポンサーに苦情が殺到し、第5話~8話にかけて全スポンサーの提供クレジット表示を取りやめ、その後もクレジット表示が一部スポンサーのみになった。しかし、この時はクレジットはないものの各社がスポットCMのような形で放送しており、完全にCMを見合わせたわけではない。

 一連の抗議について、日テレ側は「子どもたちの視点から『愛情とは何か』を描く趣旨」「最後までご覧いただきたい」と強気のコメントを発表しているが、生命線ともいえるスポンサーが次々とCM自粛する可能性も浮上してきた。

 打ち切りもあり得る緊急事態に、あるテレビ関係者はこう憤る。

「苦情を恐れて誰からも批判されないような番組ばかりになったら、テレビは味気ないものになってしまうでしょう。『実態と違う』といっても、全てのドラマは大なり小なり誇張があるし、あくまでフィクションです。『子どもがイジメられる』という批判もありますが、それはこのドラマに限った話ではなく、昔からアニメやバラエティーなどの影響でも起きていたこと。もしイジメが起きたとすれば、問題の根本は作品ではなく、ドラマの影響で友達をイジメるような子どもが育った家庭や学校の環境の方ではないでしょうか」

 一部では「騒動で話題になったことで視聴率が急上昇するのでは」との推測もあったが、第2話は13.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で第1話から0.5ポイント下がった。しかし、関西地区では13.9%(同)と1ポイント上昇しており、放送中止を要請している慈恵病院がある北部九州地区では14.2%(同)と第1話の10.1%から4.1ポイントの大幅アップを記録している。

 もしスポンサーの意向で内容が変わったり、放送中止になるようなことになれば、これは表現の根幹にかかわる問題ともいえるだろう。その一方で、民放テレビは「お金を出してくれるスポンサーありき」の仕組みであることも事実。果たして、日テレは今後どのような決断を下すのだろうか。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops

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