車、自転車、CDにDVD、貸衣装など、世の中には数多のレンタル品に溢れているが、最近では「人間」のレンタルが流行っている。
恋人がほしいけど時間がない(時間がないだけが理由ではないだろうが)人には「レンタル彼女/彼氏」を、結婚式をするのに友達が誰もいない人には「レンタルフレンド」を、伴侶に先立たれて孤独な日々を過ごしている人には「レンタル家族」を、と一昔前まではSFでしか見なかったものが現在では若年層からシニアまで需要が増えている。そんな中、独身女性にはありがたいレンタルサービスが大阪で生まれたのをご存知だろうか。
30歳過ぎて仕事に忙殺され、年末年始くらいは…と久しぶりに羽を伸ばしに実家に帰ったはずが、「誰かいい人いないの?」「お隣の○○ちゃん、結婚したのよ~」「孫の顔を見せるのが親孝行ってもんでしょ!」と、親をはじめ親戚一同から総攻撃を受けて針のむしろで正月休みを過ごした独身女性も多いだろう。
現代女性の経済的自立により高まる女性の社会参加は、未婚率の上昇にもつながってくる。2010年総務省統計局の国勢調査では、30代女性の未婚率は全国平均で約28%、東京都に限って言えば約34%が未婚であるという結果が出た。「結婚・子育てこそが女性の幸せ」なんて今どきはナンセンス、と本人は思っていても、昭和を引きずる親世代にとっては由々しき事態なので、独身女性には耳の痛い話である。
そういった独身女性をターゲットに「Noie」という会社がサービスを開始したのが「借りちゃ夫」というレンタル夫サービスだ。現在登録している「夫」は、大学生やフリーター、会社員などの本職を持っている20代から50代の心優しい男性ばかりなのだとか。もちろん「その場限りの夫役」としてのレンタルだけではなく、「不安な夜のジョギングや深夜帰宅のガードマン役として」「組み立て家具の組み立て作業、草むしり、屋外での力作業もお手伝い可能」など、様々な用途での利用を提案している。ただし、当然といえば当然だが、性的なサービスは厳禁。レンタル彼氏のようなドキドキよりも、コンシェルジュのようなの安心感を提供するのだという。あくまでもプロフェッショナルとしての存在であり、それ以上でもそれ以下でもないということだ。
女性も当然のように仕事を持ち社会に参加することで、女性の生き方もどんどん多様化してくるだろう。結婚という制度に縛られず、自由に生きたい女性の生き方を尊重したときに生じる「男性がいないと困る場面」では遠慮なく頼ってくれ、ということなのだろう。
女性ひとりで生きて行くと決断するにはまだまだ厳しいのが現状ではあるが、だからといって、すべての独身女性が必要とするサービスではないだろう。学生時代の気の置けない男友達がいる人もいれば、頼りになる兄弟がいる人もいる。しかし、どうしても困ったときに頼りになるサービスがあるというのは心強いもの。生きていく上で自分なりの保険がたくさんあったほうがいいのは、老若男女を問わず関係ないものなのである。
(文=三坂稲史)