50年前に雑誌に掲載された記事「21世紀のセックス」の的中率は

0106sexyteller_fla.jpg※イメージ画像 photo by Moonglow Burlesque from flickr

 将来、生活や社会環境がどのように変化するか、そうした雑誌の特集やテレビ番組はしばしば企画される。時代の進歩や発展とともに、日々刻々と変わっていく日常生活。では、人間が有史以前から続けてきた性生活は、今後どのように変わっていくのか。それとも、かわらないのか。

 その手のもののひとつとして、月刊誌『キング』1957年5月号に「21世紀のセックス」という記事が掲載されている。筆者は、セックスについての著書や記述も多い医学博士の竹村文祥氏である。

 竹村氏は人間の脳が数千年前に比べてほとんど進化していない、変わっていないということを前置きしてから、予想されるセックス状況について分析していく。

 まず、平均寿命の延びが加速することから、「おじさま族と若い娘たちの交遊は一層頻繁となるに違いない」と予測しているが、これはすでに20世紀末から実現している。さらに、「その一方で、命ばかり長らえて社会の寄生虫となる老人も多く」と、厳しい予想もしているが、こちらも現在そして今後の深刻な問題として現れてきている。

 ところが、次に竹村氏は「未婚者は実質的に今よりずっと減るであろう」と述べる。この場合の既婚者とは、竹村氏はどうやらセックス経験や事実婚のことを想定しているようだ。続けて「結婚前の処女はいよいよ少なくなるにちがいない」という点は的中しているが、「結婚前の童貞が今でも少ないように」という点については、現在の童貞の男性が増えつつある可能性をみると、竹村博士の予想はハズレのではなかろうか。

 

0106sexyteller_sub.jpg※画像:『キング』昭和32年5月号

 竹村氏は恋愛やセックスが今後より自由で解放的になると予想したのであろう。その予測は概ね当たっている。だが、モテる者とモテない者の格差と、そこから派生したいわゆる非モテという人々の登場は、博士も予想外だったことだろう。

 次に売笑すなわち売春については「ほとんどそのあとを絶つにちがいない」と述べているが、現在の日本でも、そして世界的に見ても、依然としてさまざまな形で存続している。だが、女性の男性化、男性の女性化を指摘し、とくに女性の男性化が加速すると強調している。その影響によって、男性が「考え方や行動はいよいよ早漏性、脆弱性になるであろう」と言及しているのは、今日のいわゆる草食系男子の登場を予見しているかのようである。

 さらに竹村氏は産児制限について触れる。「夫婦、とくにわかい人たちは活発に産児制限を行うようになるであろう」という指摘はまさにその通りである。現在、スキンは街中でとても簡単に購入できるし、女性用のピルも婦人科で普通に処方してもらえる。避妊についての抵抗は、ほとんどないといえるだろう。ピルについても、有効でしかも副作用に少ない製品が開発されている。ただし、ピルが「希望配布され、あるいは政府の手によって無償で配布されるように」という状況にまではなっていない。また、「コンドームの生産は地におち、わずかに最後の息をとどめるにすぎない」という状況ではない。感染症予防の見地から、スキンは現在でも盛んに使用されている。

 もっとも、竹村博士の主眼は、経口避妊の普及による女性の解放であると思われる。セックスと妊娠において女性が主導権を握ることにより、より性的な文化が前進するのだと考えたのだろう。「二十一世紀の文化はこうしてフェミニズム文化のより濃厚な表現を約束するであろう」と竹村氏は断言する。

 では、21世紀を竹村氏は理想的なセックスが実現する社会と考えたかというと、その答えは否定的だ。たかが100年程度で、「全く新しいものは何も期待できまい」と博士は失望する。博士は「二十世紀の西欧文化はデモクラシーをとなえ機会均等を叫びながら、依然として強大な男性支配のかげに無数の冷感症をつくる時代」と言及する。そして、最後に21世紀について次のように締めくくる。

「その性文化はおそらく古代エジプト、古代ギリシャ、二十世紀西欧文化の三本足の上に立った似非フェミニズム文化にすぎないであろう」
(文=橋本玉泉)

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