不況のあおりでギャラ相場が下がり続けているテレビ業界。多くの芸能人が知名度を武器に副業に精を出しており、特に女性タレントはファッションビジネスに熱心になっている。飽和状態のため新規参入は非常に厳しくなっているほどだが、その中でも別格の勢いをみせているのがモデルの梨花(40)と元AKBの篠田麻里子(27)だ。
発売中の「週刊新潮」(新潮社)では、そんな二人のショップの比較対決させた記事を掲載している。
梨花は昨年4月、東京・代官山にライフスタイルショップ「Maison de Reefur」をオープン。ルームウェア2万円、ビーチタオル6000円、メモ帳1000円などアイテムの価格設定は高めだが、そのセンスの良さがウケて開店1週間で1万人以上が殺到した。当初の売上目標は年間4億円だったが、今年3月までの1年で目標を大きく上回る売上12億円を達成した。
同誌が現地調査したところ、午後3時から8時までの5時間で938人が来店。客層は20代後半から30代の女性が多く、その約1割の90人が商品を購入していったという。高めの商品が多いことを考えると、かなり販売効率はいいといえるだろう。経済的に余裕のあるアラサー女性をメインターゲットにしたことが功を奏したといわれ、いまだに人気は全く衰える気配がないようだ。
対する篠田も数字的には負けていない。昨年12月にファッションブランド「ricori(リコリ)」を立ち上げて、今年2月に「ルミネエスト新宿」に1号店をオープン。3月には大阪に二店舗、8月には地元・福岡にも出店した。1号店の開店初日には約700人が詰めかけ、10代から20代前半の女性を中心に話題となり、今年4月からの全店総売上げは約10億円。11月からは札幌に期間限定店も登場しており、非の打ちどころのない順風満帆さに見える。
だが同誌が梨花のショップと同じ時間帯に調査すると、来店客は675人だったものの購入者は僅か18人という結果だった。ほとんどの客がウインドーショッピング、つまりは冷やかし目的であり、滞在時間も5分以内が大半だったという。開店当初の人気ぶりから比べると、かなり盛り上がりは落ち着いてしまったようだ。これについて同誌は「AKB48人気に支えられた一過性のブームに過ぎなかった」と分析しており、アイテムのクオリティも梨花の店と比較すると落ちると指摘している。
「梨花のショップは、値段は高めながら品質に妥協がないのが好印象。メインターゲットであるアラサー女性の『少し高くても良いモノを持ちたい』という需要と完璧に一致しています。一方、篠田の店は10~20代前半がメイン客層ということもあり、多少値段設定は低くしているのですが、それが非常に中途半端。例えば、リボンのついたラメ入りタイツが4000円で販売されていますが、同じラメ入りなら量販店で1000円台で買えますからね。ドット柄のフリル付きソックスも1足1500円という値段ですが、似たようなものが別の店なら半額であります。高品質というわけでもないのに半端なブランド価格のため、若い子は手を出しにくい」(アパレル関係者)
篠田の「ricori」は景気のいい話ばかりがメディアで喧伝されているが、実は大阪の心斎橋店がオープンから僅か半年でひっそりと閉店している。AKBを卒業したばかりの時期のブランド立ち上げでスタートダッシュは爆発的だったが、息切れが心配されているようだ。
「実は『ricori』の生命線はメンズ物だったんですよ。オープン当初、店に数百人が詰めかけたといいますが、その多くが熱心な篠田ファンの男性だった。『女の子に魔法をかけた1枚の服』というブランドテーマを掲げながら、なぜかメンズ物を扱っているのは、男性ヲタの買い支えを期待しているからです。しかし、これも篠田のアイドルとしての旬が過ぎれば激減していくでしょうね。それに危機感を抱いたのか、最近は篠田の名前をあえて押し出さない方針にしていますが、商品の魅力だけで勝負するのは厳しく余計に客離れを招いている。現在は全国主要都市に展開していますが、近いうちに縮小していくのでは」(前同)
立ち上げから一年を待たずに黄色信号が灯っている篠田のブランド。水物の人気で渡り歩けるほど、ファッションビジネスは甘くはないようだ。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops)