番組改編期に伴う秋の特番期も終盤に入り、続々と新番組がスタートしている。そんな中、大物たちの新番組が初っ端から苦戦を強いられている。特に、TBS系で始まったダウンタウンがメインを務める『100秒博士アカデミー』とウッチャンナンチャンの内村光良が司会をする『内村とザワつく夜』の視聴率がいずれも低視聴率を記録し、話題を集めている。
22日にスタートした両番組。その視聴率は、『ザワつく夜』が平均4.0%で『100秒博士』が6.2%(共にビデオリサーチ調べ・関東地区)と21時・22時台としてはお世辞にも褒められない数字を記録。こうした現状にネット上ではダウンタウンや内村といった大御所芸人たちが、いかに視聴者に求められていないかということが浮き彫りになったと囁かれている。
ダウンタウンらの世代の芸人が不要かどうかということはさておき、確かに今のテレビバラエティ界では芸人たちに対する扱いが変化してきている。たとえば最近では、ディレクターや俳優などが海外ロケに行ったVTRをスタジオの芸人たちが見るという構成が流行している。いくつか番組例を挙げると、『世界の村で発見!こんなところに日本人』(テレビ朝日系)、『ホムカミ ~ニッポン大好き外国人 世界の村に里帰り~』(TBS系)、『世界の日本人妻は見た!』(TBS系)、『YOUは何しに日本へ?』(テレビ東京系)、『世界ナゼそこに?日本人』(テレビ東京系)、『世界行ってみたらホントはこんなトコだった!?』(フジテレビ系)などなど。いずれも昨年春から今年の秋にゴールデンタイムで放送を開始(またはリニューアル)した新番組ばかりだ。
かつて海外ロケの主役といえば若手芸人というのが定番だった。しかし、今ではその座は裏方であるディレクターや他ジャンルのタレントが担っている。若手芸人不足というわけではないのに、なぜこうした事態が起こってしまったのだろうか。以前、民放キー局に出向していた経験を持つ現役の制作会社関係者に聞いてみた。
「VTRとはいえゴールデンタイムで流すには名前の売れている芸人が必要になってきます。しかし、今の時代は、名前が売れているからといってレギュラー番組を持っているような芸人さんというのは意外と少ないんですよ。たとえばFUJIWARAさんなどがいい例だと思います。ただ、そうした芸人さんというのは、レギュラーがない代わりにイベントなどの営業が多くて、スケジュールが組みづらく、それゆえ長期の海外ロケなどには向いていないんですよ。突発的な仕事も多いですから。逆にレギュラーの確定している芸人さんのほうがスケジュール調整は楽なんです。しかし、そうした芸人さんというのは、ギャラも高ければ、だいたいスタジオのひな壇芸人より格が上ですからね。VTR出演だけというわけにはいきません。そうした結果、ディレクターや俳優さんなどが海外ロケに行くようになったわけです」(制作会社関係者)
この関係者は、ディレクターがVTRを撮ってきてスタジオでそれをタレントが鑑賞するというスタイルの元祖は『笑ってコラえて』(日本テレビ系)と指摘する。そして、『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)のように、若手芸人を現地ロケに使い、それを成功させている例があることを踏まえつつも、こうしたスタイルの番組が今のバラエティの流行であることを認める。
「『イッテQ』のように、海外ロケに最適な若手芸人(イモトやチャンカワイなど)を見つけるのは大変な勇気と覚悟が必要なんですよ。ほとんどテレビでの実績がないような芸人をゴールデンタイムに使うということですからね。失敗すれば、その芸人を選んだ人間の責任というのは明白です。たとえばイモトなど、番組オーディションを受けた際は、まだタレント養成所に所属していたんですが、その目の輝きとヤル気が圧倒的だったため何の実績もないのに抜擢されたと聞きました。その決断というのはなかなかできるものではないですよね。今、海外ロケ番組を担当している制作サイドに、そうした勇気と覚悟を持ったスタッフというのは少ないのではないでしょうか。もちろん、テーマによってはそもそも芸人を使う必要がないということもあるでしょうが、ディレクターが撮ってきたVTRを芸人さんが見て、それにダメ出しを言うような構成は疑問が残ります」(前出)
表に立つことに関しては素人であるディレクターがVTRを撮ってくることで生まれる面白さというのはあるだろう。これまで散々芸人が担ってきた役割を、別ジャンルの人間が担当するということで新鮮さを回復するということもある。だがそれはあまりにも増えすぎた芸人たちに視聴者が飽きてきている証拠なのではないだろうか。裏方であるディレクターが表舞台に出て海外ロケを行う番組の流行は、テレビバラエティの大きな転換期を告げている。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/)
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