『ピカルの定理』ゴールデン進出わずか半年で打ち切り! 早すぎる終焉の理由

pikaru0822main.jpg※イメージ画像:フジテレビ系『ピカルの定理』オフィシャルサイトより

 『ピカルの定理』(フジテレビ系)が9月4日の放送をもって終了する。今年4月にゴールデンタイムに進出したばかりだったが、わずか半年での打ち切りとなった。

 2010年から深夜帯でスタートした同番組。「ビバリとルイ」などのコントが人気を呼び、2012年には新たなメンバーを加えプライムタイムに昇格。そして今年の4月に、満を持してゴールデンタイムに打って出た。しかし、世代交代を思わせる『はねるのトびら』の放送枠進出も、視聴率は伸び悩み、7月24日には6.4%を記録。復活の兆しを見せる間もなく、終わることとなった。

「やはり番組終了の最大の要因は視聴率の低迷ということになるでしょう。あれだけ局全体でプッシュしておきながら、深夜帯と同じような数字しか取れないのでは、これ以上続けるのは難しいと思います。かつて、北海道テレビで人気を博した『水曜どうでしょう』が、プライムタイムで高視聴率の連続だったことから特番でゴールデンタイムの放送を試したのですが、ほとんど数字は変わらなかったということがありました。つまり、どの時間帯でも見る人間は変わらないということです。『ピカルの定理』も、深夜で続けていれば、それなりに息の長い番組になったのかもしれませんね。そんなことを言っても後の祭りですけど、フジテレビ特有の、深夜で人気を得てゴールデンに進出という流れには限界が来ているのでしょう」(業界関係者)

 また、別の関係者は、『ピカルの定理』の打ち切りについて、こんな要因を挙げる。

「たとえば、『みなさんのおかげでした』(フジテレビ系)には、不動の人気企画『食わず嫌い王』があります。こうした企画の良いところは、一度人気が確立すれば、その後は惰性で続けられるということですよね。セットも同じでよければ、ゲストも話題の人や何か宣伝がある人を呼べばいい。とんねるずという才能があるので、取り立てて台本を練らなければならないわけでもない。つまり、スタッフにとって、この上なく楽なのが『食わず嫌い王』というわけです。お金もかかりませんし。もちろん、そんな企画が簡単に出来るわけではありませんけど。ただ、番組制作者とすれば、そうした企画を立ち上げるのが1つの目標になるわけです。特に、フジテレビというのは、そうした鉄板の企画を生み出そうという空気が強い気がします。今回、終了が伝えられている『ピカルの定理』でも、どうにかしてそんなコーナーを作ろうと必死だったような気がします。しかし、なかなか簡単にはいきませんでしたね。『食わず嫌い王』のような企画というのは奇跡のようなものですから」(バラエティ放送作家)

 確かに、『ピカルの定理』の人気コーナーといえば、「ビバリとルイ」や「白鳥美麗物語」といったコント形式のもの。こうした企画では、構成や台本に大きな時間を割かなければならない。ゲストを呼んでフリートークを展開するだけのコーナーとは違い、スタッフや演者の準備は大変なものになるだろう。若手人気芸人の集まる同番組では、なかなか成立させるのは難しい。たまにパロディコントをすれば、先日放送された「半ケツ直樹」のように、安易で下品なものになってしまうのがオチだ。そこで考案されたのが又吉直樹(33)のフリーキックコーナーや「テブラーシカ」などだったのだろう。こうした体を張った企画では、多忙を極める出演者の負担を軽減できるというわけだ。

 しかし、芸人の面白さがそのまま現れる企画というのは出演者の真の力量が問われるもの。たとえ『ピカルの定理』で「食わず嫌い王」のような名企画が生まれても、これだけ短期間で番組が終了してしまう出演者の力では、面白さは半減してしまっただろう。

 一方、今もっとも小中学生から人気があるといわれている『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)は、「温泉同好会」や「世界の祭り」などの人気企画を生み出しながら、演者による内容が伴わなければ極端に短く編集して笑いを取るなど、何よりも視聴者の面白さを優先している。つまり、『イッテQ』では、たとえ演者が面白くなくても、その面白くないことをネタにして、視聴者に提供しているというわけだ。

 演者はさておき、あくまでも視聴者目線の『イッテQ』とスタッフやキャストの都合を考えたかのような企画ばかりを放送する『ピカルの定理』。不動の人気バラエティとわずか半年足らずで打ち切りとなった両者には、番組作りに対する姿勢の違いがはっきりと見えてくる。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
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