佐々木心音の“女優魂”とは
劇画家として、また、脚本家、映画監督として、『天使のはらわた』シリーズや『GONIN』『ヌードの夜』といった名作を数多く送り出してきた巨匠・石井隆。そんな氏の待望ともいえる最新作『フィギュアなあなた』が、ついに公開される。
壮絶なパワハラのすえ、居場所を失ったオタク青年(柄本佑)が出会った一体の等身大フィギュア。そんな彼女が意思を持ち、愛欲の世界に溺れていく、オトナのダークファンタジーともいうべき本作。ヒロインである等身大フィギュアを演じたのが、今やDVD売り上げでトップを邁進する佐々木心音だ。これまでに杉本彩や喜多嶋舞、佐藤寛子といった女優たちを裸にしていった石井監督作品の例に漏れず、彼女も大胆なヘアヌード姿を全編にわたって披露している。
そんな彼女に今回、メンズサイゾーが独占インタビューを敢行。映画初主演にして巨乳もヘアーも惜しげなく晒し出した、石井ワールドのニューヒロインの“生の声”をお届けしよう。
■裸でのワイヤーアクションは「ダークなピーターパン」って感じでした(笑)
──今回の『フィギュアなあなた』は、心音さんありきの企画だとお聞きしたんですが?
佐々木心音(以下、心音):今までずっと舞台などでお芝居をやっていて、「いつかは映画とかもやってみたい」って言い続けてたんです。そうしたらどこからかその情報が伝わったらしく、本作のプロデューサーが私のDVDを石井監督のところに持っていったそうなんです。テニスの格好でラケットを胸に挟み、ずっとピョンピョン飛んでるシーンを見て、その懸命な姿を“いいな”って思っていただいたみたいで’(笑)。
──ちなみに原作(『無口なあなた』)はお読みになりました?
心音:はい。ヒロイン(マネキン)が、なんだか自分に似てるなって思いましたね。彼女が自分から行動を起こして「このダメな人を変えなきゃ」っていうんじゃなく、「あなたはそのまんまでいいんだよ」って優しく見守るキャラクターだったので、それがとても暖かい感じがして。その感じがちょっと自分に似てるなって思いました。
──これまで石井隆監督の映画はご覧になられてましたか?
心音:映画に入る前に『ヌードの夜』の昔の(『ヌードの夜』93年 主演:余貴美子)と、最近の(『ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う』10年 主演:佐藤寛子)を観ました。あと『GONIN』(95年)も。どの作品も額縁に入りそうな画の綺麗さがあって、それでいて人間臭さが匂ってきそうなものばかりですよね。
──石井作品のヒロインって割と幸薄い雰囲気の女性が多いけれど、本作のヒロイン、ココネはそういった印象とはちょっと違うタイプですよね。
心音:でも、どっちかというと幸薄いほうですよね。顔なんか特に(笑)。
──撮影に入る前に、監督から具体的な指示とかはありましたか?
心音:特になかったですね。下の毛を生やして欲しいというくらいで(笑)。そのときはグラビア仕様で脱毛していたので、(監督的には)脱毛しないほうがよかったんでしょうね。
──アンダーヘアに執着してらしたんですね。本編を見ていると、ほとんどのシーンで下半身丸出しですもんね。
心音:そうですね。(パンツとかを)履いてるシーンの方が珍しいですからね(笑)。
──裸のシーンが多かったことへの感想は?
心音:そこは幼少期に帰ったというか、開放感に溢れてて私は楽しんでました(笑)。小さい頃は裸で公園で遊んだりとかしてましたから。スッポンポンで水浴びしたりとか。
──本人がそこまで開放的だと、かえって撮影スタッフのほうが緊張したんじゃないですか?
心音:監督とか現場に慣れてる方々はそうでもなかったんですけど、若いスタッフとかは、ちょっとドギマギしていたみたいです。私が楽屋とかで待機しているときも、スッポンポンでいたんで(笑)。
──実際に撮影に参加されて、石井監督の印象はいかがでしたか?
心音:「ものすごく怖い人だから気をつけて」って皆さんに言われててビクビクしてたんですけど、全然そんなことはなく、熊さんみたいに大らかに「心音くん、今日もパンツを履いていないねぇ」って(笑)。あまりにも抱いていた印象と違いすぎて、拍子抜けするくらい可愛らしい方でした。
──今回の作品ではアクションシーンも多く、撮影は大変だったんじゃないですか?
心音:初めてアクションをやらせてもらって、撮影前に三日間くらい稽古させてもらったんですけど、もともといろんなダンスとかやってたんで、足の上がりがいいということで、アクションの先生が「蹴りのシーンを絶対いれて欲しい」と監督に言ってくれたんです。だから大変ではあったけど、とてもやりがいがありましたね。
──けっこうワイヤーで吊り上げられるシーンが多かったですね。
心音:それは肉体的に辛かったですね。本来のワイヤーアクションの場合、股と身体のところの二カ所を一緒に吊るんですけど、今回はお腹だけ腹巻のような状態で吊られたんです。私は意外と骨太なんで、すぐ(支えてる部分が骨に)当たるんですよ。それが痛くて大変でしたね。でも、いざ吊られてみると、自分がピーターパンになったような気分で楽しくて楽しくて(笑)。
──ずいぶんとダークなピーターパンですね(笑)。
心音:しかも下半身が丸見えですし(笑)。
──でも、かなり高いところに吊られてましたよね。怖くはなかったですか?
心音:監督も心配してくれたんですけども、「いや、楽しいです」って言ったら「君、ちょっとおかしいよ」って(笑)。
──今回の役は、モノ言わぬフィギュアじゃないですか。何も言わずにただ寝てるだけみたいな。そのへんでツラかったとか、キツかった点とかありました?
心音:クランクインするくらいのタイミングで監督から「目をずっと開けてて、お腹で息を吸わないで」って言われたんです。つまりはお人形さんみたいに、って。けれど撮影では背中を反った状態で寝ているシーンが多く、そのときにちょっとしたことでお腹が動くんで、それを抑えるのがツラかったですね。しかも現場がとても暑くて、おまけに緊張して筋肉を使ってるんで、けっこう息が上がるんですよ(笑)。
──映画初主演ということで、グラビアや舞台や音楽活動など、心音さんが今までやってこられた表現との具体的な違いを感じることってありましたか?
心音:グラビアは自分の中の女性らしさをいくら出せるかという意味で「被写体のもの」だという意識を強く覚えるし、舞台はライブ感が「役者のもの」という思いを与えますけど、映画は「監督のもの」って印象を受けましたね。あと、映画は自分じゃないものを完璧に演じなきゃいけないから、他人になれるっていう感覚にひたれますね。
──初主役でいきなりフィギュア役という「演技をしない演技」を要求されるのはハードルが高いですよね。いろんな演技を経験した果てに演じるのならともかく。
心音:なにより無表情で動かない役なんて、私がいちばん苦手な役柄なんです。どっちかっていうとギャーッとなったり暴れまくったりする爆発型の演技が得意なんで。だからけっこう悩みました。台詞ひとつをとっても。あまり生々しく人間ぽくやらない方がいいんじゃないかって、いろいろと考えちゃって。
──でも、グラビアアイドルが世に多数いるなか、心音さんのDVDが売り上げトップを保ってるのは、そうした表現欲への追求があるからなのでは?
心音:私を初めて見て知ってくださったみなさんから、あんまり演技ができないし経験がないからフィギュア役だったのかって思われると悔しいじゃないですか。少なくともそう思われたくないっていう思いは強くありました。でも、そう見られたところで「わかる人はわかってくれるからいいや」って気持ちも支えになってましたけど(笑)。