思わぬところで思わぬ人にばったり出くわすことがある。私事で恐縮だが、先日六本木でたまたま友人と遭遇し、たいそう驚いたことがあった。これだけ人口が多い東京の、しかも六本木で友人に会うとは、世の中広いようで、案外狭いものだ。また、異業種交流会の席に偶然知り合いが出席していたこともある。同業種交流会ならそういった偶然もあるだろうが、異業種交流会で知り合いに会うケースはレアと言えるだろう。
上記のように、道や交流会の場でばったり会うぶんには何の問題もないが、性的なシチュエーションで知人に会ってしまうことほど気まずいものはない。しかし最近は、「気まずい偶然」が多発しているようだ。その背景には、「出会い系サイト」の存在がある。
九州在住のA氏は、出会い系サイトを介して、とある女性と待ち合わせることになった。しかし実際顔を合わせてみたところ、どうにもこうにもタイプではない。いわゆる、「生理的に受け付けない」というやつだ。まあ、ここまではよくある話である。
急用が入ったと嘘をつき、そそくさと退散してきた彼は、気を取り直して別のサイトにアクセス。すぐに相手が見つかり、再度待ち合わせを試みたところ、現れたのはさきほどの女性で、たいそう気まずい思いをしたとのこと。
考えてもみたら、出会い系の利用者たちは、様々な名前を使い分けつつ同時進行で様々なサイトにアクセスしているもの。同一人物と会ってしまうことも大いにありえるだろう。
さすがに都心では、上記のような悲劇(!?)は少ないかと思いきや、一般男女からエピソードを募ったところ、様々な「気まずい偶然」体験が寄せられた。多いのが、「共通の友人がいる人と出会ってしまった」というパターン。つまり、当人同士は初顔合わせだが、雑談を交えるうちに、共通の友人が存在することが発覚。このケースは、さほど深刻ではないが、念のため口止めをしておくべきだろう。女性とはおしゃべりな生き物である。出会い系サイトで知り合ったという部分だけ隠して、セックス内容のみをベラベラ吹聴する危険性がある。
親しい間柄の知人ではないが、顔見知り程度の知人に出会ってしまうのも気まずいようだ。熟女向けの出会い系サイトで待ち合わせたお相手が、ご近所さんだった経験がある男性も。しかも、相手女性は既婚者だった。こういったケースでは、やはりセックスせずに解散するのがスマートなのだろうか? 出会い系サイトを介してセックスした相手と、ゴミ捨て場などでしょっちゅう顔を合わせるのはビミョーなものだ。その点に関しては、「やる気満々だったので、後のことを考える余裕はなく、セックスに至ってしまった」とのこと。確かに、せっかくセックスするつもりで待ち合わせたのに、何もせず解散というのはもったいない。
もったいないという理屈が通用しないケースもある。これまた出会い系サイトを介して女性とのやりとりが始まり、まずはお互いのエロ画像を数枚交換。男性側はペニスの勃起画像を、女性側はオッパイや陰部を。失敗だったのは、この時点で顔写真の交換をしていないことだった。いざ待ち合わせてみたところ、なんと実の妹だったというのだ。さすがに妹とは、いかに直前までやる気満々だったとしてもセックスするわけにはいかない。姉妹が近くに住んでいる人は、どうかご留意いただきたい。
出会い系サイト以外にも、「気まずい偶然」は存在する。風俗店勤務の女性によると、マジックミラーやモニターで、学生時代の同級生や友人の弟など、知り合いの姿を見かけることは珍しくないようだ。なお、男性側が気付かずうっかり指名された場合は、男性スタッフから「○○さんは、タッチの差で先に予約が入った」などお断りするシステムになっている。
ほか、素人投稿雑誌で、知人女性を見つけてしまったというエピソードも寄せられた。そういえば筆者も、美容院で女性誌をめくっている際、「一般女性のメイク術」のような特集に、学生時代の後輩が載っていて驚いたことがあった。しかし、メイク記事とエロ記事は全くの別物。さぞや衝撃を受けたに違いない。こういう場合は、あえて話題には出さないほうが無難だろう。
このように、世の中は広いようで狭いもの。出会い系サイトや風俗店を利用する際は、「気まずい偶然」もあり得るということを念頭に置いて臨むべきである。
(文=菊池 美佳子)