19日放送の『ザ!世界仰天ニュース』(日本テレビ系)で、お笑い芸人・スマイリーキクチが受けたネット中傷事件が取り上げられ、大きな反響を呼んでいる。
1999年、ある掲示板サイトにスマイリーが東京都足立区で起きた「女子高生コンクリ詰め殺人事件」の犯人の一人であると書き込まれるようになった。根も葉もない中傷だったが、ネットの書き込みが繰り返されていくうちに一部ネットユーザーから事実かのように認識され、誹謗中傷のコメントが増加。さらに、元警察官の作家K氏の著書にスマイリーが犯人グループの一人であるかのような記述があり、それが犯人説の根拠の一つにされた。
所属事務所はHP上でスマイリーと事件の関係を否定。だが、「火のない所に煙は立たないよ」「犯人じゃないという証拠を出せ」「生きる資格がねえ、殺人犯早く死ね」などと批判はかえってエスカレート。08年に開設したスマイリーのブログにも誹謗中傷が殺到し、彼は警察に助けを求めるが、当初は親身になって相談に乗ってくれなかったという。一部のネットユーザーが本気で自分を犯人だと思っていることを恐れたスマイリーは、彼らに自分や家族や恋人が襲撃されることを心配し、身辺の安全確認に神経をすり減らすようになった。
その後、スマイリーが相談した刑事課が刑事事件化を積極的に推し進め、08年~09年にかけて中傷犯19人が一斉検挙された。さらに、捜査の過程で担当刑事がコンクリ事件の資料を取り寄せ、犯人とその仲間に「きくち(菊池・菊地)」姓の人間がいないことを確認。スマイリーの潔白は完全に証明された。
事件の顛末が再現ドラマなどで取り上げられた放送後、スマイリーは自身のブログを更新。検挙に乗り出してくれた刑事に感謝の言葉を述べるとともに、「今現在でもインターネットの誹謗中傷に苦しんでいる人たちが大勢います。このような経験をするのは僕一人で十分です。人の人生を潰そうとすれば、自らの人生も潰してしまいます。だから、誹謗中傷はやめてください」などと綴っている。
このブログに読者から1,000件以上のコメントが寄せられ、「根も葉もない噂とか書き込みするなんて許せない!」「ネットを利用する人たちが、しっかりマナーを持つことの大事さを再認識した」などといった意見のほか、「自分も中傷被害に遭っている」といった訴えも書き込まれている。
正義感が暴走しやすいネットでは、事実確認をしないまま無関係の人を誹謗中傷するケースが後を絶たない。今年問題となった大津市のイジメ自殺事件でも、無関係の人物が加害者グループの親族だと書き込まれ、中傷者2名が書類送検される事態になっている。中傷者は正義感に陶酔しているが、匿名のまま不確かな根拠で特定の人物をリンチする行為は、ただの悪質な嫌がらせでしかない。正義感というよりも、日ごろのウップン晴らしをしているだけといえる。かつては匿名であることを盾に無責任な中傷が横行していたが、そのような行為がネット上でも許されない時代になったのは、よい傾向だといえるだろう。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops)