安藤美姫引退の理由は傷心とファーザー・コンプレックス!?

 10月9日、フィギュアスケート前世界女王の安藤美姫が、今年開催されるグランプリ(GP)シリーズ・中国杯(上海)・フランス杯(パリ)を欠場することを発表した。さらにその直後、スポーツ紙で安藤は来季限りでの引退の意向を明かした。年内を完全休養にあて、来年から始動し、「今まで支えてくれた方のためにも、恥ずかしくない演技がしたい」と語っている。

 とはいえ、安藤はまだ24歳。フィギュアスケートのピーク年齢がいくら若いとはいえ、年齢的にはまだまだこれからという意見も多い。世界トップクラスの選手層を抱える日本女子フィギュア界だからこそ、元女王は引退を決意せざるを得なかったとも取れる。しかし、本人は、来季引退の主な理由を“コーチとの決別”にあると語る。

 2006年から2011年まで安藤のコーチを務めたニコライ・モロゾフ。5年以上もの長期に渡って共に取り組んできた彼が突然告げてきたという別れ。安藤は、そのことについて、「3月に今季は指導できないと言われ、それ以降も面と向かっては(コーチ関係の解消)言われてなかったんですが、結果的にそうなってしまいました」(『日刊スポーツ』)と語っている。全幅の信頼を寄せていたコーチの突然の決別宣言。安藤にとっては、まさに青天の霹靂とでも言うべき事態だったのだろう。

 やはり、すでにこれまでも多くの週刊誌やスポーツ新聞が報じてきたように、2人はただの師弟関係ではなかったのだろう。コーチの解消をモロゾフに告げられて以来、未だに新しいコーチが見つかっていないという現状が、それをよく物語っている。そして彼女は引退という道を選んだ。

 また、23日発売の『女性自身』(光文社)は、安藤の叔母の言葉として、彼女がモロゾフを亡き父と重ねていたのではないかとも報じる。安藤がスケート教室に通い始めた8歳のころ、交通事故で他界した父。父は娘のスケート姿を一度も見ることができなかったという。そんな安藤を支えたのがモロゾフだった。奇しくも、31歳で亡くなった父と同じ歳のモロゾフと安藤は出会った。

 幼いころに父を亡くした安藤には、一種のファーザー・コンプレックスのようなものが根底にあるのかもしれない。だから、彼女は、子持ちの年上コーチに信頼を寄せ、慕ったのだろう。しかしそれでもモロゾフは安藤の元を去った。安藤とすれば、同時に、師と恋人と父を失ったような心境だったのかもしれない。

「I born to die(私は死にたい)」

 今年7月に彼女がTwitter上でつぶやいた一言。この言葉の真意はわからないが、「死にたい」とつぶやくほど、安藤が追い込まれていたのは想像に難くない。モロゾフが去り、多くのものを同時に失った安藤。しかし、彼女の人生はまだまだ続く。競技者としてのフィギュアスケートから離れれば、新しい出会いが待っていることだろう。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
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