【現役セックスワーカーの素顔と本音】探偵ときどきソープ嬢・前編

detectivgirl0927.jpg※イメージ画像 photo by Angel L. Castro from flickr

 映画や小説に描かれるセックスワーカーたちは、勉強が出来ない設定が多い。賢くないけどカラダは上等……そんなイメージが根強いのだろうか。だが、実際のセックスワーカーたちが皆そうであるとは限らない。C子も、小学校では児童会長を、中学校では生徒会副会長を務めるほどの優等生だった。

 勉強が嫌いではなかったと語るC子は、学校のほか学習塾にも通っていた。ここまではよくある話だ。普通とちょっと違ったのは初体験。相手は塾の数学講師だった。

「いま思えば仕組まれたのかもしれません。先生の家で勉強会をやったんですけど、他のコたちが先に帰されて、自分だけ残されちゃったんですよね」

 15歳の時だった。講師は22歳。「その先生のことが好きだったの?」と尋ねると、どうやら好きではなかったらしい。でも、嫌いではなかった。

 塾講師との初体験後は、歳の近い男の子たちとも肉体関係に至った。彼らとのセックス自体に対しては、例の如く好きでもないけど嫌いでもない感覚で臨んでいた。そんな中、初めて「セックスって気持ちいい」と思えたのが17歳の時。相手は、初めて出来た彼氏だった。

「彼は童貞だったんですけど、初めて好きになった人だったからかな、セックス自体も気持ちいいって感じたんです」

 物事に対して達観している印象のC子が見せた、初めての女の子らしい表情だった。

 だが案の定(!?)、普通の恋愛は長くは続かなかったようだ。高校に通い続けるよりも、変化を求めた彼女は、九州から東京に出ることを決意。高等学校卒業程度認定試験を受けた。高認と呼ばれる国家試験で、高校を卒業した人と同等以上の学力があるという証明が得られるシステムだ。16歳・17歳で合格しても、18歳になるまでは大学受験の資格は得られないが、高等学校卒業者と同等以上の学力がある者という認定に変わりはないので、就職や資格試験には活用できる。このあたりは、頭のいいC子らしい段取りである。

 上京のきっかけは何だったのだろうか? 10代の女の子が東京に憧れるときくと、ついアイドル志望者を連想してしまうのだが、C子は何故か「探偵」を志した。我々一般人にとっては、実在するかどうかも怪しい、都市伝説のような職業である。しかしC子の場合は、「面白そうだから」という好奇心だけで探偵を志した。「ご両親は何も言わなかったの?」という問いに対しては、「私の実家は、いわゆる普通のサラリーマン家庭ではなく、自営業なんですよ。だから、普通の仕事に就きなさいっていう価値観を持たない親なので、全く問題なかったです」とのこと。初めて好きになった彼氏と別れ、東京に出てきた。17歳だった。

 探偵業にも色々あるだろうが、C子は「別れさせ屋」に特化した探偵になった。これまた我々一般人にとっては、実在するかどうかも怪しい、都市伝説のような職業である。しかし、妻が夫の不倫をやめさせるために、不倫相手の女性に若いイケメンを仕向けたり、DV彼氏と別れるために、美女を彼氏に近付かせたり……というのは珍しい話ではないとのこと。

 C子は、別れさせ屋としてのスキルをアップさせるべく、演劇学校にも通った。演劇学校というと、映画俳優や舞台役者を志す熱い若者が集まる場所だろうが、まさか別れさせ屋が混じっているとは、誰も気付かなかったであろう。

 演劇学校で、別れさせ屋としての演技スキルも身につけ、別れさせ屋として本格始動したC子。業務は、案件によっても異なるが、数週間~数ヶ月の期間を要する。場合によっては、性行為を持つこともある。報酬は、数万円~数十万円。「別れさせられなかったら返金するんでしょ?」と聞くと、「失敗したことはありません」と自信を見せた。頭もよく、容姿端麗なC子にとって、別れさせ屋は天職なのかもしれない。別れさせ屋として仕事は順調だった。失敗もないからカネに困っているわけでもない。しかし、高校生活に飽きて上京してきた時のように、またC子は変化を求めたくなった。そんな時、目に止まったのが、ソープランドの求人だった。

後編に続く
※2012年10月2日公開

(文=菊池 美佳子)

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