彼女によって語られた話はよくある悲劇の1コマだった。旦那が知り合いの保証人になり、多額の借金を背負ったまま蒸発。夫と連絡が取れないばかりか、3日前から闇金業者の取り立てに追われるようになり、怖くなって家から逃げ出してきたというのだ。
ためらいがちに語る彼女の顔は、泣きはらした後のようにも見え、実にリアルだ。さらに、ひっきりなしに携帯電話が鳴り響き、その度に若妻はこの世の終わりのような顔をするものだから、ますます展開が気になって仕方がない。実際、そんな彼女の様子が延々と約40分に渡って映し出されていくのだが、これが全く退屈することがない。映像的には、彼女の上半身と深夜の高速道路のみ。そこに淡々と話を聞く夜逃げ屋の声が入っているだけなのだが、携帯電話越しに取り立て屋の声などが混ざることで、とてつもなくドラマチックなものに感じてしまうのだ。
「あ、あのメールが来ました。『旦那がどうなってもいいのか?』って」
この若妻に一言によって、物語は最初の見せ場を迎える。この脅迫メールをきっかけに、若妻と夜逃げ屋の関係が急展開をみせるのだ。
まず行動に出たのは夜逃げ屋。事件に巻き込まれたと感じた彼は、警察に行くことを持ちかけるが若妻は拒絶。それならば夜食を取ろうと提案し、深夜営業のラーメン屋で、あつあつのラーメンをすする。久しぶりの外食に、わずかに笑顔がこぼれていく彼女の表情もしっかり記録。なんとなくいいムードになっていき、車の中で仮眠に入ろうというその時……、
「こっちも頑張ってるんだから、見返りがあってもいいでしょ?」
「……見返り……ですか?」
またもや男に裏切られ失望にうなだれる彼女。握りしめていたペットボトルのお茶を見つめる顔がとにかく印象的で、見ているこちらも切なさがこみ上げてしまう。結局、彼女は夜逃げ屋に従うことを決め、車中でフェラをした後、ビジネスホテルに移動してセックスをする。ベッドの中、快感にのけ反りながらも、声を押し殺そうと手の甲を噛んで耐える姿に、胸がキュッと締め付けられる思いがするが、ここまでくると彼女にも変化が表れてくる。デカ尻をバックから突きあげられると、思わず「い……いっちゃう~」と、甲高く叫びベッドに倒れ込んでしまうのだ。
そんな彼女は、案の定、翌朝にはまるで別人になったような清々しい顔を見せる。別れを惜しむような朝のセックスを満喫後、車を飛ばして辿り着いた田舎の駅。思いもよらない言葉を残して力強く物語を締めくくる。
こんな状況でも快感に絶叫していく女の『性』と『貪欲さ』のなんと魅惑的なことか! これぞ、AVはヌクためだけの道具ではないと理解しているオトナのための硬派な作品といえよう。ちなみに、第2話もまた波乱に満ちた内容なのだが、最後はほっこりできる感動の結末を迎える。いずれも、味わったことのないエロスと興奮に包まれる作品。ぜひとも噛みしめながら味わっていただきたい。
(文=文月みほ)
どんな結末が?
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