メンズサイゾー事件簿

まさに外道! 実の娘を売ったカネで豪遊する父親

※イメージ画像 photo by MattysFlicks from flickr

 その事件が発覚したのは、明治26年6月のこと。当時遊郭だった吉原で、不審な男が取り押さえられた。たいして身なりがよくないにもかかわらず、やたらと現金をばらまいて気前よく振舞っていたことに怪しんだ店のものが通報。駆けつけた警官が取り調べたところ、「娘を遊郭に売ってそのカネで遊んでいた」ことが発覚した。

 その男は、内藤新宿二丁目(現・東京都新宿区新宿2丁目)に住む金次郎(43)なる者で、人力車の車夫をしていたものの、ろくに働かない怠け者。そして挙げ句は、24歳になる自分の娘を貸座敷(遊郭での実際の店舗)で働かせ、その稼ぎを巻き上げていた。しかもその際、年期があけて帰ってきた娘を、2~3日も経たないうちに再び同じ貸座敷に出してしまった。その結果、前借金として約28円を手にした。当時は、白米10キロが60銭という時代である。28円といえば、現在の価値に直せば100万円は軽く超える大金だ。

 ところが金次郎、大金をつかんだとたんにまた悪い癖が出てしまった。手始めに近所で一杯やって景気づけすると、そのまま人力車にのって浅草へ。そして料理店でさんざん飲み食いした後、酔っ払って外へ出ると、それを見た近隣のチンピラ車夫が寄ってきて、「旦那、景気が良さそうですねぇ」「これから遊郭にでも行きませんか」などとおだてまくった。すると能天気な金次郎はすっかり親分気分になって、「おう、行こうぜ。てめえらついて来い!」とすっかりその気に。

 そこで金次郎、吉原に直行したが、その途中で車夫たちから、やれ酒代やら飯代やらの名目でカネをせびられると、何とも気前よく連中に渡した。結局、チンピラ連中に体よく10円近くを巻き上げられてしまった。

 吉原に到着した金次郎は、これまた飲み食いに遊びにと湯水のようにカネをばらまいた。その様子に、最初は気前のいい御大尽と思っていた吉原の者たちも、次第に怪しむようになり、ついに警官に連行されることとなったというわけである。しかも、取り調べの際の金次郎の所持金は、わずか94銭しかなかった。娘を売ったカネを、たった1日で使い果たしてしまったわけである。新聞もこの男に対して、記事の冒頭で「言語道断の父親」と怒りを込めている。

 だが、この手の事件はこれだけではない。昭和10年(1935年)にも、宮城県から上京してきた49歳の男が同様のことをしでかして警察に連行されている。その男、まだ14歳の自分の娘を売って得たカネ250円を持って、東京・洲崎(現・江東区)の遊郭で飲めや歌えのドンチャン騒ぎをしていた。

 警察の調べて娘を売ったカネで遊んでいたことが発覚したが、本人は反省の色などまったくなし。結局、男は郷里の宮城県に強制的に送られることになったが、その列車のなかでも「自分の娘を売って何が悪い」「オレにはまだ娘が2人いるから、また売ってやる」などと騒ぎ立てたという。

 いつの時代にも、親になる資格も、親としての自覚もない、ろくでもない鬼畜連中はいるものである。
(文=橋本玉泉)

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