なぜ舞台出演が多い? 「オワコン」扱いされるスターたちの今

 ミュージカル『走れメロス』が東京での公演を終え、続いて21日から23日まで名古屋、28日から30日まで大阪で上演される。この舞台は、太宰治の同名小説を下敷きにオリジナルストーリーを描くストーリーもさることながら、一部でキャストが注目されている作品でもある。

 主演と音楽監督は歌手の河村隆一(42)が務め、ヒロインは鈴木亜美(30)、キーマンとなる小説家・辻島は元光GENJIの諸星和己(42)が演じる。ここまでで分かるように、かつて一世を風靡した元スターたちの共演が一つのウリになっているのだ。さらに、元SHAZNAのIZAM(40)、歌手の玉置成実(24)らが脇を固め、振付・監修を務める大澄賢也(46)も出演する。ネット上では「狙ったとしか思えない」という声も上がるほどの元スターのオンパレードである。

 主演の河村はビジュアル系バンド「LUNA SEA」のボーカルとしてファンを熱狂させ、ソロ転向後も順調に活動していた。98年には長者番付歌手部門で一位になるほど稼ぎっぷりだったが、06年に結婚したころから人気が落ち始め、06年からディナーショーを開催するなど思考錯誤するように。07年にLUNA SEAを一夜限りで再結成し、2010年には禁断の“再結成”をした。だが、ソロ歌手としては思うように売れず、最近は舞台出演が多くなっている。

 ヒロイン役の鈴木は、98年にオーディション番組『ASAYAN』(テレビ東京系)で小室哲哉のプロデュースによりデビューが決定。「あみ~ゴ」の愛称でアイドル的人気を博し、99年にリリースしたシングル「BE TOGETHER」はオリコンチャート1位、総売上枚数80万枚を記録した。ところが、2000年夏に所属事務所の社長が脱税容疑で逮捕されると、鈴木側と事務所に大きな軋轢が生まれ、独立騒動に発展。一時休業の末に個人事務所を断ちあげて活動再開するが、アイドルとしての旬を逃したこともあり落ち目になった。05年からエイベックスに移籍するも人気は回復せず、最近はDJとして六本木などのクラブに登場したり、ミュージカルに出演することが増えている。今年6月に韓流騒動で事務所を解雇された高岡蒼佑との熱愛が発覚して久々に脚光を浴びた鈴木だが、ネット上では「オワコン愛」と揶揄される始末である。

 いわずとしれたトップアイドルだった諸星は、光GENJI時代にSMAPや嵐と比べ物にならないほどの人気を獲得していたが、95年のグループ解散と同時にジャニーズ事務所から独立したことで業界を干されることに。最近はほとぼりが冷めたのかテレビにも出演するようになったが、過去の暴露話が中心で「あの人は今」的扱いであることは否めない。光GENJIの再結成に言及したこともあるが、まだジャニーズ事務所に所属しているメンバーがおり、赤坂晃が覚せい剤事件で逮捕されたこともあって実現性は皆無に近いといわれている。

 これだけの元スターを集めた作品というのも珍しいように感じられるが、落ち目になると舞台に出演するという流れは芸能界で定着しつつある。毒舌芸人・有吉弘行は「空いたスケジュールが稽古や連日の公演で埋まりやすいため」とテレビ番組で分析していたが、やはり落ち目タレントは舞台に行きつくものなのだろうか。

「本気で舞台をやってる役者さんにとっては迷惑な話ですが、テレビで有名だったタレントを客寄せパンダとして使うことは多いですね。出演する方にとっても、ハクがつくうえにギャラはそれなりに高くおいしい。ただ、舞台はごまかしの効かない世界で客の評価も厳しいですから、演技力が低ければ如実に表れてしまう。元アイドルがチャラチャラやっていられる世界ではありません。ずっと舞台に出続けるには、実力が必要になります」(演劇関係者)

 舞台出演に見合うだけの実力と才能があればいいが、それもなければテレビから消えたように舞台でも消えてしまうのだろう。「昔の名前」が舞台でも通用しなくなった時、本当の分かれ目が訪れるのかもしれない。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops

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