【ネットナンパ】ドラクエの新モンスターと見紛うクリーチャー

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Illustrate by ながおか

 美熟女という言葉がかなり一般的になってきた今日このごろ。ときどき五十路女性に欲情している自分に気づき、ハっとすることも珍しくない筆者トコショー。

 オナニーを覚え始めた13歳の頃は、50歳オーバーだなんて自分の母親よりも年上だし、むしろ祖母に近い年齢である。性欲の対象になんて絶対になり得なかったものである。

 五十路過ぎでも性欲の対象になりうる女性が増えたのは、非常に喜ばしいことだ。筆者の独断ではあるが、そうした女性というのは総じてエロいのである。

『30させ頃、40し頃、50ゴザむしり』

 この格言通り、本来女性は加齢とともに性欲が増す生き物である。そうした本能の欲求に抗わないことこそが、いつまでも若くあり続ける秘訣のような気がしてならない。

 筆者の周りを見渡してみても、30代、40代女性の美しさに目が引かれてしまう。エロ本の編集者だったり、出版社の経理の人だったり、デザイナーやイラストレーターだったりと様々だが若々しい人が実に多いのだ。

 ある女性編集者の方も、知り合ってから2年後くらいに実年齢を知って驚かされた。20代前半にしか見えない可愛らしい容姿なのに、30半ばだと人づてに聞き驚愕したものである。本来なら女性に年齢を聞くような野暮な真似はしないのだが、その時ばかりは本人に確かめてしまったほどだ。

 そう、2012年の今年に37歳になったビビアン・スーのように、アラフォーであっても20代の女性に引けをとらない女性が本当に増えているのである。

 なんにせよ美しい女性が増えたことにより、筆者のストライクゾーンはさらに広がっている。土下座してでもヤりたくなるような五十路女性が増えることを願うばかりだ。

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出逢い探してます 
 

都内で働くアラフォーOLです。
ちょっとぽっちゃり気味ですが、顔はあまり悪く言われたことがないです。 
 
月に数回、定期の関係で会社帰りに楽しい時間を過ごせる人がほしいです。
不特定多数は怖いので、1人の方とよい関係を築きたいな。 
 
最初からホテルとかは不安なので、まずはお茶とか食事でもご一緒しませんか?
フィーリング次第ではその後のこともありかも……。 
 

09月0*日23時15分
受付メール数:1/無制限 
 
♀マリコ
年齢:38歳
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 こんな書き込みを発見したのは筆者愛用サイトの一つである【イククル】だ。この【イククル】では先月から新しい掲示板のカテゴリーが登場していた。それはアダルト掲示板内にある『まずは食事から』というカテゴリー。

 即決、即会い、即ハメをモットーとしている筆者だが、そんな刹那的デートの合間に太公望よろしく釣り糸を垂れることも忘れない。ヤれれば儲け物ってな感じで、この書き込み主のマリコちゃんにメールをポチっと送信した。

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こんばんは、マリコさん。
都内の事務所でデザイナーをしているショーイチ、39歳です。 
 
私も仕事帰りにまったりとお会いできる人を探してました。
マリコさんと同じでフィーリングが大事だと思ってます。 
 
良かったら今度会社帰りにお茶でもいかがですか?
平日の夜ならいつでも時間を作れるので、検討してみてください。
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『すぐ会いたい』カテゴリーならメール送信後5分も経たずに返事が届くのが普通だ。だが、『まずは食事から』カテゴリーの場合はすぐに返事が届くほうが稀である。今回もこんなメールを送信したことを忘れかけた翌日の夕方になって返事が届いた。

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マリコです。
昨日はお誘いのメールありがとうございます。 
 
何人かの方からメールいただいたのですが、
ショーイチさんが一番安心して会えそうだと思いました。 
 
若くもないですし、綺麗でもないのでちょっと気がひけます。
でもあんな書き込みをしたんだから勇気を出してお会いしたいと思います。 
 
今日の夜か明日の夜なんてご都合いかがでしょうか?
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 なんとも控えめなアラフォー女性である。筆者としてはヤれればそれでいいので、相手の容姿は二の次三の次だ。そう男よりひとつ穴が多ければそれでオールOKなのだ。

 まあ、マリコちゃんの場合、会ったその日に最後まで持ち込むのは難しいかもしれないが、タダマンの為に顔つなぎしておくことに是非も無い。速攻「今夜会いましょう!」のメールを送信して、待ち合わせが成立したのであった。

 待ち合わせ場所は新宿アルタから徒歩10秒ほどの大型靴屋の前。筆者がよく利用する待ち合わせ場所である。約束の時間5分前に到着した筆者は、いつものように道行くブスやデブを目に焼き付けてイメージトレーニングを開始。吐き気と目眩を催すほどにクリーチャー(化け物)を脳裏に刻みまくっていると、一人のクリーチャーが筆者に向かって近づいてきた。

 
「お待たせしました。ショーイチさんですよね?」 
 
「あ、こ、こんばんは。はいショーイチです」 
 
「良かったぁ、違う人だったらどうしようかと思っちゃいました」

 
 残念ながらそのクリーチャーがマリコちゃんだった。体型はドラクエに出てくるモンスターのボストロールを二周りほど小さくしたって感じだ。こんな体型でポッチャリを自称するとは詐欺もいいところである。正直に「力士体型です」とか「ボストロールです」、と申告しやがれコンチクショーめ!

 顔はというと、料理研究家の園山真希絵を彷彿とさせるヨーダ顔。薄い黄色のワンピースを着ていたが、ボロ切れをまとって木の杖を持っていたほうがよっぽどお似合いである。

 顔がヨーダで身体はボストロールって、新しい敵モンスター? 少なくともドラクエ1から9までにはこんなモンスターは登場していなかったハズ。最新作のドラクエはオンラインゲームになってしまったので購入する予定はないが、こんな新モンスターが登場しててもおかしくないだろう。

 まったく罰ゲームもいいところである。なんの罪悪感も感じずに「ごめんなさい」と宣言しようとした矢先、先手を取られてしまった。

「じゃ、どこに行きますか?」と笑顔を浮かべながら筆者の腕に手を添えてきたのである。

 ぐぬぬぬぬ。

 いきなり距離を詰めボディタッチしてくるとはこの女、できる! いまこの体勢で「ごめんなさい」などと言おうものなら、どんな技を仕掛けられるかわかったものではない。重量級のマリコちゃんと中量級の筆者では階級が違い過ぎる。ここは下手に逆らっては危険だ。

「じゃ、じゃあ約束通りとりあえずお茶でもしに行こうか」と応じるほかに術はなかった。

 こうして喫茶店に向かうことになった。ラブホテル街の方向に足を向けるのは危険な気がしたので、いつもとは反対の方向に歩きだす。相手に悟られないよう早歩きしてマリコちゃんの手を振りほどくと…。

 む? コレはさすがに見え見えか? 相手の機嫌を損ねたら何をされるかわからない。「じゃあ、こっちのほうだからついてきて」と作り笑顔でフォローするのであった。

 大通りから一本外れた通りにある喫茶店に到着。店内は空いていたので、一番奥の席を選択した。こんなクリーチャーと同席している所を人目にさらしたくないという心理ゆえだ。

 注文した珈琲が届くと同時に、マリコちゃんの怒涛のおしゃべりが始まった。

 
「ね、ショーイチさん。俳優のTって知ってる」 
 
「う、うん。ちょっと強面の性格俳優だよね」 
 
「そうそう。じつはね、私Tの奥さんと同じ職場で働いてるの」 
 
「へ、へぇ、そうなんだ」 
 
「うん。奥さんすっごく綺麗なんだけど旦那さんの稼ぎだけじゃ生活できないみたいで……」

 
 俳優Tはある映画で優秀助演男優賞をとったこともあるが、渋めのバイプレーヤーといったポジションなので正直知名度はイマイチだろう。数年程前、筆者はグルメ雑誌で彼の行きつけの店を記事で紹介したことがあるので、辛うじて顔と名前が一致した程度である。

 
「で、彼女が言うには今住んでるところが……」 
 
「彼女すごく仕事ができるから、私よりも断然稼いでいそう」 
 
「彼女はレースの刺繍が趣味みたいで、この間も手作りのハンカチもらっちゃった」 
 
「旦那さんが稼いだお金はほとんど彼の趣味で消えちゃうみたい」 
 
「彼女も結構な年だから、もう子供を作る気はないんじゃないかな」 
 
「この間、彼女と一緒にTの舞台を見てきたんだ」

 
 延々と俳優Tと奥さんの話をするマリコちゃん。自分の話はほとんどせずに、飽きもせずにずっとしゃべりっぱなしだ。

 筆者もなまじTに関しての予備知識があったため、ついついクリティカルなタイミングで話題に応じてしまう。それを受け、ますますTと奥さんの話に熱中するマリコちゃん。

 まぁ、いいか。モンスターの生態よりはよっぽど健全な話題である。それにしてもよくもこれだけ他人の話で盛り上がれるものだ。

 俳優Tの奥さんが元女優とか元アイドルとかならまだわかるような気もするが、奥さんはただの一般人である。

 こんな不毛な会話が一時間近くも続いた。そして筆者が三杯目の珈琲をオーダーしたころから風向きが変わってきた。

 

「ショーイチさんって独身なんですか?」 
 
「彼女とかいるんですか?」 
 
「よく出会い系で遊んだりしてるんですか?」 
 
「初対面の女性とホテルとかに行ったりするんですか?」 
 
「子供は好きですか?」 
 
「どんな女性が好みですか?」

 
 今度は質問攻めだ。筆者のことをアレコレと根掘り葉掘り聞いてくるのであった。なんで俺様の個人情報をお前に話さなきゃいけないんだ!と内心イライラしてしまったが、ノラリクラリと高田純次ばりにテキトーな返事で応じることにした。

 マリコちゃんのお顔は正視に耐えられなかったので、会話の間筆者はずっとうつむき加減で彼女の推定Hカップはあろうかという胸を凝視していた。薄暗い店内照明のおかげで、筆者のこの視線は気付かれていないはずだ。

 そう、筆者は彼女の胸を見ながらずっと自問自答していたのだ。

 
おい、ショーイチ。お前この生き物相手に勃起できるのか?

キスやクンニはご免だが、話のタネにこの巨乳に挟まれてみたい

でも一度ヤると後を引きずりそうだよなぁ

うん。でも彼女おしゃれと清潔感には気を使ってるから、目をつぶってればデキそうじゃね?

いや、ホテルに行ってパイズリだけでお終いってワケにはいかんだろ?

やはりどう見ても新種のモンスターだよなぁ

ドラクエ2の終盤でイオナズンを連発してきたアークデーモンと初遭遇した時みたいに強烈だよなぁ

おう、たしかにあの時は驚いた。たしかアイツ2回攻撃とかもしてきたよな

そうそう。サマルトリアの王子が殺されちゃったけど、世界樹の葉のおかげでなんとか勝利できたっけ

でもそのすぐ後にブリザードのザラキで全滅しちゃったんだよな

うん。あの頃は復活の呪文が52文字もあって大変だったよなぁ

 

 いつの間にか脳内のドラクエ談義で一人盛り上がる。これが現実逃避ってヤツだ。上の空で生返事しているにも関わらず、マリコちゃんの質問攻めは止まらない。

 気がつくと喫茶店に入って2時間が経とうとしていた。そろそろこの罰ゲームを強制終了してもいい頃合いだ。覚悟を決めた筆者は、タイミングを見計らって主導権を握るべく攻勢に転じた。

 
「あ、もうこんな時間だ。じゃあ今日は約束通りお茶だけってことで帰ろうか」 
 
「え、でも、まだ私……」 
 
「うん。おかげで色んな話が聞けて良かったよ。ありがとうね」 
 
「で、でも」 
 
「じゃあ、駅まで送っていくよ」 
 
「で……」 
 
「じゃあ会計してくるね」

 
 我ながらかなり強引な締めくくり方である。身体中から嫌な汗が噴き出してしまったが、なんとかこのクエストを終了できた格好だ。

 駅の近くまで送って行き、「じゃあ、気をつけて帰ってね」と挨拶するや踵を返して街の雑踏にまぎれこんだ筆者であった。

 今回はさんざんな目にあってしまったが、最大のファインプレーはアドレスと電話番号の交換を行わなかったことだ。サイト内メールだけでやりとりしていたので、このまま自然消滅をしても不審がられることはないだろう。

 ちなみに、その日の夜にこんなメールがサイト経由で届いていた。

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今日はどうもありがとうございました。
約束通りお茶だけって言うショーイチさんって紳士なんですね。 
 
私はもっと一緒に居てもよかったんだけど。
この次はお茶だけじゃなくて、最後まで行ってもいいかも……(キャッ)
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 なんとも甘酸っぱいメールだ。胃液がこみあげてきて、気分が悪くなってしまった。なにが「キャッ」だ! もちろん返信もせずにシカトしたことは言うまでもないだろう。

 不細工や化け物と会うのが嫌だったら、写メを公開している女性とだけアポを取るという方法もありだろう。だが、写メを公開していない美人や可愛い娘チャンもたくさん存在しているのである。それゆえ、筆者は今後も容姿不明な相手でも懲りずに会いに行く予定である。

 それに相手の容姿がわからないほうが、待ち合わせの時のドキドキ感が高揚するものだ。もしかしたら、筆者はこのドキドキ感を味わいたくて出会い系を止められないのかもしれない。

(文=所沢ショーイチ)

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