著:松村 圭子、中辻 正/双葉社
男性誌女性誌問わず、セックスに関する意識調査の特集が組まれることがある。しかし、その集計結果は、どの雑誌も毎回ほとんど同じというのが正直なところ。「経験人数は4ケタの大台という人がほとんど」というアンケート結果など見たことがないし、「好きなプレイの第一位は男女共にスカトロ!」というランキングも見たことがない。
経験人数やプレイ嗜好と同様に、体位に関するアンケート調査も、これまたおもしろみのない結果ばかり。どの雑誌を読んでも、目新しい回答は皆無で、「好きな体位」「よくする体位」共に「正常位」がダントツのトップである。
この結果は、雑誌社が悪いという意味ではなく、これが民意というものなのだろう。体位名に「正常」と付く正常位がもっとも親しまれているのは当然のことなのかもしれない。なお、正常位というネーミングの由来は、大航海時代にさかのぼる。アメリカ大陸へ渡ったヨーロッパの宣教師が、原住民たちのセックスを見て、「野蛮な体位でセックスをしてはいけない」と諭し、「人間らしい正常な体位でセックスするように!」と教えたのが語源とのこと。当時の宣教師が、原住民のどのような体位を見て「野蛮」と言ったのかは定かではないが、いま現在、世界でもっとも多く行なわれているのは正常位ではなく騎乗位なのだから、皮肉なものだ。
セックスの体位の中でも有名な後背位 セックスの体位の中でも有名な後背位。バックとも呼ばれるこの体位で「もっと興奮したい」「彼女をもっとイカせたい」「後背位にはどんな種類があるの?」と考えたことがある男性も多いのではないだ
世界での主流は騎乗位だが、日本での主流体位はなんといっても正常位である。騎乗位は、ベッドのスプリングを利用して体をグラインドさせる体位なので、布団文化が根強い日本では根づかないというのも、なんとなく理解は出来る。
とはいえ、日本人とてずっと正常位というわけではない。同じ体位を続けるのは体力的に辛いし、飽きがくることもあるので、ほかの体位を提案する運びとなる。
ここが運命の分かれ道である。騎乗位を提案するか、後背位を提案するかで、女性側の反応はだいぶ変わってくる。
一般女性に意見を募ったところ、「最近は、騎乗位を提案してくる男性が急増している」との回答が目立った。これは、「後背位は、顔が見えないから愛が感じられないと、女性が嫌がる」という情報があまりにも浸透してしまったため、男性たちが後背位を提案しづらい環境になってしまったのだろう。嘆かわしいことである。後背位が好きな女性も、世の中には確かに存在するのだ。「騎乗位と後背位、2択だったらどっち?」という質問を投げかけたところ、後背位と答えた女性は、騎乗位派の3倍以上だった(筆者調べ)。
後背位派女性たちは、最近の男性が後背位を求めなくなったことに物足りなさを感じているという。「だったら自ら四つん這いになりリクエストすればよいではないか!」と言いたい人もいるかもしれないが、やはり女性側からは「後ろから挿れて」とはなかなか言いづらいとのことだった。
というわけで、面倒かもしれないが、男性側には「女性が後背位を求めているか否か、推測する能力」が必要となってくる。目安になりやすいのが、膣の位置。下付き女性は、後背位での挿入がフィットしやすいため、後背位を好む傾向が強い。なお、上付き・下付きの具体的基準だが、アナルから膣までの長さが4センチ以上だと上付き、4センチ以内は下付きという見方がある。ただし、「4センチ以内なら後背位好き!」とは断言できない。深く入りすぎて痛みを伴う女性もいるのだ。いやはや、女心も膣も複雑である。
「騎乗位と後背位、2択だったらどっち?」という質問に対して、「騎乗位」と回答した女性たちは、セックス経験豊富な人が多かった。女性の経験値を見極めるには、「経験人数は何ケタ?」とダイレクトに聞いてしまうと情緒がないので、前戯で見極めるしかないだろう。フェラチオへの積極性、クンニリングスへの羞恥度、また「ペニスにコンドームを着けて」とリクエストしてみると経験値は一目瞭然となる。コンドームの裏表を判別でき、空気抜きもスムーズで、陰毛を巻き込むことなく装着してくれる女性は、それなりにセックス経験を積んでいるはずである。
なお、男性陣に「騎乗位と後背位、2択だったらどっち?」という質問を提示したところ、騎乗位派は後背位派の2倍だった(筆者調べ)。女性は後背位を好み、男性は騎乗位を好む傾向にあるようだ。男と女がすれ違うことの表れである。だからこそ、相手がどちらを求めているのか見破る男子力が大事なのだろう。
(文=菊池 美佳子)