まったく予想と油断ができない。KGY40Jr.を見て楽しみながらも、常にそう感じている。
千葉県鎌ケ谷市のアイドルであるKGY40Jr.のセカンド・シングル「BALLPARK V-DANCE」はタイトル通りに野球をテーマにした楽曲だが、さまざまな文脈が絡み合った結果、剛速球のような勢いで野球から遠ざかり、KGY40Jr.そのものの印象しか残さないほどのインパクトだ。
実はこの「BALLPARK V-DANCE」の発表前、スーパークールファン(KGY40Jr.のファンの総称)の友人を介して、プロデューサーの「皮茶パパ」こと福田優一と酒席を共にすることができた。次の楽曲のテーマは野球、野球と言えばアメリカの大リーグ、アメリカといえば……と「BALLPARK V-DANCE」に関するいくつかのヒントを与えられたのだが、きっと私の予想など軽々と裏切る作品が届けられるのだろうと考えていた。そして、それはまさに的中したのだ。
6月17日のライヴで「BALLPARK V-DANCE」が初披露された際の衝撃は強烈だった。DJ SIXXによる非常にハードかつアシッドなテクノのトラックに加え、ヴィオラ奏者が登場して生演奏をしたのだ。そして扇子を手に踊るKGY40Jr.。あまりにもシュールな光景だった。
鎌ケ谷市の名物である鎌ケ谷スタジアムをテーマにし、「白球を追う(wow-wow)」といった意味と音を重ねた歌詞はKGY40Jr.らしいが、サウンドに関してはまったく想像を超えたものだった。テクノをベースにカントリーの要素を導入したわけだが、もはや鎌ケ谷市の土着のサウンドが誕生している。前作「コスプレイヤー」の収録曲とはサウンドの厚みが段違いなのだ。
さらにそれに拍車をかけているのがカップリングの「BALLPARK V-DANCE Re-Mix」で、PsycheSayBoom!!!によるリミックスが施された結果、皮茶パパの声までサンプリングされ、ドロドロなまでにファンキーなトラックと化している。同じくPsycheSayBoom!!!によるリミックス「GOAL Re-Mix」も、ゴールの先は阿片窟、というほどドラマティックかつ中毒性の高いトラックだ。これも皮茶パパの声がサンプリングされ、リズムがめまぐるしく変化していく。最後に収録された「BALLPARK V-DANCE Vocalless」は、インストルメンタルのように見せかけて、実は皮茶パパのコールが挿入されており、実質的に皮茶パパのソロ作品とすら言える。
こう書くと、「KGY40Jr.=皮茶パパ」というイメージを持たれそうだが、REIKA、MAYURI、NANAMI、SHIHO、梨ギャルの5人はステージ上での輝きを確実に増している。梨ギャルは新メンバーとして加入したが、それ以前から激しいダンスをこなす彼女への注目度は高く、フロアからは楽曲のリズムを無視して「梨!梨!」というコールが起こるほどだった。5人が物販もこなすようになったことで、ファンとの距離もより近いものになった。