「由愛可奈はAV界の北島マヤ」の声も…
──ところで、デビュー1周年記念作品として『カンパニー松尾×由愛可奈』がリリースされましたが、カンパニー松尾監督は御存じでしたか?
「あの~、とても失礼な話なんですが、このお話をいただくまで知らなかったんです。『ハメ撮りの奇才』と呼ばれていて、ファンの方も多い凄い方だと知らず、初めてお会いした時、すっごくラフな格好で行ってしまったんです。しかもそれが台風の日で、髪もボッサボサ。今思うと大失敗だったなって思います。監督は私のこと、ヘンな子って思ったんじゃないかなぁ」
──松尾監督は、そんな初対面で受けた純粋なイメージを作品に閉じ込めたいと思ったのかもしれませんね。ここに映っている由愛可奈ちゃんは、本当に自然体のピュアな女の子でしたから。
「いやいやいやぁ……ははは。本当に自然体すぎて、リアルな癖がでまくりですよね。撮ってないって言いながら、実は撮っていたり」
──撮影方法も独特ですからね。実際に撮影した印象は?
「自分のパパに年齢的には近いんですが、今でも現役の男性を感じたし、女性を惹きつける魅力のある方だと思います。プロフェッショナルな面も含めて人気がある理由が分かりました」
──カンパニー松尾監督は素人ハメ撮りが有名ですが、最近では単体女優のハメ撮り作品も人気になっていますよね。実は、先日行われたイベント『AV30』(AV30周年記念プロジェクト)の中で『由愛可奈ちゃんは恐ろしい子だと思った。本気でセックスをしたいと挑んでくる子だった』というお話しをされていたんですが、それを聞いてどう思う?
「わ~、それって褒め言葉ですよね? 嬉しいなぁ。たしかに撮影中も年上の男優さんと濃厚なベロチューした後、嫌がらないのは凄いって褒めてくれてたんです! ただ私はチューが好きだからやってただけなのに」
──オジサン男優相手だと嫌がったりするコもいるみたいだしね。で、今回は最終的にそのオジサンの方が由愛可奈ちゃんに尻込みしてしまう結果に。彼をベロチューでノックアウトした気分は?
「ん~、そんなことしたのかな? 他の女の子と比べたことないから分からないけど、私としては普通のことをしただけなんだけど」
──松尾監督も作品の中で話していましたが、由愛可奈ちゃんは相手によって対応を変える『鏡』のようなタイプなんだよね。熱烈なベロチューにはそれ以上に情熱的なベロチューで返すみたいな。憑依体質なのかな?
「あ~、それは撮影中にもよく言われますね。私、デビューの時からずっと自分の作品を観て振り返ることはないんですよ。だから、どんな感じになってるのか自分では分からないんです」
──あえて客観的に自分自身を捉えずに、次の作品に挑むからこそ、今の由愛可奈ちゃんがいるのかも?
「それも分からないです。作品はいつか観ようかなって思ってますけど、今は自分の心の中にしまっておいてもいいのかなって。観ることはないのかも……」
──個人的には、単体女優というのはある意味で可愛い人形でいることを求められていて、これまでの由愛可奈作品もそういう掘り下げ方をしていたと思うんです。ところが松尾監督は、単体女優の枠を取っ払って『ただの悩める女の子』として捉えていた。セックスも含めて、告白シーンも全て生々しく、その分ファンにとってはショックを受ける面もあるかもしれない。
「そう。私、言い過ぎちゃったんです。だから、皆さんがどんな風にこの作品を観てくれるのか不安を感じる部分もありますね」
──でも、だからこそ、由愛可奈はお人形ではなく、一人の人間なんだと思い知らされました。由愛可奈ちゃん自身は、あの撮影をどんな風に受け止めていたのですか?
「普段の撮影は『はい、スタート』でカメラが回るので、そこで笑顔を作ったりするわけじゃないですか。でも、松尾監督はいつ回してるのか分からないんです。最初は戸惑いましたけど、普段、監督が撮っているのは素人さんたち。『はい、スタート』と言われる方が戸惑ってしまう人達なんですよね。それで、そんな風に撮るのかなと理解しました。普段から、女性の身の上話とか掘り下げて撮られているそうですね。そういうことを後から知ったので、あの時は何も分からず、ただ過去の話とかベラベラ話してて、しかも泣いちゃって。私ってすぐに泣いちゃうんですよ」
──夕陽がきれいな公園でブランコに乗りながら涙を浮かべるシーンは印象深かったですよ。
「そう。私、ちっちゃい頃から夕陽をみてよく泣いてたんですよ。ブランコに乗ってると『小学校の頃は楽しかったなぁ』なんて思いだして一人で泣いてたんです。今思えば、そういうのが楽しかったんですよね。今回の撮影でも、その感覚が戻ってきちゃって、カメラが回っているのに『青春してなかったな』とか、『恋愛もできなかったな』とか考えちゃって、気が付いたら泣いていたんです」
──撮影中にそこまで過去を吐き出せた理由は?
「やろうと思ってやったわけではないんですよ。だから、自分でもなぜそこまでしゃべったのかなって不思議なんです。取材でも結構本音をぶっちゃける方なんですけど、あそこまでのものはなかったですから……。松尾監督に『あなたは相手に話しながら自分を確認する鏡のような子なんだ』と言われ、自分が何者なのかどんどん分からなくなっていっちゃって……。でも、そういう行為もいいことなんだと言われて、それで吐き出せたのかなって思います。どこが収録されているのか分からないけれど、イメージが崩れたらごめんなさい」
──崩れるなんてとんでもない。何でも打ち明けてしまう危なっかしさが由愛可奈ちゃんの魅力だと実感しました。ポジティブとネガティブのサンドイッチ感が観る者をどんどん惹きつけていくんだなって。
「自分が危なっかしいのは解ってるんですよね。言ってはいけないようなことを、ふいに口に出してしまったりするので。だから、今回もありのままの気持ちを打ち明けました」
──肝心のセックスですが、松尾監督とのハメ撮りはいかがでした?
「どうしたらいいのか分からなかったですよね。これまで周りにいたスタッフさんがみんないなくなっちゃうし、人の家で撮影を始めちゃうし。セックス中ずっと『お前、いやらしいな』って言われてたんですけど、事前に『相手が喜んでると自分も嬉しい』という話を監督から聞いていたので『よし、その気持ちに応えよう』って考えていたら、どんどん興奮してしまいました。監督に『もうイッたよ』って言われて、もう終ったのかと驚いたんです」
──イキすぎて白目を剥いてましたしね
「嘘!? 私……どんな顔してたんだろう。意識がなかったから覚えてないんですよね。これまでも足が立たなくなることはありましたけど、そこまでとは自分でも知りませんでした」
──トップアイドルがここまでハードなセックスをするものなのかと驚かされた反面、本気のセックスが観れて嬉しかったですよ。
「いや~、申し訳ないですよ。自分ではトップアイドルなんて思ったこともないし、『私は私』ってそれだけですから。本当に、私はただ気持ちよくなっていただけなんですよ。そこまで引き出してくれた監督の力はスゴイと思います。監督って、世間からすると裏方なのかもしれないけど、私たち女優からすると本当に大切な存在で、監督がいろんな部分で引っ張ってくれるから、信頼してそこまでできるんですよ。『カメラの前だから(素の自分を)控えなくてはいけないというフィルターを取り除いてくれたお陰です。これが世にいう『カン松マジック』なんでしょうね。でもね………」
──でも?
「これ言っていいのかな。撮影が終わった途端に監督が突然『ごめん、賢者モード入った』ってぐったりしちゃったんです」
──あはは。天下のカン松をセックスで打ち負かしたんだ?
「マネージャーさん曰く、監督はげっそりしてて、私は顔の血色が凄くよかったって」
──精気まで吸い取ってしまったの!?
「ん~、どうなんでしょう。撮影が終って、監督がぐったりしてるときに私は隣で『明日も撮影ですね~』ってにこにこしながら言ったら『元気だねぇ……』って」
──そんな激しいセックスを経て、作品の最後にみせた涙の意味を教えて下さい。
「私ね、いつも泣かないって決めてるのに、イベントとかでも結局、泣いちゃうんですよ。この間の誕生日イベントも、“19歳になってしまった私”に逢いにきてくれるのか不安で、でもたくさん来てくれて号泣しちゃって。不安の後にくる安心感に弱いのかも。今回も同じかもしれません。私、普段からよく笑って、よく怒って、その度に泣きたくなっちゃうんです。実は今もちょっと泣きそうなの(苦笑)。だから、『こういう理由で泣きました』とか分からないんですよ。ん~、情緒不安定なのかな?」
──いいえ、感受性が豊かって言うんですよ?
「そうなんですか? カン松さんもそう言っていたんですけど……。泣いちゃう自分がイヤなんです」
──今後はどんなことをやっていきたい?
「1年間続けてきて分かったことは、楽しんでやることに意味があるんだってこと。イベントだって打ち合わせだって、みんなと楽しくおしゃべりしながらやってたから、何を求められているのかって気づけてきたし。癒しであったり、エンターテイメントだったり、人それぞれ求めるものがあって、それに応えていくことが私の歓びなんだなって思っています。これまでも、これからも。一人の人間として、綺麗になって、内面的にもいろんなことに気づける女性になりたいです。女優という枠に捉われるより、今はもっと長い目で見て、こんな人間になりたいという考えの方が強いですね」
インタビュー中も終始目をうるうるさせながら本音だけをぶつけてきた由愛可奈ちゃん。泣き虫な自分が嫌いだと言いながらも、泣くことをやめようとはしない。そんな真っ直ぐな生き方こそが、我々を魅了してやまない最大の魅力なのだろう。上手く生きることに慣れてしまった大人の胸には、彼女のような存在がことさらまぶしく映る。
(取材・文=文月みほ/写真=辰巳千恵)