的を射たことわざや格言を聞くと、「昔の人はよく言ったものだなぁ」と感心させられる。「女心と秋の空」「女房と畳みは新しいほうがいい」など。外国にも、「電車と女は追うな。すぐまた来る」のような名言がある。逆に、思わず首を傾げてしまうことわざも。「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」というが、下手な鉄砲は何発撃っても当たらないということを痛感している人がほとんどだろう。また、「据え膳食わぬは男の恥」ということわざには納得できないという男性も多いのではないだろうか?
そう、男とは、決していつ誰とでもセックスしたいわけではない。二日酔いや睡眠不足の時は、女体よりも布団が恋しいものだし、セックス相手に対しても、多少は好みというものがある。
しかし、男の体とは不思議なもので、相手女性がストライクゾーンから外れているような場合でも、悲しいかな、オッパイやアソコを見せられ、ペニスを刺激されたりしてしまうと、体が勝手に反応し、勃起してしまうこともある。そういった際は、とにかく部屋の照明は暗くする・豆電球すらつけないという作戦で臨むしかないだろう。体位も、後背位メインで行なえば、なんとか射精まで到達できるはずだ。
だが、部屋の電気を暗くしようが、後背位のみで臨もうが、どうにもこうにもヤリたくないというタイプの女性も存在する。それは決して、外見的な好みの問題だけではない。性格的にも、ラブホまでの道のりや、部屋に入ってからも会話が合わないだろう、という系統の女たちは山ほどいる。
ところが、前述の「据え膳食わぬは男の恥」ということわざの影響か、どうにもこうにも断れないシチュエーションというのも存在する。女性からの誘いを断ることは、マナー違反という風潮のため、仕方なくセックスしたという経験を持つ男性もいるだろう。
こちら側が乗り気でないことを察してほしいものだが、そういう類の女性は、こちらのテンションなどお構いなしで猛烈アプローチをしてくる。「本命のカノジョの存在をほのめかす」という作戦は、彼女たちには通用しない。何故なら、彼女たちが望んでいるのは真剣交際などではなく、ただ単純にペニスとセックスだけなのだから。
「私はヤレる女よ」という彼女たちの誘いをかわし、ムダ撃ちを避けるにはどのような立ち居振る舞いがベストなのだろう? 男の場合は、「生理」という伝家の宝刀的な断り文句がないので、実に難しい。性病だのEDだの言うのも気が引ける。
一般男性に、「ヤリたくないタイプの女性から誘われた際のかわし方」を募ったところ、もっとも多かったのが「順延」パターンだった。「中止」、つまり「キミとはセックスしたくない」と言うとカドが立ってしまう。歌手が体調不良などでコンサートを中止にする際も、中止となると大ブーイングを受けるが、延期なら丸くおさまるものだ。よって、「次こそゆっくり」と言えば、相手女性の体面も保たれるというものだ。
もしくは、特殊性癖をでっちあげるという者もいた。「アナルプレイを嗜む」「俺のパンツをかぶってほしい!」「うちの猫に舐めさせたいな」など。しかしこれは、相手女性もその筋の人の場合、逆に悦ばせてしまう可能性もあるので、注意が必要である。
順延にも納得せず、特殊性癖も受け入れるという女性の場合は、「とりあえずその場で軽く触り、それで勘弁してもらう」という男性もいた。借金でも、全額返せない場合は、とりあえず一部入金して、貸主を納得させるということがある。それと一緒だ。軽くキスする、スカートの中を弄るなどしてしまうと、むしろ女性の体に火をつけてしまいそうな気もするが、意外とおとなしく引き下がる女性が多いとのこと。女性側が、「意外とヘタだな」と思いやる気を喪失したのか、「人差し指だけでもヤッた数にカウントしておくか」というスタンスなのかは人それぞれといったところか。
考えてもみたら、誘うよりも断るほうがずっと難しい。とはいえ、ビジネスの世界では、断り上手な人こそ成功するという。誰に対してもいい顔をしてオーバーワークになり、どの業務も中途半端になるくらいなら、断る勇気を持ったほうが、仕事のクオリティは上がる、というのはもっともである。セックスもそれに倣って、極力ムダ撃ちは避けたいものである。
(文=菊池 美佳子)