女性がお腹に子どもを宿している姿は実に神秘的で美しいものである。妊娠中の女性はお腹のわが子を慈しむように、毎日幸せな日々を送っているのだろうが、その幸せも度が過ぎれば「マタニティハイ」になり、時として過激な行動に移すこともしばしばある。
お笑いタレントの山田花子(37歳)が5月17日発売の雑誌「美ST」(光文社)で妊婦ヌードを披露したことも、マタニティハイのひとつだろう。もともとは、妊娠発表会見で報道陣から「妊婦ヌードのオファーがあったら受けますか?」との質問に「もちろん!」と答えてしまったことから端を発し、現実となった妊婦ヌード。実際にオファーを受けたときは「ちょっと迷った」そうだが、愛する旦那さんの「記念になるからキレイに撮ってもらったらいいよ」という一言で決意したという。
いつのまにか日本でも市民権を得た妊婦ヌード。その元祖は映画『ゴースト/ニューヨークの幻』で一躍トップスターに躍り出たデミ・ムーアが、1991年に米誌『ヴァニティ・フェアー』で披露したことだといわれている。その後、ミラ・ジョボビッチやクリスティーナ・アギレラ、マライア・キャリーなど錚々たる豪華な顔ぶれの海外セレブたちが妊婦ヌードを披露している。日本では武田久美子を先駆けとして、hitomiや神田うのなどの妊婦ヌードが話題になり、最近ではそんな芸能人たちに触発されてか、一般人でも妊婦ヌードを撮る女性が増えているという。
ヌードといえば男性向けのただの「エロ」だが、妊婦ヌードはエロ目線抜きの「芸術」で片付けられる妙。「妊婦だから」という免罪符でヌードのハードルが下がる風潮は、なかなかどうして謎である。さらに記念や記録としての妊婦写真なら、全裸にならなくても撮れるものなのに、あえてヌードに挑戦とは……。他者目線を思い切り意識したおしゃれヌードで、お腹にいるわが子そっちのけで「妊娠してる今の自分が美しい」という、痛々しいまでの自己陶酔と自己顕示欲をビシビシと感じることに、なんだかモヤモヤするのである。
そのマタニティハイが産後ハイとして続くのか、「授乳フォト」というのも人気になりつつあるというのだ。母親が子どもに授乳している瞬間をキレイに撮影するものなのだが、これもまた子どもそっちのけで「授乳中の私、美しい」というアピールが鼻についてしまう……。日常のひとこまを切り取ったような自然さはもちろんなく、ほぼ全裸で頭にはレースのベールをかぶった聖母然とした母親からおっぱいを吸う子どもの不自然さに、思わず「自分のことが大好きだな!」とツッコミを入れたくなってしまうほどだ。
すべての関心が子どもより自分に向いてることに違和感を覚える、妊婦ヌードや授乳フォト。「慈愛に満ちた美しい母である私」という過度な演出に女心をくすぐられるのだろうか。
(文=三坂稲史)
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