二股騒動に学ぶ、「ポリアモリー」というライフスタイル

polyamory.jpg※イメージ画像:『ポリアモリ― 恋愛革命』河出書房新社

 本人や関係者、ファンならずとも、「同じ芸能ニュースばかりで飽きてきた」という人も出るくらいモヤモヤと続く、イケメン俳優の二股交際騒動。芸能ニュースというものは、次に大きなスクープが持ち上がらない限り、ネタ不足に悩むメディアが逃してくれないという性質がある。よって、本人には気の毒だが、別の誰かがスキャンダルを起こしてくれるのを待つしかないだろう。それにしても、今回の騒動で、「二股」という、やや懐かしさすら感じさせる言葉が、大流行したということは紛れもない事実。今年の流行語大賞とまではいかなくても、上半期の流行語ベスト10くらいにはランキングしそうな勢いである。

 「二股」は、言うまでもなく、好意的な意味で使われる言葉ではない。両者に対して非礼であるという侮蔑を込めた意味合いで使われることのほうがダンゼン多い。確かに、源氏物語が描かれた平安時代のように、一人の男性が複数の妻を持つことを許されていた太古の昔ならまだしも、一夫一婦制の現代において、二股恋愛が非難の対象とされるのは当然だろう。

 さて、今回の騒動の発端となったイケメン俳優と同様に、一般人でも、「実は二股恋愛をしている」という人は、意外と多い。カノジョと芸能ニュースを見ている時に、「まさか貴方は二股していないわよね?」と言われて、ヒヤヒヤした者もいるだろう。

 では、二股恋愛が、非難される行為であると知りつつも、今すぐにはどちらとも別れられないという人は、どうしたら良いのだろうか? 

 二股恋愛を成立させるには、「絶対にバレないようにすること」が大前提である。おそらく、ほとんどの人は、同じコミュニティ内にカノジョを2人作るなど、危険なことはしないだろう。イケメン俳優の場合は、「芸能界」という同じコミュニティに、2人カノジョを作ってしまったことが凶と出たわけだ。どちらかが一般人の場合は、さすがにこれほどまで注目されることはなかっただろう。

 「絶対にバレないようにすること」とは正反対に、いっそ両方のカノジョにカミングアウトしてしまうという方法もある。「そんなのムリに決まっている!」と思うかもしれないが、アメリカには「ポリアモリー」という複数同時恋愛を推奨する考え方が存在する。

 ポリアモリーは、日本ではまだ馴染みの薄い言葉だが、普通の二股恋愛のように、コソコソ隠れて付き合うのではなく、「貴方の他にもパートナーがいる」ということをオープンにするスタンスだ。要するに、合意のうえでの浮気ということになるのだが、ほとんどの日本人は理解に苦しむだろう。愛する人を独占したいと思うのは、ごく当然の感情である。もちろん、独占とは、相手を束縛するという意味ではない。しかし、愛する人が、自分以外の第三者とも愛し合い、セックスするという現実を受け入れよ、と言われても、現実には難しいだろう。

 と、思いきや、ポリアモリーにごく近いスタンスが、日本にも存在した。「NTR属性」という、ゲーム用語でもおなじみの、「寝取られフェチ」と呼ばれる嗜好である。ゲーム内では、主人公である自分と相思相愛のヒロインが、他の男性キャラに凌辱され、徐々に淫らになっていくなどのシチュエーションが一般的だが、これを現実の世界でも実践しているカップルが存在する。自分のパートナーが、第三者とのセックスで快感を得ることに、嫉妬を抱きつつも、興奮を覚えるのだという。尚、第三者とのセックスを、目の前でさせるという人はさすがに少なく、後から「どのようなセックスをしたか?」ということを聞きながらセックスする、というパターンが多いようだ。

 また、NTR属性とまでいかなくても、「バレなければ浮気じゃない」という人も少なくない。一般的には、「パートナーに隠し事をされるのは嫌だ」という人が大半を占めるなか、男性でも女性でも、「わからないようにやってくれればOK」とのことだった。器用に出来る人もいるだろうが、良心の呵責によって、言わずにはいられないという人もいるだろうから、このスタイルは向き不向きがありそうだ。

 このように、ポリアモリーとまではいかなくとも、日本にも二股恋愛に否定的でないスタンスの人々は存在するようだ。ということは、いずれ近い将来、ポリアモリーが市民権を得る日が訪れるのかもしれない。日本の文化は、アメリカから流れてきているものが大半を占めるのだから。
(文=菊池 美佳子)

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