6日に放送された『家族のうた』(フジテレビ系)の平均視聴率が3.1%を記録。前回(4月29日放送分)同ドラマが記録した2000年以降のプライムタイム(19~23時)の民放連続ドラマ史上最低記録の3.4%をさらに更新したとして話題を集めている。放送開始前から、『パパはニュースキャスター』(TBS系 )との類似性が指摘されていた作品だけに、ネットユーザーらは「そもそも作ったフジテレビが悪い」や「出演者が可哀想」などと反応。一部報道では、「逆ミタ現象」そのものだという指摘もある。
昨年放送された『家政婦のミタ』(日本テレビ系)や『マルモのおきて』(フジテレビ系)が、ネットを中心とした口コミから人気を博したのは記憶に新しい。逆ミタ現象とは、まさにその口コミの影響で数字を下げてしまうということ。とはいえ、『家族のうた』というドラマそのものへの評価が、視聴率同様に史上最低レベルかといえば、それほど低いわけではない。確かに主演のオダギリジョーがむさ苦し過ぎるといった批判は多いものの、出演者の好演が光るといった意見も多い。やはり、作品どうこうというより、「フジテレビだから」や「どうせパクリなんでしょ」といったネット上で広がった口コミが視聴率に影響していることは否めないだろう。
そんな、視聴率が口コミの影響を受けていることを証明するかのように、比較的数字を稼いでいるのが『ATARU』(TBS系)や『鍵のかかった部屋』(フジテレビ系)といった1話完結もののドラマだ。今期放送されている連続ドラマの中で、これまでの平均視聴率が15%を超えているのがこの2作。全体の流れを知らずとも楽しめる1話完結ものであれば、口コミそのものの威力が半減し、視聴率への影響も強くないのだろう。
また、1話完結のドラマが好調なように、2時間ドラマや映画も高い数字を記録している。最近では、6日に放送された『相棒 ‐劇場版II‐ 警視庁占拠!特命係の一番長い夜』(テレビ朝日系)が平均視聴率19.1%を記録し、5日放送の『西村京太郎サスペンス 鉄道捜査官13』(テレビ朝日系)が15.3%、沢尻エリカ主演でも話題になった『悪女について』(TBS系)が14.7%など、軒並み高視聴率を獲得。口コミの影響をもろに受け、視聴率を上下させる連続ドラマと違って、単発もののSPドラマでは、話題性や作品の出来そのものが素直に視聴率に反映されているようだ。
もちろんテレビの視聴方法が変わってきたということも忘れてはならない。つまり、録画機器の発達や海外ドラマの影響で、「連続ドラマのイッキ見」が定着していることだ。とりあえず録画しておいて面白かったら見よう、という視聴者は多い。その日限りの放送となれば、スペシャルドラマの方がはるかにライブ感に勝り、連続ドラマの優先基準は下がることになる。
低視聴率が話題の大河ドラマ『平清盛』(NHK)も、そうした連ドラ不遇の時代だからこそ数字を稼げないのだろう。個人的には、ここ数年で一番面白いと思う大河だけに、数字を稼げていないのは残念なところだ。それにしても、これだけデジタル機器が発達しているというのに、未だに視聴率という物差しで一喜一憂しているテレビ業界が不思議だ。有料配信している番組を無料にし、そこで新しい価値基準を設ければ低視聴率云々という批判も少しは軽減されるだろうに。特に連続もののドラマには、視聴方法の変化からも、そうした配慮が必要なのではないだろうか。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/)
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