『同じ月を見ている』『編集王』『ギラギラ』『競馬狂走伝 ありゃ馬こりゃ馬』など数々のヒットで知られる漫画家の土田世紀さんが24日、肝硬変のため亡くなった。43歳の若さだった。「週刊漫画ゴラク」(日本文芸社)で『かぞく』を連載している最中の突然の死去に、業界関係者やファンから悲しみの声が上がっている。
43歳での夭折に驚きがある一方で、「マンガ家は早死にが多い」という意見も目立っている。実際、マンガブームの礎を築いたトキワ荘組は、手塚治虫(1989年没・享年60)、藤子・F・不二雄(1996年没・享年62)、石ノ森章太郎(1998年没・享年60)、寺田ヒロオ(1992年没・享年61)と、平均寿命よりも早く世を去った人が多い。
後の世代においては、その流れが加速しているようにも思える。
伝説的な少女マンガ家・花郁悠紀子(1980年没・享年26)、80年代の美少女ブームの中で異彩を放ったマンガ家でイラストレーター・かがみあきら(1984年没・享年26)、ちばてつやの弟・ちばあきお(1984年没・享年41)、『同棲時代』のヒットで知られる絵師・上村一夫(1986年没・享年45)、「ガロ」で人気を博した山田花子(1992年没・享年24)、『はみだしっ子』で熱狂的なファンを生んだ三原順(1995年没・享年42)、可愛い絵柄とブラックなギャグで人気だった作家・ねこぢる(1998年没・享年31)、望月三起也のアシスタントを経てコメディ作家として人気を博したみず谷なおき(1999年没・享年38)、『代打屋トーゴー』などで知られる作家・たかもちげん(2000年没・享年51)、ジャンプ連載作家・しんがぎん(2002年没・享年29)、病的で個性的な作品を残した華倫変(2003年没・享年28)など、数え切れないほどの作家が夭折している。
特定の職業の売れっ子だけ集めて、これだけ早死にをしているというのは異常に思える。しかも前述した作家たちに限れば、死因の大半が病死か自殺である。また、夭逝してすら日が当たらないエロマンガ業界の状況は、もっと悲惨だと言われている。
その一方で、今年90歳を迎えた水木しげるのように、老いてなお盛んという作家も存在する。水木はインタビューなどで「徹夜は一日ならいいけど、二日やったらダメです。石ノ森章太郎や手塚治虫は、それをやって(早くに)亡くなった」と語っている。やはり、マンガ家の過酷な生活が寿命を縮めるのだろうか。
「スケジュールの都合上、二日、三日、作家が寝ないで描き続けることはあるし、それが絶対に健康によくないのは当たり前。作家の先々の健康まで気遣う編集者なんてほとんどいませんから、出版社の言いなりになって作品を描き飛ばしていれば寿命も縮まる。修羅の道に思えますが、それでも比較的健康で長生きする人達も存在する。そういう人達は、マンガ以外の外の世界に触れてストレスを発散する術を持っている人が多いように思えます。求道的にマンガに没頭してる作家は早死にする」(出版関係者)
その道に没頭した人が早死にするのは、他の業界でも同じかもしれない。だが、マンガ業界はその傾向が特に強いように思えるのも事実だ。この連鎖を断ち切るためには、水木しげるが好んで色紙に書く格言「なまけものになりなさい」という言葉の意味を考え、見習う必要があるのかもしれない。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops)
名作です