ネオネガティブ!? オードリー若林&南キャン山里「たりないふたり」の魅力とは

※イメージ画像:『splash!!Vol.3』/双葉社

 南海キャンディーズの山里亮太とオードリーの若林正恭による芸人ユニット「たりないふたり」が注目を集めている。といっても、彼らの人気が急上昇したとかいう話ではない。2008年の『LIVE!潜在異色』からユニットを組んでいる2人は、これまでの間ずっと同じスタンスで笑いに取り組んできた。そんな彼らが、ようやく今年に入って世間に認知され始めてきた、ということ。

 たとえば、彼らのユニット名を冠した深夜番組『たりないふたり』(日本テレビ系)が今春放送を開始したことや、雑誌「週刊SPA!」(扶桑社)でのインタビュー記事が組まれたことなど、その象徴といえるだろう。つまり、大手メディアや一般の視聴者が「たりないふたり」に注目をし始めたということだ。ではなぜ今になって「たりないふたり」なのか。

 ことの始まりは2008年の『LIVE!潜在異色』。「見せたことない見せたいワタシ」というコンセプトで幕を開けたこのライブは、山里、アンガールズ田中卓志、ロンドンブーツ1号2号田村亮、ドランクドラゴン鈴木拓の4人で立ち上げられたもの。いずれもテレビバラエティのメイン舞台で活躍しながら、どこか秘めたる力を隠していそうなメンバーといえる。そんな彼らが今の自分の境遇に“危機感”を抱き、“新しい居場所”を求めた結果生まれたのが「潜在異色」だった。

 自分が本当に面白いと思うものを表現するという情熱は、メンバーを徐々に増やし、前述した若林やロバート山本博やサンドウィッチマン伊達みきおなどを加え、開催されたライブは全て盛況。そのあまりの盛況ぶりに企画されたスピンオフで組んだのが、山里と若林による「たりないふたり」だった。

 「たりないふたり」という名の通り、彼らは自分たちの欠点を「社交性がたりない」や「恋愛がたりない」と認め、それが2人の共通項だと言う。そんな「たりないふたり」による笑いについて、山里は、2010年に発行された雑誌『splash!!』(双葉社)の中で、「いかにネガティブな要素をみんなに怒られないように調理するのかっていうのがテーマ」と語る。

 「たりない」ということは確かに欠点だろう。しかし彼らは自分を「だからダメ」とネガティブに考えず、笑いに変えることで生きることを楽しもうとする。そしてそんな自分たちを彼らは「ネオネガティブ」と発言する。

「ネガティブはもはや標準装備なんです。だからむしろこのネガティブさをどうしたら生かせるかっていうことを考えようと」(山里・「SPA!」4月24日発売号)

「いろいろ人として足りなくても、言葉ひとつでラクになれたり、逃げられたりするってことを知ってほしい」(若林・前同)

 自分のネガティブさを武器に変えるという彼らの発言は非常に前向きだ。しかし、その前向きさはあくまでもポジティブではなくネオネガティブ。つまり、大変な労力を使って欠点を長所に変えるというのではなく、欠点を欠点と自覚して、その状態を面白がってしまおうというものだ。そんな素直な笑いが、注目を集める要因なのだろう。

 不安定な経済や長引く政治混乱、震災の爪痕は深く、原発問題も先行きが見えない。今の日本はネガティブな要素ばかりが目立つ。しかしそんな状況も、ただ悲観したり罵倒するだけでは何も変わらない。1人1人が自覚を持って行動することが唯一の打開策だ。だが、そうは言っても、誰もが果敢に行動を起こせるわけではない。ただの傍観者という人も多いだろう。そんな傍観者たちに向かって、「たりないふたり」の2人は「だったら面白がればいいんじゃない」と訴える。彼らに注目が集まるということは、それだけ傍観者が多いということなのかもしれない。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)

『君が笑う、それが僕のしあわせ』

 
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