「最近観た映画は?」と問われたら、貴方はなんと答えるだろうか? 『ドラゴン・タトゥーの女』や『ALWAYS三丁目の夕日’64』などの話題作を挙げる人がほとんどだろう。しかし、時にはVシネマやB級映画と呼ばれる作品にも目を向けてみると、なかなか面白い発見があるものだ。
さる3月3日土曜日、テアトル新宿にて上映イベントが催された『レイプゾンビ』(ゆうばり国際ファンタスティック映画祭正式出品)も、低予算・短期間撮影で制作された映画である。ちなみに、なぜイベント会場がテアトル新宿だったのかというと、「他の会場ではなかなかOKが出なかった」とのこと。上映に先立って行なわれた舞台挨拶で、監督の友松直之氏から飛び出した発言である。いったいどのような内容なのかというと、まさに題名どおり。「レイプ」と「ゾンビ」を主軸としたストーリーである。
「未知のウィルスか? 宇宙からの放射線か? 地球上、すべての男が不死身のレイプ魔と化し、彼らにレイプされると、女は中出しの毒で死んでしまう。レイプゾンビの息の根を止めるには、キ×タマを撃ち抜くか、チ×ポを切り落とすしかない!」という、コメディ要素を交えつつも、ハートウォーミングな成人映画も増えてきている昨今、危ないテーマにあえて向き合った作品だ。
いったい、どのような役者が演じているのかというと、主演は小沢アリス。ほか、小林さや、亜紗美、あいかわ優衣など。名前を聞いて、ピンと来た人も少なくないだろう。かつてアダルトビデオの世界で活躍したAV女優や、現在もなおAV業界で活動を続けるメンバーばかりだ。
あいかわ優衣、小沢アリス、亜紗美、若林美保、中沢健、友松直之
AV女優というと、「ハダカになってアンアン喘ぐだけ」というイメージを持つ人もいるかもしれない。しかし、主要キャスト4名ともに、みな演技のレベルが非常に高く、彼女たちの芸達者ぶりには舌を巻かされた。
もちろん、客としては「エロ要素」にも期待したいのが正直なところ。そういった客のニーズに応えるべく、オッパイ丸出しの過激なエロシーンも多く盛り込まれている。特に、主演の小沢アリスは、100センチGカップの「神乳」の持ち主。本作の役どころは、ラグビー部のマネージャーをやっていた高校時代に輪姦され、男性不信になったという設定。回想の輪姦シーンもさることながら、圧巻だったのは、なんといってもリストカットOL役・小林さやとのレズビアンシーンである。スレンダーな小林と、豊満な体つきの小沢との絡みは、その対比が実に面白い。
ス・ノゾミ(小沢アリス) (c)2011「レイプゾンビ」製作委員会
(c)2011「レイプゾンビ」製作委員会
ほか、見どころといったら、なんといっても亜紗美のアクションシーンである。本格的なアクションをこなす彼女は、今やB級映画の世界には欠かせない存在。舞台挨拶では、他の女優陣からも、「アクションシーンは、亜紗美ちゃんに教えてもらった」という声が挙がった。
そういった、出演者同士の現場エピソードが聞けるのは、一般的な映画の舞台挨拶でも同じかと思うが、特筆すべきは、なんといっても「出演者とファンの距離が驚くほど近い」ということ。まず驚かされたのが、一般客による舞台挨拶の撮影を禁じていないのだ。カメラを向けられる女優たちも、慣れているのか全く動じない様子。これが、一般映画の舞台挨拶ともなると、そうはいかないであろう。また、上演後には女優たちからのプレゼントを巡ってのじゃんけん争奪戦などもあり、ヤンキー女子高生を演じたあいかわ優衣から、セーラー服のリボンをゲットした男性ファンに、「この人、私をレイプした人です!」とのビックリ発言が! 何事かと思いきや、撮影にエキストラとして参加したとのこと。ゾンビエキストラは、こういったファン有志によって演じられたとのことで、ファンにとっては「客」というよりも「共に映画を作った一員」という思いもあるのかもしれない。また、ロビーで行なわれた物販にも女優たちは顔を出し、常連客に対して「いつもありがとうございます」と笑顔を見せる姿も見受けられた。ファンにとって、このアットホーム感はたまらないだろう。
ファンとの距離の近さ、そして作品の中で見せる女優力……今後、こういったジャンルの映画に目を向けてみるのも一興である。ハダカ+αで勝負できる彼女たちは、これからのB級映画・Vシネマ・成人映画の世界を大いに盛り上げてくれるだろう。そう、今や決してハダカだけでは生き残れない時代である。演技、アクションなど、彼女たちの多才ぶりには感心させられるばかりであった。最後に、イベントの進行を務めた、倖田李梨のように「司会力」のある女優が存在することも付け加えておきたい。
(取材・文=菊池 美佳子)