<前編はこちらから>
13歳で援助交際デビューし、大学進学後スナックでのアルバイトも経験するが、割に合わないと判断し、デリヘル嬢に転身したA子(現在24歳)。しかし、デリヘルも思いのほか稼げなかった。考えてもみたら、デリヘルはラブホや男性客宅への「移動」という時間のロスが生じる。それに加えて、男性スタッフの目が届かない場所でプレイを行なうためか、本番行為を求められる確率が非常に高いのだという。「10人中8人は『先っぽだけでいいから挿れさせて』と、あわよくばという展開を期待している」とのこと。これでは、個人営業の援助交際と変わらない。A子は、待機所で親しくなった先輩デリヘル嬢から、「箱ヘル」の存在を教えられ、現在の箱ヘルに移ってきた。
箱ヘルとは、店舗型風俗店のことである。「箱ヘルのほうが、愛がある気がする」と、A子は語る。箱ヘルは、男性スタッフと接する時間がおのずと多くなるためか、「お店に貢献したい」という気持ちが強くなるのだという。また、意外と簡単に起業できるデリヘルは、一攫千金を夢見る若い経営者が、適当に女の子を集めて経営しているケースもあるようだが、箱ヘルの場合は、何らかのワケアリ事情を抱えていそうな者が腹を据えて携わっているのか、仕事熱心で親身な男性スタッフが多いという。この点に関しては、いずれ是非「デリヘルも真心営業である!」という経営者からの声にも耳を傾けたいものだ。
話をA子に戻そう。彼女が「愛」を感じているのは、店に対してだけではない。自身が客としてマッサージ店などに行くたびに、A子は「指名」の重みを感じるのだという。「自分自身は、マッサージ店に行っても、指名することはない。そう考えると、「何十人もいる女の子の中から自分を選んでくれて、スッキリした顔で帰っていってくれるのが嬉しい」のだそう。「奥さんがヤラせてくれないっていうお客さんに悦んでもらうのが好き」とも語っていた。まさに天職といえるのかもしれない。
なので、「私、昼職もやっているんです」という言葉には、正直驚いた。どうやら、ずいぶんとお堅い職種のようだ。ということは、むしろ昼間の仕事だけで充分暮らしていけるはずである。それでも箱ヘルを続ける理由を訊ねたところ、「私、節約したくないんですよね」という、非常にシンプルな答えが返ってきた。
A子は、決してブランド物に身を包んでいるわけではなく、外見的にはごく普通の女の子だ。ホストに貢いでいる等の、過剰な贅沢をしているわけではない。それでも、「コンビニに行った時、小銭単位の値段を気にして節約したり、酔っ払って帰宅する際、タクシーを使うことにいちいち罪悪感を感じるのがイヤ」とのことだった。現在住んでいる家賃8万円のマンションも、年収200万円代の昼職だけでは住み続けることは不可能。そう考えると、やはり箱ヘルは辞められないのだという。
では逆に、箱ヘル一本に絞ってみては如何だろうか? この問いに対しては、再び「いい学校に行かせてくれた」という親の話が出てきた。「ご近所や親戚に、自慢できる娘でありたい」というA子にとって、昼間の仕事もまた辞められないものなのだろう。
最後に、気になるセックス観についても触れてみた。13歳で援助交際を始めて、しばらくは「セックスが特別好きではなかった」というが、今ではセックスが大好きなのだそう。きっかけは、社会人1年目の時に経験したセックスだった。あまりにも気持ち良すぎて、涙が出てきたとのこと。男としては本望だろう。それをきっかけに、一時期は10名のセックスフレンドを持つほど、セックスにのめり込んだこともあった。その中には、店の常連客だった男性もいた。聞けば、30代・40代のお相手が多いようだが、A子いわく「年上の人と接していると、得るものが多い」。「今までお金を貰ってプレイしていた相手と、お金ナシで本番行為まで……って、ありえないって思われるかもしれないけど、自分としては、ムダなセックスをしているつもりはない」という強い信念が感じられた。
箱ヘルと昼職とセックスフレンド……3つのうち、どれかを切っても、彼女はきっとやっていけるのだろう。それでも、今の状態が楽しいから、当分はこの生活を続けていくという。24歳という年齢がそうさせているのかもしれないが、10年後の彼女も、ライフスタイルはどうであれ、人生を楽しんでいてほしいと切に願う。
(文=菊池 美佳子)