なぜ売れない!? パンクブーブー「売れない」が「売り」の理由

※イメージ画像:『爆笑オンエアバトル パンクブーブー』
よしもとアール・アンド・シー

 29日、WEBサイト「ORICON STYLE」がインターネット調査を利用した『第3回 ネクストブレイクを期待する芸人ランキング』の結果を発表した。同調査でトップに輝いたのは、昨年放送のあった『THE MANZAI 2011』(フジテレビ系)で最終決戦に残ったHi-Hi。コンビ歴19年という苦労屋の2人にとってはさぞかし嬉しいニュースとなったことだろう。

 一方、またしても不甲斐ない結果だったのは、同番組で優勝したパンクブーブーだろう。すでに売れていると認識されてのランク圏外ならまだしも、未だにネクストブレイクを期待されながら、しかも5位という中途半端さは、彼らにとって厳しい結果と言わざるを得ない。

『THE MANZAI 2011』の優勝賞品として贈られた冠番組も、ふたを開けてみれば、フジテレビ新人アナウンサー三田友梨佳との『ミタパンブー』だったという笑えないオチ。「これじゃー三田さんが主役じゃないですか」とはパンブー黒田純の言葉だが、彼らの立ち位置が、もともと深夜に放送されていたフジテレビ女子アナによる○○パンシリーズのただのアシスタント芸人というのは明白。それを冠番組だと言って進呈するフジテレビ側の姿勢もどうかと思うが、パンブーとすれば有難く頂戴して爪痕を残す以外にないだろう。

 とはいえ、正直なところをいえば、番組そのものが話題になっているわけでもないのが現状。このままいけば、例年通り、番組は次の○○パンに受け継がれ、彼らがお払い箱となるのは時間の問題。これをきっかけにパンクブーブーという芸人が売れるには、大きな番組自体の方向転換が必要だろう。

 もちろん、今の彼らの知名度や人気を考えれば、彼らも立派な売れっ子芸人といえる。しかし、彼らの言う「売れる」とは、毎日のようにテレビで見かける、いわゆる「ブレイク」のこと。2人がまだそこに到っていないのは、露出度から考えても明白だ。なぜ彼らが一過性ともいえる「ブレイク」にこだわるのかはわからないが、芸人を目指した以上さらなる人気と知名度をと考えるのは当然のことかもしれない。

 M-1で優勝し、『THE MANZAI』の覇者となったパンクブーブー。二冠を戴く彼らのネタは抜群に面白い。しかも彼らは、同じく『M-1』優勝者のノンスタイルのように、フリートークに難があるというわけでも、視聴者に特定の不快感を与えるというわけでもない。華がないと人は言うかもしれないが、彼らより華がなくてなおかつ才能に乏しくとも、ブレイクしているタレントは多い。そんな彼らがなぜ売れないのか――。

 それはきっと彼らが堂々とその「売れない」ことを「売り」にしているからではないか。たまにテレビで見かければ「M-1で優勝したのに売れない」と叫び、『THE MANZAI』優勝時には「これで絶対に売れなきゃいけなくなった」とコメントしたパンブー。ただのコメントであれば問題ないが、彼らの発するその言葉の後には必ず笑いが生まれた。

 つまり、「M-1で優勝したのに売れない」というのは、すでに彼らのギャグになっている。もちろん、彼らのほかにも賞レースで優勝したのにもかかわらず思ったように売れないという芸人は多い。しかしパンブーの場合、それがなぜかギャグになってしまった。しかもそれはお決まりの鉄板ギャグとして、世間に認識されてしまった。

 そんなギャグを決定的に面白くしたのが『THE MANZAI』の優勝だったわけだ。なぜなら「M-1で優勝したのに売れない」より「M-1でもTHE MANZAIでも優勝したのに売れない」のほうが断然面白いからだ。普通に考えれば、「まあ売れるだろうね」という彼らの肩書きも、視聴者が暗黙のうちに求めている「それでもなぜか売れない」というお決まりには適わない。しかも彼らには、前述したように「目立った欠点がないにもかかわらず」という、さらにそのギャグを面白くさせる要素がふんだんにある。彼らが売れるには、その「優勝したのに売れない」というギャグを払拭するほどの活躍が必要となるだろう。が、それは至難の技だ。

 たとえば、そんなパンブーと同じように、いつ何時もお決まりのギャグを求められる芸人にダチョウ倶楽部が挙げられる。彼らは、どんな場所でも「ヤアー!」と言い、「どうぞどうぞ」のギャグを披露する。そしてその光景は何度見ても飽きないものだ。パンブーの「優勝したのに売れない」という言葉も、そんなダチョウ倶楽部の「どうぞどうぞ」と同じなのではないだろうか。パンブーの2人が「僕らは絶対に売れなきゃならないんです」と必死の形相で言う様子は、それだけで面白い。

 芸人にとってそんな鉄板のギャグは宝物だ。ダチョウ倶楽部も、ただリアクションをとっていただけなら、ここまでの存在にはならなかっただろう。しかし、パンブーにとって致命的で悲劇的だったのは「売れない」ということを「売り」にしたギャグを手に入れてしまったということだ。言うまでもなく、売れてしまってはこのギャグは使えなくなってしまう。さらにいえば、すでに「優勝したのに売れない」という言葉をギャグとして受け止めている視聴者から抜け出し、それを裏切って彼らがブレイクすることは難しい。彼らに残されている道は、また漫才の賞レースで優勝してよりそのギャグを面白くすることしかない。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)

『M-1 グランプリ 2009 完全版 100点満点と連覇を超えた9年目の栄光』

 
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