レコード大賞40年の歴史を辿って』/全音楽譜出版社
NHK紅白歌合戦、日本レコード大賞という年末の2大音楽イベントに絶大な影響力を持ってきた、あの”芸能界の実力者”S氏の求心力が急激に低下中だという。
「少し前まではS氏に呼ばれると断れずにすぐに駆けつけたブレーンの社長たちが、彼と距離を置きだしたんです」と言うのは、S氏と親しい大手プロ幹部。
「理由は、S氏が暴力団排除条例を受けて、当局に目を付けられているという噂があるからです。あまり近寄って、万が一の時に、道連れにされたくないということですよ。レコ大に対する発言力はいまだにあるようですが、今年の紅白に関しては、その出場者の選考に深く関与できない立場に追いやられています」
今年は、NHKが紅白出場者発表前に、番組出演における暴力団排除の指針を発表したことで、これまで暴力団との交際の噂があった複数の演歌歌手の出場が危ぶまれた。ところが、NHKに出入りする音楽関係者は「暴排条令もNHKの指針も、絵に描いた餅ですよ」と言う。
「今年の紅白は、去年、S氏の意向で選からもれたK-POP勢が加わるくらいで、暴排条例におびえているといわれた演歌勢もほぼ安泰ですよ。でも、それはこれまで演歌勢の選考にも強い影響力を持ってきたS氏の力ではありません」
前出の大手プロ幹部は「NHKは暴排条令が施行される前から、S氏と癒着の噂があった紅白のスタッフに出場者選考にタッチさせないようにしてますよ」と言う。
「幸い、去年の紅白の担当責任者で、S氏と親しいといわれていたK氏は定年を迎えて、『NHKエンタープライズ』に行きましたからね。後任は、長らく演歌を担当してきたプロデューサー。S氏とは関係なく、東日本大震災の被災地を無視できないということで、北国出身の千昌夫や北島三郎、それに、被災地への支援活動を積極的にやってきた鳥羽一郎と小林幸子らも当確ですよ」
一方、レコ大は11月18日に優秀作品賞10曲を発表。4連覇が噂されたEXILEが辞退したことで、大賞の大本命はAKB48といわれている。
「AKBのプロデューサーである秋元康は、S氏との関係がうまくいっていないことから、所属事務所のトップが、エイベックスのトップを通じて、S氏に接触。日本レコード大賞獲得のための膨大なプロモーション費が動いたといわれています。年末に向けて、S氏周辺では、さらに大きな金額が動くかもしれません」(レコ大関係者)
また、某大手レコード会社幹部は「今年のS氏は、表面には出てきませんが、利権を死守するために部下を動かしていますよ。大賞候補である優秀作品賞発表直前になって、この部下がレコ大審査員に『KARAを入れろ』と言ってきたとか。裏で、S氏側とKARA側に何らかの密約が交わされたともっぱらのウワサです」と語る。
もはや、社会的にはほとんど影響力がないといっていいレコ大だが、業界内ではかろうじて存在意義を残している。その中でプレゼンスを発揮しているS氏だが、側近が離れていく中で、その威光はいつまでもつのだろうか。
『日本レコード大賞 50th Anniversary Vol.1: 1959年-1984年』
輝かしい栄光も今や昔!?