新キャラ続出!? 中堅芸人イジりイジられの秘密

 数あるネタ番組が終了し、お笑いブームの終焉が叫ばれたのもすでに過去のこと。しかし去りすぎたブームの後にも、お笑い芸人たちはテレビを席巻し続けている。当時、若手として登場した芸人の多くがテレビから消えていったが、生き残ったものは中堅芸人としての地位を確立した。そんな彼らが次なる戦いを挑んでいるのは、同じ中堅芸人同士の熾烈なイス取りゲーム。すでにここまでのサバイバルを勝ち抜いてきた芸人たちの実力は拮抗している。誰が抜け出すかいよいよ分からない現代テレビバラエティー界。そんな実力伯仲の彼らが、さらに仕事の幅を広げるために選んだのは、新たなキャラクターの発掘という方法だった。

 まず、新たな一面をお茶の間に覗かせ、近頃人気の中堅芸人といえば、元キレキャラで現在良い人キャラというカンニングの竹山隆範の名前が挙がるだろう。2006年の相方・中島忠幸の悲報以降、徐々に露見してきた竹山の本来の姿である”良い人”というキャラクターは、今では定番となっている。特に、アンタッチャブルの山崎弘也などから受ける”本当は良い人イジり”は、竹山自身「営業妨害だ!」とキレるものの、実際はその逆の効果があったといえるだろう。

 また、フットボールアワーの後藤輝基も、以前は鋭いツッコミで笑いをとる純粋なツッコミ芸人であったものの、近頃ではそのツッコミフレーズのあまりの巧みさから”スマートツッコミ”とイジられるキャラに変貌している。竹山同様、本意ではないのかもしれない彼らへの”イジり”だが、そこに大きな恩恵があるのは疑いようがない。

 さらに、以前はイケメンキャラとして売り出していた狩野英孝も、『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)で行われた数々の企画によって、徐々にその天然さが露見。今では立派な”イジられキャラ”として活躍の場を広げている。近頃では出川2世との呼び声も挙がるほどになった狩野。偶然か狙いかは分からないが、それもすべては彼が新しいキャラクターを発掘したからだろう。

 そんな彼らの特徴は、テレビに出始めたころと今ではまったく逆のキャラクターを身につけたという点だ。狩野に関していえば、もともとが得体の知れないキャラであったため断言できないが、キレキャラの竹山やツッコミの後藤は人をイジることによって笑いをとるタイプだったことは間違いない。そんな彼らが今では立派なイジられキャラになっている。だが、そもそもがイジるタイプの芸人だった彼らが、なぜ真反対のキャラクターを選んだのだろうか。

 まず第一にテレビバラエティーというものが世に出始めてから、イジる側の芸人といえば場を仕切るものだった。しかし、テレビ局の数が増えているわけでもないバラエティー業界、その役割を分け合うには、あまりにも芸人の数が多すぎる。そこで彼らは否応なく、イジられる側に回ったといえる。それが功を奏したケースが上記した3名というわけだ。

 もともとイジられキャラの芸人をイジるより、元来そういった性質を持たない芸人をイジった方がより受けるのは間違いない。また、これまでイジられることのなかった芸人というのは、きっと芸人になる前の段階でもイジられることのなかった人々だろう。それは、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の名企画「中学のときイケてない芸人」に出演していた、きっと学生時代はイジられキャラだっただろう芸人が(たとえばサバンナの高橋茂雄など)、現在はイジられキャラとして活躍していないことと関係があるように思われれる。つまり、一般の世界ではイジられキャラだった芸人はイジりキャラとして活躍し、逆に、一般の世界でイジりキャラだった芸人がイジられキャラとして活躍しているということである。

 このことは、テレビバラエティーの良くできた仕組みとして理解できることだろう。やはり、一般の視聴者にとっても、イジられるべき人間がイジられていると不愉快な思いがするものだ。それとは逆に、明らかにイジられそうもない人間がイジられているのを見ると痛快な気がする。サバンナの高橋が後藤をイジり、アンタッチャブルの山崎が竹山をイジる。近頃、以前とはまったく違ったキャラクターを覗かせ人気を呼んでいる芸人たちは、本来の一般の人々が抱いていた”イジりイジられ性質”の逆を突いたということなのだろう。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)

『大沢佑香ちゃん、浜崎りおちゃん、イジラレ屋台の中で潮吹きながらホットドッグ売ってきてくれませんか!?』

違うところをイジられ中

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