極端にセックスを愛するスキモノでなくとも、「プラトニックラブなど存在しない」と、ほとんどの人が口を揃えるであろう。プラトニックラブとは、セックスが無くても「彼氏・カノジョ」として付き合いが成り立っている状態を指す。果たして、そのような形態での愛が長続きするものなのだろうか? 妙齢の男女が精神面で愛し合えば、早かれ遅かれ肉体面の欲望も沸き上がるのが一般的である。大げさに言うと、「好きになったらセックスするのが当たり前」という人のほうが圧倒的多数と考えられる。さらには、プラトニックな関係があまりにも長く続くと、「自分は本当に愛されているのか?」と不安に感じる人もいるくらいだ。いったい、プラトニックな関係性を築いているというカップルには、どのような背景があるのだろうか。
まずは、男女のどちらかが性に関する職業(ソープ嬢・出張ホストなど)に携わっており、プライベートでは休ませてあげたいという理由から、プラトニックラブであるという人がいた。「自分とは性交渉を持たないのに、客などとセックスしていることに嫉妬はないのか?」という疑問に対しては、「仕事なのだから、割り切って考えられる」とのこと。
また、セックスレスで別れるカップルも多いなか、「彼氏が何らかの原因で勃起不全になったが、別れるつもりはない」という女性も。むろん、男性側の体調が回復すれば、いずれは肉体関係を持ちたいと考えているが、それを急いではいないという。実に良好な関係といえるが、こういった理想的な関係性を築くには、カミングアウトしやすい間柄であることが重要であろう。
潔癖気味で、セックスに対して積極的になれないというケースもあるようだ。具体的に言うと、キスは可能だがディープキスはNGなど。また、裸体を見せることに対する羞恥心や、排泄行為も兼ねる部分を結合することに対する嫌悪感があるという人も、少数だが存在した。幸い、パートナーも同じ考えであるため、問題ないのだという。
さらに、セーファーセックスという観点から、プラトニックラブというスタンスをとっている人もいる。セーファーセックスとは、日本ではまだまだ馴染みのない言葉だが、性感染症に感染するリスクの高い行為を避けるという意味。「特定のパートナーとしかセックスしないのだから、心配無用なのでは?」と思ってしまいがちだが、その特定のパートナーが、何らかの性病ウイルスのキャリアである可能性もゼロではないのだ。例えばHIVは、潜伏期間が長いという理由や、母子感染という経路もあるので、すぐに陽性者とはわからないという危険性も含んでいる。
では、具体的にセーファーセックスとはどのように行なうのか? コンドームの使用、定期的な検診などの他に、オーラルセックスは食品用ラップでワンクッション設けてから行なうなど、徹底ぶりには驚かされる。また、ウィンドウピリオドといって、ウイルス感染後、検査でも感染が確認できない空白期間があることから、交際を始めた時から1カ月はセックスを控え、1カ月後に、お互いがキャリアでないことを確認するため検査を受けるというやり方もセーファーセックスの1つ。そして、セーファーセックスの中でも、究極の方法が「セックス自体をしない」という選択肢だ。
今回ご紹介した、「セックスしないカップルの例」は、まだまだ一般的には理解されない愛の形なのかもしれない。しかし、時代が進むにつれて、こういったスタンスの男女が増えることも考えられる。賛否両論あるかと思うが、いずれにせよ、今後も目が話せないテーマであることは間違いないといえるだろう。
(文=菊池 美佳子)