先月、米アリゾナ州で表向き宗教団体を装っていた団体が、実は売春を含む風俗営業の組織だったことが判明し、働いていた男女20人が逮捕されるという事件があった。逮捕者の中には「マダム格」とされる50代の女性も含まれていた。
米メディアによると、摘発されたのは「フェニックス・ゴッデス・テンプル」という団体。エジプト古来の”神聖なる性と快楽のスピリチュアリティ”を伝導する目的で発足し、インドを中心とした神秘主義な教えを使った「癒しのセラピー」を主な活動としていたのだとか。
エジプトなのにインド神秘主義……? というツッコミはさて置き、この団体は2009年に”教会”を設立している。周辺住民は「いわゆる新興宗教の1つだろう」と思っていたそうだ。ところが今年になって、警察に「教会に来る”信者”たちの言動がどうもおかしい」という通報が入るようになったという。そこで警察は半年間にわたる内偵捜査を続け、教会内部で”金銭的な寄付”の見返りに癒やしの療法である性的サービスを提供していた証拠を入手した。その額たるや月間で数万ドルに及んでいたという。
この団体、ウェブサイトも存在している。HPでは「セックスは人間の存在の核心にある神聖な癒やしの力」などと主張していたといい、「女神」とカテゴライズされたページでは複数の州に住む裸の女性を紹介していた。さらに、同団体名でアダルト系サイトに広告を載せて積極的にPRしていたことも発覚。これだけ大っぴらに活動していて、よくそれまで当局が気づかなかったものだ。
さて、アメリカでは風俗の法規制も州によって異なる。ネバダ州だけは唯一、売春を合法としているが、ラスベガスは非合法地域となっている。同州で売春が合法化されたのは1971年で、公認売春宿第1号として「Mustang Ranch」がオープンした。サイトもある(http://www.mustangranchbrothel.com/)。
これらの売春宿は、英語でChicken Ranch(Brothel) と呼ばれ、女性は性病検査を義務づけられ、銃で装備したガードマンによって安全が守られている。ラスベガスからタクシーで60分の地域にあり、遊び方・プレイの日本語の「メニュー」もあるとか。
売春というと、日本では眉をひそめる人が多いと思うが、ヨーロッパでは合法の国が多い。イギリス、フランス、ドイツ、スイス、オランダ、スペイン、デンマーク、ギリシャ……、国名を挙げたらキリがない。誰もが監視できる公の場にあった方が、マフィアの資金源になったり性犯罪が増えたりしないという発想だ。歌舞伎町から風俗店を締め出して、見た目だけきれいにしようとしている誰かとは根本的に考え方が違うのである。どちらが良いかは、国民(市民)が決めることだが、国としての成熟度も問われるテーマだ。
(文=上条泡介)
節制するはずなのに?