稀にではあるが、飲食店や娯楽施設などで、店員に対してずいぶんと横暴な態度をとっている客がいる。例えば、ファーストフード店にて。食べ終わったトレイを返却台に返さず、そのまま立ち去ろうとした客に対して、店員が「こちらにお戻し頂けますか」と声をかけたところ、「それは店員の仕事だろう!」と言い返している人を見かけたことがある。高級レストランならまだしも、ファーストフード店はセルフサービスがルール。店員が片付ける、というサービス料が含まれていないからこそ安いのだということを理解すべきだろう。同じように、100円均一の生鮮コンビニでも、「惣菜の味付けが濃い!」と怒鳴り散らしている客がいたが、100円の惣菜にそんなにも激高する権利があるのだろうか、と疑問に感じさせられる。
そういった、モンスターな客がいる一方で、「客としての権利」を主張できないという者も存在する。近年の、男性の草食化による影響なのか、風俗店において、「チェンジ」と言えない男性客が急増しているというのだ。
すでに馴染みの女性がいて、指名でサービスを受ける場合はさておき、フリーで入ると、店側がセレクトした女性があてがわれることになる。そういった場合、好みに合わない女性が登場する可能性も充分ありえる。写真指名とて、同一人物とは思えないような実物が現れることもあり、本人が登場するまでは、とにかく気が抜けないのだ。
風俗店等を利用したことがない男性は、「オンナであることを売りにする職業なのだから、それなりの容姿レベルに達している女性しか働いていないのでは?」と疑問に思うかもしれない。確かに、一定の金額以上の高級店ならそうかもしれないが、時代は平成の大不況下。破格の値段で性的サービスを受けられる店が激増している。そういった大衆店では、働く女性も様々……という事情なのである。
むろん、店側とて鬼ではない。どうにもこうにも好みでない女性が現れた場合は、チェンジ可というシステムを設けている店もある。チェンジに料金が発生する場合もあるが、好みでない女性と交わるよりは、チェンジのシステムは大いに活用すべきである。
にもかかわらず、「チェンジ」のひと言がいえないとはどういう心理状況なのか。一番多く聞かれるのが、「チェンジさせられる女性に申し訳ない」という意見。次に、「店側に面倒をかけるのが申し訳ない」という声も聞かれた。他者への気遣いが希薄になりつつある現代において、こういった考えの男性が存在するというのは、ある意味新鮮な驚きである。「noと言えない日本人」ならぬ、「チェンジと言えない日本人」といったところだろうか。
こればっかりは、個人の性格にもよると思うので、「チェンジと言えるようになるべきだ!」と推奨するのは少し違う気がする。となると、最初からチェンジの必要がない方向を目指すほうが手っ取り早いだろう。
まずは、写真指名するという選択肢だが、先述のように、同一人物とは思えないような実物が登場することもある。風俗常連の男性に写真指名のコツを聞いたところ、「細く見せるために写真を引き伸ばしているケースが一番多い」とのこと。よって、起立して写っている写真は、体型修正を疑うべきだという。その点、寝そべって写っている写真なら、縦に引き伸ばすことはないので、体型修正していない確率が高い。
他にも、「オススメは?」「人気のあるコは?」と従業員の意見を求める方法もある。ハズレ女性を推すと、当然リピーター率は下がるので、さすがに嘘をつくことは少ない。とはいえ、人の価値観には個人差があるので、「スリム系でオススメのコは?」「ギャル系で人気のコは?」など、具体的に質問すると良いだろう。
逆に、「これだけはどうしてもNG」という点を伝えておくのも重要である。顔は確かに好みだったが、服を脱がせたところ、全身にタトゥーが施されてあり、萎えてしまったというエピソードを持つ男性も。タトゥーが悪いということではない。逆に、タトゥを好む人もいるだろう。ただ、この男性のように、「タトゥーはNG」などの好みがある人は、先手を打っておいたほうが無難である。
「こっちはカネを払っているんだ!」と、心の中でシャウトしているはいえ、なかなか「チェンジ」が言い出せない……それが日本男児の優しさなのだろう。殺伐とした世の中ではあるが、こういった気遣いの持てる男性がまだ多いというのは、日本もまだまだ捨てたものではない。とはいえ、せっかく大枚をはたいて遊ぶのだから、チェンジが言い出せないのなら、最初からチェンジの必要がない方向を目指せるよう、コツを掴んで頂きたいと切に願う。
(文=菊池 美佳子)