9月23日から公開されている映画『モテキ』が思わぬ大ヒットになっている。初日から14日間で興行収入は10億円の大台を突破し、「30億円突破は確実、それ以上もあり」(映画ライター)といわれている。10月25日に発表された映画興行ランキングでは3位にランクインし、公開を1カ月過ぎているにもかかわらず人気はとどまるところを知らないようだ。
原作は200万部超の大人気コミックで、昨年7月クールにテレビ東京系でドラマ化された。映画版は原作者の久保ミツロウが新たに書き下ろした完全オリジナルストーリーを、大根仁監督が脚本化したものとなっている。恋愛経験のない30代草食系男子(森山未來)が、突然モテ始めるというストーリーで、次々に現れる美女4人(長澤まさみ、麻生久美子、仲里依紗、真木よう子)らとの恋愛に奮闘する姿をコミカルに描いている。
さて、映画の大ヒットで10億円以上の収入が転がり込むともウワサされるテレ東だが、株価は低迷したままだ。10月24日現在、1,100円を少し超えたところでうろうろしている。
「原因はテレビ東京HDの業績予想が大きく変わり、投資家が疑心暗鬼になっているせいです。2012年3月期の連結業績予想は当初、売り上げ1,083億円で経常利益が4億6,000万円の赤字、最終損益が10億9,000万円の赤字という最悪の見通しでした。これが投資家の売りを呼び、1,400円近い株価は1,200円割れとなった。それが、第1四半期決算段階で早くも大幅変更。売上高を1,091億円に上方修正し、経常利益も7億4,000万円の黒字、最終損益も4,800万円の黒字決算に変更しました」(証券会社アナリスト)
これで株価も元に戻るかと思いきや、そうはならなかった。番組の平均視聴率は一向に上がる気配を見せず、スポットCMも横ばい状態だからだ。象徴的だったのは、『月曜10時枠の連続ドラマ』が打ち切られたことだろう。制作プロダクションのディレクターはこう話す。
「昨年10月クールから始まったドラマは、いままで『モリのアサガオ 新人刑務官と或る死刑囚「絆」の物語』、『最上の命医』、『鈴木先生』、『IS~男でも女でもない性~』の4つほどありますが、視聴率は2桁どころか、5%を超えるのもやっとの作品ばかりでした。最後の作品は2%前後です。ただ、1作目の『モリのアサガオ』もそうですが、ドラマ自体の評価は悪くないのに、視聴率が取れない」
視聴率が悪いのはテレ東だけではないという慰めの声もある。
「ビデオリサーチの数字(関東地区)をもとにした『週間視聴率トップ30』を見ると、10月3~9日の1位の視聴率は、史上最低の18.1%(笑点、日本テレビ)でした。これは09年4月に出た18.9%を下回るワースト記録です。この時期は多くの新番組のスタートを控えた特番ウィークなのですが…」(広告プランナー)
もはやテレビ業界のじり貧傾向は歯止めがかからないところまで来たということかもしれない。実写映画で実績の乏しいテレ東がせっかく映画をヒットさせたものの、テレ東の経営を劇的に変えるということにはならないようだ。
(文=上条泡介)
いつ来るのかな……