アイドルとは何なのか?
そんな問いを我々に突き付ける異端児・BiSが、12月20日に恵比寿リキッドルームでワンマンライヴ「IDOL is DEAD」を開催する。リキッドルームのキャパシティは約1,000人。無謀ではないか……? その翌日にはニュー・シングルを発売予定。さらに、リキッドルームのチケットの一般発売日である10月19日には、タワーレコードで1,000枚限定のワンコインシングル「nerve」も発売する。
「My Ixxx」では全裸で森を走り回り波紋を呼んだBiS。YouTubeでの再生回数は約80万回と増え続け、相変わらずコメント欄はタイ語で埋まっている。その光景にはもはや安定感すらある。
そのBiSが、前回のインタビュー(https://www.menscyzo.com/2011/05/post_2604.html)から5カ月を経て再びメンズサイゾー編集部を訪れてくれた。本当にリキッドルームでワンマンライヴをして大丈夫なのか? 「IDOL is DEAD」と言いながらBiSが終わってしまわないか? 今後の彼女たちの人生はどうなってしまうのか?
リーダーのプー・ルイ、「ユケ」ことナカヤマユキコ、「のんちゃん」ことヒラノノゾミ、そして7月に加入したばかりの「ユッフィー」ことテラシマユフに話を聞いた。
──今日(10月11日)って、ユッフィー以外の皆さんがBiSのオーディションで出会ってからちょうど1年なんですよね。
プー「そうなんですよ。一次審査でユケとのんちゃんに会って。でもふたりはお互いには会ってないです」
──1年経ってみて、理想のアイドル像とズレはないですか?
プー「理想はないまま始まったから、これはこれでいいです」
のんちゃん「はい、楽しいです」
──でも、「My Ixxx」の撮影現場でのんちゃんが吐いたっていうじゃないですか。
のんちゃん「あのときは緊張と、煙草の臭いにすごく弱いっていうのもあって。スタッフさん結構吸ってて頭がクラクラして」
ユケ「行きの車が揺れてダメだったんだよね」
──そんな思いをしてても秋田にいるよりも楽しい?
のんちゃん「楽しいです、いろいろ日々発見があって」
プー「何発見した、最近?」
のんちゃん「行きかう人の歩き方」
ユッフィー「アイドルと関係ない、日常じゃん(笑)」
──大阪と東京は早いって言いますもんね。オーディションのとき、「私はセンターじゃなきゃ嫌です」と言っていたユケはどう?
ユケ「普通です、別にBiSはセンターとかないんで。でも特別に『こうしろ』って強制もなく1年間のびのびやってこれたんで、普通に楽しいです。でもアイドルってこんな感じなんですかね。テレビの収録現場に行って、台本に書いてなかったけど虫食わされたりとか、私たちってそんな感じじゃないですか?」
──ちょっと特殊ですね……。メンズサイゾーでのインタビューは2回目ですが、前回が5月だったじゃないですか。ライヴを始めて3カ月、アルバム「Brand-new idol Society」が出て2カ月の段階。その前回からもう5カ月が経ってしまいました。りなはむが脱退しちゃったけど、その後に「My Ixxx」がデイリーで26位になってしまった。5月にインタビューしたときって、「BiSはインディーズバンドみたいなもの」だっていう意見もあったりしたのが、「My Ixxx」が売れてなんとなく「BiSはアイドル」ということで収まった気がするんです。何か不思議な感じだなと思うんですけど。アイドルとして生活してみてどうですか?
プー「楽屋で可愛い女の子のブラジャーを拝めてとても幸せです」
──ヲタからアイドルとして見られることに対しては違和感ないですか?
プー「全然ないですよ。だっていろいろ言われてたときも私はアイドルって思ってましたから(手でハートを作りつつ)」
ユケ「なんで今ハート作った!?」
──いろんな人がのんちゃんにTwitterで話しかけてくるわけじゃないですか、どういう気分ですか?
のんちゃん「ありがたいですね。こんな私なんかのために時間を割いてくれて」
プー「謙虚」
──謙虚っていうか、そんな自虐的な……。ユケはアイドルとしてどうですか?
ユケ「子役とかやってた時からいろいろ応援してくれる方とか周りにいたけど嬉しいですね。それに比べて人数も増えたし」
プー「ハグ会もこっちが楽しいですね。逆に『皆が逃げてくのが超可愛い』って楽屋で話してるんですよ」
──ユッフィーは加入していきなりハグ会とかやらされて大丈夫でしたか?
ユッフィー「初めはすごく『どうしよう!?』と思って。だって男の人とそんな至近距離になるなんてないじゃないですか」
──ユッフィーってふだんからこうなんですか? カマトトぶっているわけじゃなくて? これが計算ずくだったら恐いなって常日頃から思ってるんですけど。
プー「そうですね、まだうちらはまだユフちゃんの本性を見れてないです」
ユッフィー「皆さん本当に優しくて、自分が汗かいてるからってTシャツを替えてきてくださる方もいて、『私たちも衣装が汗でびしょびしょなのに、そのままでいいのに』って」
──汗かいたからって、上半身裸で来る人はいなかったですか?
ユッフィー「それはいなかったです」
プー「来てたらどうしてた?」
ユッフィー「ちょっとびっくりすると思うんですけど、Tシャツを着せてあげたかもしれないですね」
──こういう受け答えが本当にうまいですよね。ユッフィーのソロ時代の活動を見ると、あさがやドラムに出てたじゃないですか。すごく狭いライヴハウスで、そこからいきなりリキッドルームとか、普通の人間だと精神が狂うと思うんです。環境が変わってどうでした?
ユッフィー「リキッドルームはステージも広いし、楽屋も広いし、こんなところでできるんだって。でも、やってることは『歌が好きで歌ってる』ってことは変わってないから、あんまりライヴハウスの規模とかには左右されない、って言ったら変ですけど、別に小さいからやる気がなくなっちゃうとかはないので」
──前回のインタビューの時に、プーが「BiSっていう新しいアイドルのジャンルを作りたい」っ言ってましたけど、りなはむが抜けてユッフィーが入って、普通のアイドルっぽくなったと思ったりはしませんか?
プー「BiSはBiSらしく突っ走ったから、よりBiSになったと思います。グループの色は強くなったんじゃないですかね」
のんちゃん「ユフちゃんがはいってくれたことで4人としてさらにまとまりが出たなって思っています。嬉しいです」
──でも最近、プーは放送禁止用語を言わないように心がけてるそうじゃないですか?
プー「言ってるんですけどカットされたりとかしますから。何も考えてないですよ。ま●こ!」
──ありがとうございます。でも最近は「新生アイドル研究会」としてアイドル研究はしてるんですか?
プー「してますよ。振り付けのパクリとか」
ユケ「引用をね!」
──ユッフィーは好きなアイドルはいますか?
ユッフィー「今AeLL.さんが好きです。ライヴでご一緒させていただいて、けっこうカバーとかやってらっしゃるんですよ。それがすごく良くて、もう大好きです」
──ユケは最近アイドルを見たりしてますか?
ユケ「ももクロちゃん(ももいろクローバー)でもももか(有安杏果)が好きです。でも実際は完全認知でレスをもらったのはかなこ(百田夏菜子)なんで流れそうになったんですけど、やっぱりももかなんですよね。
──今ももクロの話が出ましたけど、「ピンキージョーンズ」のカヴァーの許諾が下りなかったのはなんでだと思いますか?
ユケ「大人の世界の話っすよ」
──あと、DIYも標榜してたじゃないですか。最近は何かDIYをしてますか?
プー「物販のラミネート写真を作ってるんですよ。その場で会計もやってるし」
ユケ「インストアのブッキングですね」
プー「あとはセットリストを自分で考えて、オケをCD-Rに焼いて。なんかバンドみたいなことやってるよね」
──セットリストはマネージャーの渡辺さんではなくメンバーで決めてるんですか?
プー「プー・ルイが係です。焼くのも全部」
──メンバーで相談しないんですか?
プー「だってあんなにライヴがあったらたぶん決められない。そういうのが普通になっちゃってるから、何がDIYかって聞かれたらわからないよね」
──ワンコインシングル「nerve」はアルバムからのシングル・カットですが、ユッフィーだけ録り直してるんですか?
プー「私たちもちょこちょこ録り直してますね」
──プロデューサーの松隈ケンタさんのインタビューで、皆がパートの奪い合いがあると話してましたが、それは今回も?
プー「表立っては全然ないですよ。松隈さんと渡辺さんで歌割りは決めちゃうんで、全員録ってふたりがどこで誰を使うかって決めるんです。ただ、録ってる時に皆がメインを歌いたいから、ちょっと殺伐とした雰囲気になるって話なだけだと思います」
──自分のソロパートをもっと増やせって思いませんか?
のんちゃん「あったらありがたいですけど、でもハモリも楽しいです」
ユケ「大丈夫です、別に私が歌ってもアイドルの曲にならないんで」
ユッフィー「私は歌いたいです、歌がやりたくて入ったので。でもそのためには練習しなきゃいけないなって思うんですけど」
──「nerve」のかつてのりなはむのパートって、プーがりなはむっぽく歌ってるように聴こえます。
プー「そうなんですよ。りなが抜けたんで、可愛いポジションに行こうかなって思って」
──そうは問屋が卸さないのでは。
プー「なんでですか、こんな可愛いのに!」
──新曲の「gugigi」では、ユッフィーがすごく色っぽい声出してますよね。アヘ声寸前みたいな。
プー「あの声、いつも出してるんですよ」
ユッフィー「出してない! あれ歌詞には普通に『あー』って書いてあったんで歌ったんですよ。でも松隈さんが『いやもっと、あはーんって言ってください』って言われて、すごく恥ずかしくて」
プー「この照れも演技ですからね」
ユッフィー「でも楽しんでいただけたらうれしいです。やっぱり印象に残ってるって言っていただけると嬉しいです」
──きれいにまとめますね。いつもこの調子なんですか?
ユケ「楽屋で『今日まだお夕飯食べてない』とか言ってますよ」
のんちゃん「上品ですね。なんか私が使ったことのないような言葉を使ってるんで、育ちの良さが出てるなって思ってます」
──「I’m coming!!」はプーのソロ時代の曲だけど、4人で歌うってどういう気分ですか?
プー「BiSでやれて逆に嬉しいです。むしろ『みんなのプー・ルイ』(ソロ時代のアルバム)を『みんなのBiS』で出したいくらい」
──それは一粒で二度おいしいですね。「nerve」が出た後には、12月21日発売のシングルの先行販売もリキッドルームでやるんですよね。そこでハグ会、キス会(事前にチケットにキスをする)、ささやき会もやる、と?
プー「なで会、ビンタ会、握手会も全部です」
──今回のリキッドルームは失敗が許されないような気がするんですが?
プー「完全に許されない。失敗した場合、解散へと向かっていきます」
──今リキッドルームに向かって頑張っていることはありますか?
ユケ「とりあえずひとつひとつの現場を頑張るぐらいなんですよね」
のんちゃん「いろいろ改善していかなきゃいけないことばかりですし、平日なんでやっぱり来ていただけるように頑張らなきゃって」
──逆に言うと、もしリキッドルームを失敗しちゃうとどうなっちゃうんですか?
プー「のんちゃんが秋田へ帰る」
のんちゃん「危機です……」
──渡辺さん、チケットが売れるのがポイントなんですか、それとも会場に人がいないといけないんですか?
渡辺「もちろん人がいないとダメですね」
──僕が気にしてるのは、プーとユッフィーは大学に行っていて、ユケとのんちゃんはBiSに専念してるから、失うものに差があるということなんです。
プー「でも私、5年生確定ですよ。嫌なんですよ、自分が大学に行ってて現場をひとつでも逃すのが。その間に何か起こったら嫌で」
──さすがリーダー。ユッフィーは今大学で何年生?
ユッフィー「2年生です」
──教員免許を取るんですか?
ユッフィー「取りたいです」
──そうなると、教育実習があるじゃないですか?
ユッフィー「それはそのとき考えようっていうのが今の結論なんです。でも大学の事務所に聞いたら、卒業してからでも実習は行けるって言われたんです」
──アイドルを優先する覚悟なんですね……!
ユッフィー「そのほうがやっぱり今はいいかなと。でも、もし実習に行くのが話題になるような状況だったら行きたいなっていう感じです」
──「話題になる」とか、ユッフィーも悪い発想に毒されてきましたね。
ユッフィー「なんか研究員(BiSのファンの総称)の方がすごい応援してくださるんですよ。だからそういう暖かい応援をいただけるのであれば、どっちもやれるところまでは頑張りたいなろ思ってます」
──ユケとのんちゃんは失敗してBiSがなくなると暇になっちゃうじゃないですか、どうします?
ユケ「どうしよう。のんちゃん、一緒に高校行こうか!? 私、高校出てないんで。高専なんで高卒の資格ないんで就職できないですよ」
のんちゃん「困っちゃいますね。失敗しちゃったときのことを全然考えてなくて」
プー「でも解散したらバンドやりたい!」
──そんなに簡単に解散を受け入れないでください!
のんちゃん「たまにふと解散が頭をよぎる感じなんですよね。考えるんですけど全然想像ができない」
プー「ライターになりたいんでしょ?」
のんちゃん「いつかそれで……」
プー「弟子入りだ!」
──弟子にします。ユッフィーは入ったばっかりなのに、解散の質問とかどうかと思うんですが……。
ユッフィー「わからないです、リキッドのことしか頭にない。やれるところまではやりたいっていう気持ちです」
──では、読者の皆さんをリキッドルームに無理矢理にでも来させるためのメッセージをお願いします。
ユケ「リキッドに人が集まらないと解散フラグなんで、来なかったら一生見れなくなるわけで、だからとりあえず来たほうがいいと思います!」
のんちゃん「そのときしか見られないし、リキッドっていうのは最初からの夢であったので、来てもらえたらなって思います」
──その日はリキッドでしか見れないのんちゃんになりますか?
のんちゃん「がんばります」
ユッフィー「たぶんリキッドでやりたいって一生懸命やってる方って、BiSのほかにもいると思うんですよ。なのにぽっと出の私が立たせてもらえるっていうのがなんか申し訳ない気持ちもあります」
プー「そんなユフちゃんが脱ぐかもしれません、来てください!」
──じゃあ「My Ixxx」のPVの4人での再現があるかもしれませんね!
プー「1000人来た場合は見れます!」
ユッフィー「ありません!」
(取材・文=宗像明将/写真=川しま ゆうこ)
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