どんなに時代が進歩しようとも、今も昔も変わらないものがある。例えば、セックス。以前は特殊プレイと見なされていた行為が一般人にも浸透してきたという例はあるが(アダルトグッズの使用やアナルセックス等)、ペニスを勃起させ、濡れた膣に挿入するという基本的な流れは、狩猟時代も現代も変わっていないだろう。「大昔は鼻の穴に挿入していた」などということは断じてないはずだ。
しかし、セックスの基本的な流れは変わっていなくても、それに伴う行為で、明らかに変化してきているものがある。「コンドームの着用」だ。いま現在に比べて、ひと昔前のほうが、圧倒的に「ナマ派」の人が多かったのではないだろうか。相手が本命のカノジョだろうとセフレだろうと一夜限りだろうと、「ゴムが苦手」「俺の精子は薄い」など、なんらかの理由をつけてナマ挿入に固執する男性が少なくなかった。対する女性側も、「外出ししてくれるならナマでOK!」という、生ハメ派が今よりも多数存在した。これにはおそらく、「危険日、安全日」に対する認識の甘さが影響していたのだろう。「生理前は安全日で、生理後は危険日」というざっくりとした知識を鵜呑みにしている人がほとんどだったため、生ハメに対してオープンな時代だったのかもしれない。だが最近は、生理日予測サイトなどが「本当の意味での安全日などない」ということを世の中に発信するようになり、「生理前だろうと後だろうとコンドームは装着するべき!」という考えの女性が増えてきているのだろう。
先述のような避妊理由だけでなく、性感染症予防という理由からも、コンドームの装着を徹底する人が増えている。これは女性に限ったことではなく、男性も同様だ。今や、一般人とて性病感染のリスクが大いにあるご時勢である。風俗店で「先っぽだけでいいからナマで挿れさせてよ」などという、ハイリスクを背負おうという男性は滅多にいないだろう。それどころか、最近はゴムフェラの店舗が増えてきているという。ピンサロの常連客だという男性に話を聞くと、「感度が鈍ったとしても、ゴムフェラのほうが安心」とのこと。また、ゴムフェラ独特の感触にハマッてきたという前向きな男性もいた。
さらには、長引く不況のためか、「万が一のデキちゃった婚に対応できない」という理由から、コンドームの装着は欠かせないという意見の人もいる。遊び相手ではなく本命の恋人だったとしても、結婚資金・出産費用・子育てにかかるであろう諸々を考えると、一瞬の快楽に身を委ねることは出来ないという堅実派だ。
理由はなんであれ、コンドームは着けないよりも着けたほうがベターである。だが、問題は装着時の空気感だ。交際期間の長いカップルなら、間合いの取り方はツーカーなのかもしれないが、初対戦や回数を重ねていない女性とセックスする際は、装着中の空気感に悩んでしまうという男性も少なくない。AVで学習しようにも、コンドームの装着シーンは省かれているものがほとんどなので、参考資料が何もないということになってしまう。
そもそも、コンドームが枕元に用意されているラブホテルは別として、自宅で臨む場合は、装着前にもひと手間ある。コンドームがベッドからはるか遠くの引き出しだとか、脱ぎ散らかしたズボンのポケットに入れた財布の中に入っているため、フルチンでウロウロしなければならないという状況に陥ることもある。これは、事前に置き場所を換えておくか、ジョークを交えつつ笑いに転換させるという方法で乗り切るのが無難だろう。
さて、ここからがいざ装着である。少数派ではあるが、女性に背を向けて無言で装着するという男性もいた。これに対して女性陣からは「男性がコンドームを着けている姿に萌える」という意見もあったので、一度装着の様子をオープンにしてみては如何だろうか。但し、中には「ちゃんと着けているかガン見されると萎える」というデリケートな男性も存在する。こういった部分の価値観は、個人差があるので、まさに相性が重要といったところか。
また、女性が着けてあげるというパターン。コンドームの装着も、プレイの一環にしてしまおうというスタンスだ。これに関しても賛否両論で、「女性に着けてもらえると興奮する」という人もいれば、「風俗店でのプレイを思い出してしまう」という反対派の男性もいた。
このように、改めて考えてみると、コンドームの装着とはけっこう面倒なものである。しかし、その面倒なワンステップなど、どうでもいいと思えるほどの快楽が挿入後には待ち受けているのだから、多少の手間には目をつぶるべきであろう。
(文=菊池 美佳子)