相変わらず雑誌の苦戦が続いている。2011年1~6月の上半期、休刊した週刊誌と月刊誌は計102点にのぼるそうだ。とりわけ有名アダルト誌の不調が目立ち、1984年4月創刊の老舗『ザ・ベストMAGAZINE』(KKベストセラーズ)が『ON.』(同)『DOPE』(同)とともに休刊となった。一時は同社の売れ筋として姉妹誌を増やしたが、時代の流れには勝てなかった。
「インターネットの普及により無料でアダルト画像や動画が手に入る時代へと変遷を遂げました。やはり一時期に比べると、エロ本の販売部数は下がっています」(出版関係者)
そんな中、雑誌のグラビアや特集で唯一高い人気をキープしているのが”人妻”や”熟女”というジャンルだ。その証拠に、コンビニの成人向け雑誌コーナーは人妻をテーマにした雑誌であふれかえり、AVや風俗業界でも熟女を売りにしているところが増えている。AV女優が実年齢よりもあえて歳を上に申告する、いわゆる”逆サバ”も流行っているらしい。
このブームの背景には、「雑誌のグラビアをオカズにしていた世代が年を取って、自分の年齢に近い女性のグラビアを求めている」(アダルト系雑誌編集者)ということは一因としてあるだろう。そして、かつてAVで人気を博した女優たちの相次ぐ復帰や、中年になって初めて脱ぐ熟女が増えていることもある。バブル期を経て、ファッションやメーク、体型にカネと時間を費やすことを覚えた30~40代の中には美貌が衰えない女性も多い。それに、時代とともに風俗やAVの世界に対する精神的な障壁も低くなったようだ。
ただ、気になるのは、『児童買春・児童ポルノ処罰法』(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律)との関係を指摘する声だ。
「1999年に成立したこの法律により、アダルト系出版業界は、それまで主流だった女子高生をテーマにした写真を自粛し、余ったページと予算を人妻系モデルに注ぎ込むようになりました」(AV誌ライター)。
児童(18歳未満)が深刻で悲惨な被害者となる児童買春や虐待への規制に反対する人はいないだろう。しかし、児童ポルノに対する定義が非常に曖昧であることが問題視されており、実際、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」という一文がある。
堂々と制服や体操着姿の女子を表に出せない以上、法律的にはひとまず問題がない人妻や熟女が前面に押し出されるのは自然であろう。そして、それによって市場のニーズが変化したとしても不思議ではない。
03年以降は地方自治体で『青少年健全育成条例』のようなものが成立する動きがあり、これは実写だけではなく、マンガやアニメ、ゲームなどにも包括網羅的な規制をかけようという狙いが見え隠れする。こうなるとますます、人妻や熟女というジャンルが雑誌業界にとって頼みの綱になっていくのは間違いない。
(文=上条泡介)
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