27時間に及ぶテレビ番組のメインMCと27時間で100キロのマラソンを走ることでは、どちらが体力を消耗するのか。そんな他愛もない疑問に答えを出してくれたのが、今年の27時間テレビでメインを務めたナインティナインの二人が、番組終了後に揃って生出演した『やべっちFC』(テレビ朝日系)だった。
ご存知のように今年の27時間テレビで100キロマラソンを走ったナイナイ矢部は、番組終了2分前というギリギリの時間でゴール。細身の体をマラソンの疲労でさらに絞った感のある矢部を復帰後やけにふっくらとした岡村が抱きしめて27時間テレビはフィナーレを迎えた。
「引くほどきつかった」と100キロマラソンの感想を漏らした矢部は、その後『やべっちFC』の現場へ移動。23時30分からの生放送に挑んだ。普段なら矢部が1人で担当している番組だがこの日は90分の特番。矢部いわく「聞いてない」という、SP恒例「おかっちFC」が放送され岡村が登場した。
番組終盤に登場した岡村は「大人の事情」ということでスタジオには顔を出さず、この日ゲストだったなでしこジャパンの面々と局の廊下でトークを展開。しかし27時間テレビの後遺症か、岡村の声はガラガラで表情はどこかうつろな様子。ネットで立ち上がった番組実況スレでは、「もう休んだほうがいい」「見ていて辛い」など、疲労困憊の彼を心配する声が上がっていた。一方でスタジオの矢部は、疲れを隠すためか、ただ単にメイクが間に合わなかったのか、帽子をかぶりながらも、通常の放送と同じように流されるVTRに軽快なコメントを乗せ、さきほどまで27時間走り続けたとは思えない様子だった。
もちろんこの二人の違いは、それぞれの個人的な体力の差というものがあるから、スタジオでのMCとマラソンのどちらが大変かなどとは一概には言えない。だが、今年の27時間テレビはスタジオでさまざまなハプニングが起こった。マラソンでの体力の消耗より、精神的といえる疲労の蓄積は生半可なものではなかっただろう。以下、番組開始から時系列に沿って主なハプニングを抜粋してみよう。
【19:30~21:30頃】
「とんねるずVSめちゃイケ モジモジくん大激突SP」では、とんねるずが80年代のデビュー当時を彷彿とさせる大暴走。フジテレビ女子アナの生野陽子と加藤綾子に抱きつく石橋に、高橋真麻を何度もどついた木梨は消火器を噴射。岡村はもとよりめちゃイケメンバーは何もできず、まさにとんねるずの独壇場だった。
【21:30~23:30頃】
「ホンマでっか!? TV初生スペシャル」ではメインを務めた明石家さんまが「モジモジくんなんかより、こっちを長く放送せい」と発言。ジョークとも取れるさんまの発言はたいした問題ではないが、このコーナー中アシスタントとしてさんまの横に無言で立ち続けたマツコ・デラックスの表情が次第に曇っていく様はプロ意識に欠けるものとして写った。ただ、そのプロ意識の無さがマツコの真骨頂であり魅力と言える。
【23:30~24:30頃】
「すぽると!美女アスリート合コンSP」では、岡村と一緒に番組メインMCを務めたスマップの中居に加えジャルジャル福徳の3人が美女アスリートと3on3のバスケで交流と深めるという内容。バスケ中悪乗りした福徳が岡村にボールをぶつけ始めると出演者全員がそれに便乗。美女アスリートとして出演していた元バスケ選手の中山明日実のブログが炎上するなどのハプニングを引き起こした。
【26:30~28:30頃】
27時間テレビ毎年恒例となっている「さんま中居の今夜も眠れない」の後に放送された「真夜中の恋の若騒ぎ」では、出演したハライチ澤部がオリエンタルラジオに連れて行かれたクラブでイケイケのギャルに誘惑されてパンツがぐちょぐちょだったと暴露される。それに対して次長課長の河本が「おめえに飲ませるザーメンはねえ!」と放送コードギリギリのギャグを発した。一連の流れに対して中居は「できれば一緒に写りたくない」と発言するほど困惑した様子を見せていた。
【28:30~29:30頃】
「殿様のフェロモン」では伝説となっている「ハケ水車」を放送。女性の股間の下にハケの装着した水車を回転させるという企画に出演したAV女優が「性感帯は?」との質問に「クリトリス」と直球の発言。司会を担当した今田耕司が「今の発言は好きな食べ物と好きな動物です」とフォローを入れていた。
【10:00~11:00頃】
朝を迎えた27時間テレビ。ようやく下ネタ系のハプニングから脱した感はあったが、「ペケ×ポン川柳参観スペシャル」中に中継された矢部の100キロマラソンでスマップの香取が応援に行くと、矢部と交際中のTBS青木アナが出演している「サンデージャポン!」と絶叫。走っている矢部は苦笑いするしかなかった。
【13:00~15:00頃】
番組中にアナログ放送の終了を迎えた27時間は、午後から「クイズ!ヘキサゴンレディースガチ対決スペシャル」を放送。その終盤で行われた女性同士の相撲で、misonoと重盛さと美が対決すると、勢いあまって重盛の着ていた服が脱げるというハプニングが起こった。幸い下にキャミソールを着ていたが、恥ずかしそうにタオルを胸に当てる重盛の表情は予期せぬハプニングならではだった。
【17:00~18:00頃】
番組全体も終盤に差し掛かった夕方。「ネプキッズリーグスペシャル」では世界中から集められた超人キッズの1人、筋肉モリモリのルーマニアの少年ジュリアーノ君がコーナーの最後で芦田愛菜にキスをするというハプニング。コーナー中、何かとイジられていたジュリアーノ君のいたちの最後っ屁が炸裂した。
【20:00~21:00頃】
震災のあった福島県と岩手県にスマップが足を運んで「ビストロスマップ」を開催し、さんま率いる芸人集団が宮城県で復興ライブを行った後グランドフィナーレを迎えた27時間テレビ。100キロマラソンの中継をはさみながら流された矢部のVTRを見た岡村は感極まって号泣。「テレビで泣いたらさんまさんに怒られる」と言いながら涙を浮かべた。そんな岡村が矢部を迎えに行き併走する中、実況を担当するフジテレビの佐野アナがてくてくと歩きながら2人についてく様子が流されると中居が「佐野、絵に入るな!」と絶叫。ネットでも「飄々と歩いている佐野は確かに違和感があった」「佐野いらない」などと波紋を呼んだ。
以上今年の27時間テレビにおける主だったハプニングを抜粋してみたが、当然この中のいつくかは(たとえばジャルジャル福徳が岡村にボールをぶつけたことなどは試合だけなら2、3個あれば足りるところを無数のボールが用意されていたように)番組制作側の意図したものであることは間違いないだろう。だがジュリアーノ君が芦田にキスするなどは誰も予期しなかったハプニングだったと言える。そしてそんな生放送ならではのハプニングこそが27時間テレビというものの魅力だ。岡村が見せた涙が制作側の狙いだったかは分からないが、彼の堪えるように流す涙には昨年の病気療養の過酷さと相方である矢部への感謝と信頼という真実が滲んでいた。ハプニング満載で、大御所タレントたちに押され気味だったとの評価もあるが、番組のラストに中居が「ナインティナイン!」と何度も叫んだように、今年の27時間テレビはナインティナインの株を上げた内容だった。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/)
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)
『FNS26時間テレビ2010「24時間211km駅伝~絆~」
今年の27時間テレビもDVD化希望!!