外国人が客観的に見るHENTAI大国NIPPON!? 『エロティック・ジャポン』

erojapon0623_01.jpg※画像は『エロティックジャポン』左が日本版、右がフランス版。表紙はともにカラーだが……

 ロリータ、熟女、マンガ、アニメ、コスプレ、動物擬人化、BLなどなどもはや数え切れないほど、日本では性的嗜好が多様化している。もはや生活している我々日本人ですら、そのすべてを把握しているとは言い切れないだろう。そんな性風俗文化を、外国人はどのような視線で見ているのかという疑問に答えてくれる一冊の本が、この『エロティック・ジャポン』(河出書房)だ。 

erojapon0623_03z.jpg日本語版は表紙以外はすべて白黒になっている

 本書を書いたのは、フランス人女性ジャーナリストのアニエス・ジアール。日本の性風俗を通して感じた日本人像を自由な発想のもと描き出している。本国では日本産アニメの専門家としても名が知られている彼女だが、老舗SM雑誌「S&Mスナイパー」に連載を持っていたことから日本でもご存じの方もいるのではないだろうか。

erojapon0623_02z.jpg美麗な写真が大きく使われていないのは残念

 本書は学術的に検証されたわけではなく、彼女自身が日本人の多様な性癖・風俗について、日本古来の文学、神話、または神道・仏教など多種多様な宗教から生み出された”不可思議な日本人観”から現代性風俗を読み解こうと務めている。ここまで歴史を掘り下げて論じなければならないほど、我々の性文化は国外の人には異質に映るのだろうか? と思う節も多々あり、またこれは行き過ぎた解釈であろうというものも存在する。

 全11章からなる本書・第1章は、パンチラから始まり、ロリコン、ブルセラ、盗撮など、パンツにこだわりそこから派生していった性癖などを解説する「パンティ愛」、第2章では「恥の文化」とし日本人特有の性的フェティッシュや恥じらい・羞恥心について書かれている。日本歴史・風習から性風俗を読み解こうとしているのは理解できるのだが、第3章「水と蛸」内に記されているVシネマ『うらつき童子』の考察はいささか誉め過ぎだろう。『うらつき童子』は、触手を用い女性に淫猥なことを繰り広げる化物を退治するエクソシストものだが、掃除機のノズルで敵の触手が作られているなど低予算のチープな作品である。その主人公が、乳房を露に腰を振り、踊るように敵を打ち倒していくさまを『古事記』に記されている天鈿女命の天岩屋戸の物語と同種の武勇伝と並べるのはいかがなものだろうか。

erojapon0623_04.jpg写真も見たいという方はフランス版を

 第5章「暴力」の一項目「はらわたを見せれば、その人がわかる」では、正婦人科医が使っている膣鏡、クスコを大人の玩具として使っていることを、女体の神秘を探ろうとする覗き趣味の極地としている。これを『日本書紀』に記述されている武烈天皇の好奇心ゆえに妊婦の腹を切り開き、子宮と赤子を検査した事例に結びつけるのはいき過ぎた解釈だろう。さらにそこから”腹”を中心に話が及び、アジア圏の人々の感情と感覚の中枢は腹にあると仮定し、「太っ腹」・「腹を割った」・「腹を見せない」などの慣用句を説明し、”自意識と感情・至高のシンボルであるはらわたをさらけ出すことで生命を捧げ、自死を遂げる。”と最終的に江戸時代武士の死に様を例に上げる”切腹”にまで話しが及んでいる。

このように全編を通して、あまりにも真面目に日本のエログロナンセンスを解釈しようとしているがため、日本人が真面目かつ不真面目に作ったエロス文化を古くから伝わる伝統と結びつけ解釈しようともがいているさまが本書からは見受けられる。それでも日本の文化に染まりきっていない者の目を通した際、日本性文化がいかに特殊な進化を遂げているのかが理解できる一冊だろう。本書を手に取り、「HENTAI大国・日本」が海外でどのような形で伝わっているのかを知るためにも一読しておくのもいいのではないだろうか? もしかすると、我々は夜な夜なトンでもないことをしている民族だと思われているのかもしれない。
(文=明日春人)

『エロティック・ジャポン』

 
エロトリビアの宝庫!

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