今や希少! 都内某所でアダルト系自販機を発見!!

adaltjihanki0621_01_02.jpgアダルトグッズやローションなども売られている 店舗よりも高い

 アダルト系の自動販売機といっても、今では馴染みが無い人の方が大多数であろう。だが、かつては都市部から郊外まで、至る所にその手の自販機が置かれていたのであった。

 アダルト系自販機が増え出したのは、1970年代前半頃からだった。当時、東京雑誌販売(東雑)という会社があり、市販のマンガ雑誌などを自動販売機で売っていた。ところが、この東雑に雑誌が供給されなくなってしまった。詳細は不明だが、一説には東雑が版元によって設定された発売日よりも早く自販機に雑誌を入れて売ってしまったため、怒った版元などが雑誌を卸さなくなったためだとも言われている。

 困った東雑は自社で商品開発することを決め、アリス出版やエルシー企画といった制作会社を設立。アダルト系の写真誌(グラフ誌)や、読み物などを盛り込んだ実話誌を製作しては自社の自販機で売っていた。いわゆる自販機本である。これが男性諸兄の人気を呼んで大ヒット。3~5日に1冊という製作期間で大量生産された自販機本はアダルトメディアの代表として認識されるようになり、アリス出版は新潮社や岩波書店などと同様に、あるいはそれら以上に知名度の高い出版社として知られるようになった。

 しかし、78年頃にビニ本が登場すると、次第に自販機本の人気にも陰りが見え始め、さらに80年代半ばにアダルトビデオが普及するようになると、男性諸氏からの人気も低迷。80年代末にはほぼ完全に姿を消してしまう。

 アダルト自販機も自販機本全盛の頃には主要道路沿いや繁華街をはじめ、郊外の住宅街まで津々浦々に見られたが、やがて悪書追放の風潮とともに世間の風当たりが強くなり、テレビのワイドショーなどでも取り上げられ、その姿が少しずつ見られなくなっていった。

 そのアダルト系自販機だが、前面に商品が陳列したやや大きめの販売機で、昼間は中の商品が見えないようにマジックミラー効果のある銀色のシートで覆われている。それが、夜間になると内側から電灯がついて商品が見えるようになる仕組みである。

adaltjihanki0621_03.jpgアダルト自販機 昼間は中が確認できない
adaltjihanki0621_02.jpgアダルト自販機 夜になると電灯が灯る

 この70年代の遺産ともいえるアダルト自販機だが、郊外などにはまだわずかに残っている。写真で紹介するのは、都内某所で稼動していた販売機だ(2011年5月稼動確認)。場所は裏路地に面した閑静な住宅街。形状は、往年のものと変わりなく、暗くなると明かりが灯る。だが、売られているのは自販機本ではなくアダルト系のDVDだ。「生××」「無××」などと、やたらと過激なキャッチコピーが躍るが、その真偽は不明。また、DVDだけでなく男性用アダルトグッズやローションなども売られている。すべての商品について、価格は都内のアダルトショップなどに比べてやや高めに設定されている。

 実は、自販機本衰退後も、商品をマニア専門誌やアダルトビデオに変えて、アダルト自販機は細々と生き延びてきた。今では、DVDが主力商品のようである。よく探せば、郊外の幹線道路沿いや住宅街の奥まった場所などに設置されている。

adaltjihanki0621_04.jpg売られている商品 雑誌ではなくDVDだ

 この日、購入者が来たら感想を伺おうと2時間ほど張り込んでいたが、ついに自販機に近づく人影はいなかった。
(文=橋本玉泉)

『昭和性風俗史 ビニ本』

 
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