2003年あたりからコスプレをやり始めた筆者だが、コスプレ業界は狭い。イベント主催者、コスプレイヤー、カメラマンなど、目新しいものや目立っている人の情報はすぐに話題に上る。そんな業界に06年ごろ彗星のごとく登場した美少女がいた。すらりと伸びた長い手足、痩せ形の体形に不釣り合いな豊満な胸、くっきりとした目鼻立ち。それが今回インタビューする「亜羽音」ちゃんだった。
彼女くらいのルックスならば、芸能事務所からのオファーがあってもよいのではないだろうか? コスプレイヤーがタレントへ転身するという話はたまにあるが、AV女優に転ぶ話の方が圧倒的に多いのが現状だろう。しかし、とにもかくにもコスプレ業界にはダイヤの原石がごろごろと転がっているのだ。
彼女自身、撮影会を開き、自主制作コスプレ写真集を販売しているということは、少なからず「アイドル」というポジションに興味があるのではないだろうか? そこで今回は、彼女に対して抱いていた数々の疑問を「インタビュー」という形でぶつけることにした。
──そもそもコスプレを始めたキッカケは何だったのかな?
亜羽音 高校の時に、ギャルグループとオタクグループで分かれたりするじゃないですか? それで私、とりあえずオタクグループに入れてもらったんです。ギャルより話しやすいから……。私自身がおとなしいんで、オタクグループなら居心地よさそうかなって。そこでそのオタク友達にいろいろ薦められて、アニメとかに興味を持つようになって……。高校卒業後にその友達に衣装を借りてコミケに一人で行ったんです。それが初コミケで初コスプレだったんです!
──え! 初めてのコミケで一人で行くのも勇気あるけど、それでコスプレもしちゃうなんて…!! ちなみに何のコスプレしたの?
亜羽音 『ちょびっツ』(講談社、TBS系)のちぃです。CLAMPが好きだったので。
──ああっ、コスプレ初心者なら手軽にできるコスプレだね! 初級編みたいな。ちなみにコスプレで、自分が何のキャラをするか選ぶ基準ってあるのかな?
亜羽音 実際は作品が好きで、そこから入るものもあります。キャラからと作品からと半分半分くらいです。『FF』とかは完全に世界観やらストーリーが好きでコスしてます。『FF』愛してます! 格ゲーはキャラの見た目とかで選ぶかも。あわせ※でやってほしいって言われてする時もあるんだけど……、本当のこというと好きなキャラ以外はやりたくないかもしれんです。どっちかっていうと同じキャラであわせしたっていいじゃん!って思う人なので。やっぱり、どちらも我慢しながらやるのはいやですもんね。
(※あわせ=コスプレ合わせの略。コスプレイヤー同士が同じ作品で担当キャラを決めてコスプレを楽しむこと。例:「私、悟空やるから、○○ちゃんベジータやってよ! ドラゴン○ールあわせしよう!」)
──キャラから入る派か~。格闘ゲームだと不利になるタイプだね! でも、自分に合う合わないはコスプレイヤーのキャラチョイスでは重要だよね。この間も、ちょっとぽっちゃりしたレイヤーさんが『デブプラス』(※デブ専エロゲー)のコスプレしてて、今までの固定観念をぶち破る感じと自分のウリが分かってるところが素晴らしいと感動したよ。あと亜羽音ちゃんは、コスプレ衣装屋さんとか、イベントコンパニオンとかいろいろなお仕事をしてるけど、なりたい夢って何?
亜羽音 うーん、お嫁さん……キャリアウーマンもいいな……結構変わるんですよね。でも、どちらも「幸せになること」が目標です! 後悔しないように生きたいかな……。
──後悔しないように生きる。なんかいきなりズーンときますね。えっと……、コスプレに限らず幅広くモデルのお仕事をしてるのを拝見して、芸能方面に憧れがあるのかなって勝手に勘違いしてました!
亜羽音 うーん、芸能はまったく興味ないわけでなくて、その時々「こういう仕事あるけどやる?」って言われて、ちょっと面白そう! と思ったらやる感じで……基本好奇心旺盛です!! ニュアンス難しいですね。でも写真は大好きだからやっていきたいです☆ 撮られることがというよりは、作品に自分がいるのがうれしいというか……。芸術的なのも撮ってみたいです。カメラマンさんによってクセがあって、それを分析? するのも結構好きです。
──芸能界は厳しい世界だよ……? うーん、ちなみに、こういうセクシーな写真についてはどう思うの?
亜羽音 セクシーなのについては仕事的な意味もあるけど、女性の体を芸術ととるか否かということになってきますね……。受け取る人間次第というか。私はキレイでスタイルのいい女性は大好きで私自身グラドルの写真集を何冊も持ってます(笑)。 あと好きなレイヤーさんのROMも買ったりしてますし、いやらしいとは感じず単純にキレイ! と思う人間なので……自分も同性の方にそう思ってもらえるようになりたいです。
──確かに。井上晴美のヌードは裸なのにやらしくなかったもんね。あれがアートなのかな……と思った。いろいろな意味ですごくもったいないと思ったけど。ああ、話が飛んだね。家族はどこまで活動のことを知ってるの?
亜羽音 母はコスプレも写真集も全部知ってます。「一線は越えないようにね」って言われてます。父は多分知ってて黙認してる感じですね。
──セクシーなポーズの一線って、どのへんなの?
亜羽音 セクシーポーズの一線は、モザイクあるかないかのところかなぁ……。自分としても曖昧な部分はあるかなぁ。キャラの性格にもよるかもしれないです。例えばおとなしい幼女キャラが着エロしてたらなんかエロいなぁと思うんですが、(私は)モリガンやシェリルみたいなSキャラが脱いでても、あんまりいやらしくない気がする……。むしろカッコイイような気がする。 あとは、やる人によってエロくなるか決まるのかなと思う。道具使ったり、体に塗ったりとか? あと前誰かに言われたんですが、「ぽっちゃりしてる人が露出するといやらしく感じる」そうです。 ムチムチ感が……。私のは「亜羽音さんはスリム?だから露出してもそんなにいやらしくならないね」って言われたことがあって、そうなんだと微妙な気持ちになったことが(笑)。
──それはすなわち、ぽっちゃりロリがエロいことをしていたらサイコー! ってことか。わっ、分かるわ……。確かに亜羽音ちゃんが露出してても水着モデルか何かみたいだしなあ。コンビニで水着写真でも18禁コーナーか女性ファッション誌コーナーかの違いというか。ちなみに夏コミの予定は?
亜羽音 『サムライスピリッツ』のいろはと、水着グラビアっぽいものを作れたらなあって思ってます。
夏コミ発売予定のサンプルを独占入手! 先行公開!!
夏コミ配置 【土曜 東地区「カ」-09b「はねきち」】
──いろはは根強い人気だからね! グラビアもかわいい! 今日はどうもありがとう!
コスプレを始めてから、いろいろなカメラマンさんやコスプレイヤーさんに話を聞いてきたが、コスプレ界にはさまざまなセミプロがいる。本職じゃないのに写真の腕がプロカメラマン並みだったり、OLさんなのにグラビアアイドル並みの容姿だったり。コスプレ業界の中には優劣をつけたがる人がいて、コミケで列ができたからすごいとか、メディアに多く取り上げられてるからすごいとか、タレントになったらすごいとか、ドコソコの企業の公式レイヤーになれたからすごいとか、それぞれの価値観で業界ヒエラルキーが出来上がっている。
私は彼女と詳しく話す前は「なんで芸能界いかないのかなー、もったいない」と私の価値観で見ていた。しかし、取材を終えて「それが幸せとも限らないものだ」と頭を小突かれた感覚に陥った。
知名度が上がったりすれば、今までよりも多くの人に見られ、ファンの数と比例するようにアンチも増える。万人に愛されるのは難しい。自由も利かなくなり、一つ一つの発言にも注意をするようになるだろう。それで幸せならいいが、コスプレ界という小さなコミュニティーの中でだけファンと触れ合っているのも幸せのひとつの形である。
(※これはROMレイヤーというコスプレROMを販売しているコスプレイヤーに限る話であり、他の男装レイヤーさんや、完コス作品愛レイヤーさん等に当てはまる話ではありません)
それに、そんな素人さんがエロかわいい写真を直接売ってくれるというのに、手が届かない存在になるのは嫌だ。会いに行けるアイドルが総選挙とかしちゃったり、ものすごい勢いでファンが増えちゃったらうれしい反面、少し悲しくなる。なので、このままの亜羽音ちゃんを応援していこうと思う。
しかし、最後に亜羽音ちゃんはこう言って去っていった。
「お仕事受付中ですので、よろしくお願いします!」
最後まで不思議……というより少女のような無邪気さを持つ女の子でした。
(取材・文=花邑沙希/http://d.hatena.ne.jp/hanamura_saki/
取材協力:亜羽音「あはねのひみつ基地」/http://ahaneco.blog112.fc2.com/
コスプレってイイですよネ!