世は男の娘ブームである!!(断言)
女の子にしか見えない美少年や女装した美少年を指す「男の娘」という言葉は、ボーイズラブ系同人誌などの世界を中心に2000年初めごろから使われだした。いまやボーイズラブに限らず、男性向け成年コミックでも一つのジャンルとなっている男の娘だが、2次元から飛び出したような現実のかわいい男の娘たちも数多く登場し、専門誌が創刊されるほどの人気となっている。
5月28日、時代の最先端を行く男の娘たちの実態を探るため、都内最大級の男の娘イベント「女装ニューハーフ プロパガンダ」に潜入した。
同イベントは新宿・歌舞伎町の元グランドキャバレーである風林会館ニュージャパンで毎月最終土曜日に開催されているクラブイベント。女装・ニューハーフ・男性・女性の交流を主題に、ステージではDJタイムやライブ、ダンスなど多彩なパフォーマンスが繰り広げられる。
この日は、女装美少年総合専門誌 「オトコノコ時代」(マイウェイ出版)の編集部が主催する「オトコノコ☆ナイト」との合同イベントということで、より一層のカオスぶりと盛り上がりを見せていた。
ニューハーフ美女やオタ芸集団を伴った地下アイドルのライブ、男性グループの肉体美パフォーマンス、カルト的な人気を誇るガールズバンド「ぐしゃ人間」のライブなどが行われ、DJタイムにはトランスやアニソン、アイドルソングなどに合わせてニューハーフや女装子たちが踊り狂う。あまりにもカオスな異次元空間が展開されていたが、参加者たちは一様に笑顔で自由に楽しんでいた。
参加者の顔ぶれを見ると、男の娘やニューハーフだけでなく、普通の男性や女性の姿も多い。男の娘への取材として来場者に声を掛けた後に「わたし、女性ですけど……」と言われて気まずい思いをする事態が頻発し、何度も冷や汗をかいてしまった。逆に、絶対に女性だと思っていた人が男の娘だと分かって驚愕することもあり、性別とは何なんだろうと考え込んでしまいそうになる。つまり、女性と見分けがつかないほど男の娘たちのレベルが高いのである。
人気動画サイト「ニコニコ動画」も男の娘カルチャーに注目しており、男の娘バンドの演奏やグラビア映像などを配信する「男の娘☆ちゃんねる」が5月16日からスタート。今回の開催から「女装ニューハーフ プロパガンダ」の模様を生配信しており、会場に行けない人でも雰囲気を楽しむことができる。
イベントの主催者にして超美形ニューハーフであるモカさんにインタビューし、このカオス空間の正体を探った。
──「女装ニューハーフ プロパガンダ」を主催しようと思ったきっかけは?
モカ きっかけは4年前の夏、わたしが女装さんやニューハーフさんの友達が欲しいと思ったことが理由です。それで、新宿で深夜開いている喫茶店を借りてオフ会を開催することにしました。そしたらネットや噂を聞きつけた女装さんやニューハーフさんが100人ぐらい集まっちゃって、店内に入りきらないので半数以上の方を帰してしまったというのが第一回の開催でした。それから、参加者の要望に応えて毎月新宿で開催するようになり、現在は400人近くの人が集まる超カオスなイベントになったので、おかげで友達は数えきれないほど増えました~(笑)。
──このイベントを維持していくことに、どんな意義を感じてますか?
モカ ん~、わたしが主催したイベントがたまたま時代に合って大きくなってしまっただけなので、もしイベントをやめてしまっても、また似たようなイベントができると思うのです。だから、無理に維持していかなければ! という意識はなくて、わたしが毎月楽しみにしているから開催している感じです。もちろん、楽しみにしている参加者のみなさんや出演者やスタッフが、楽しい場所を作ってくれて感謝してるから、わたしもみんなの期待に応えていきたいなって思いますけどね。プロパガンダの意義としては、みんなが楽しんでいるうちに意義になっちゃってると思います。
──ご自身の女性としての目覚めをお聞かせください。
モカ 目覚める瞬間って多分ないんじゃないかな。わたしは今でも曖昧な感覚だし、好きなときに好きなことをしているだけです~。多分、頭で考えて「好き」を見つけているんじゃなくて、純粋な気持ちから「好き」なことをしているだけだと思います。
──女装趣味や心が女性である人たちの多くは、本来の自分を隠して日々を生きざるを得ないことが多いと思われますが、「自分らしく生きる」ということについて、どう考えていますか?
モカ あきらめずにうまくいく方法を考えて努力することがいいと思います。って、答えても参考にならないはず。「自分らしく生きる」には、もっとキレイになったらいいです。注げる全パワー・全時間をキレイになるために費やすべきです!(笑)
──イベントの今後の展望はありますでしょうか?
モカ イベントは状況に合わせていくつもりで、私からこうしたいというのは今はないです。それよりも参加者がどんどん増えていって、カオスになっていく様を見てどうなるんだろうと、こっちが期待してしまいます。今後の展開については、女装文化がどんどん進化していて、それが面白いな~と感じているので、より進化させていくきっかけを作れたらと企んでいま~す。そのために、2011年6月中旬ごろに「最先端ガールズ」という女装のすべてが詰まったポータルサイトをオープンする予定です。
■女装革命ポータルサイト「最先端ガールズ」 http://saisentan.jp
※6月中旬オープン予定
いまだにニューハーフやゲイ、女装趣味などに対する差別意識は社会に残っており、性別の悩みは深刻になりがちだが、モカさんは拍子抜けするほど前向きで純粋な答えをしてくれた。社会の枠にとらわれずに「自分の心に正直に好きな格好をして好きに楽しめばいい」という自由な発想こそが、日ごろはマイノリティーとして悩んでいる人々を笑顔にして救うことになるのかもしれない。その発想を体現しているのが、このカオスなイベント空間なのではないだろうか。
(取材・文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops)
■都内最大規模女装イベント「女装ニューハーフ プロパガンダ」
http://propaganda-party.com
ヤバイ…ハマリそう…