三島由紀夫没後40周年で三島ファンの歴女が急増か

 昨年2010年の11月25日は、作家の三島由紀夫が没してから40年に当たるということから、関連書籍や雑誌の特集記事、座談会や講演会、展示などといった、三島を特集した企画が相次いで行われた。出版物だけを取っても、いろいろな角度から三島文学を再検証した『中央公論特別編集 三島由紀夫と戦後』(中央公論新社)から、三島の人物像に迫る『君たちには分からない「楯の會」で見た三島由紀夫』(新潮社)など、実にさまざまだ。

 こうした流れの中で、昨年末からいわば三島ブームのような状況が続いている。そして、そのブームの影響を受けるような形で、いわゆる「歴女」の中にも三島のファンが増えつつあるというのだ。

 ある会社員の男性(30代)は、某所で行われた三島をしのぶイベントに出掛けたところ、いつもとは違う光景に驚いたという。

「その集会は毎年行われているんですが、どちらかというと硬派の人たちが集まるんですよ。いわゆる、右翼の人たちとか。それが、そういう筋骨たくましい男性に交じって、キャピキャピした若い女性がいるわけですから、いや戸惑いましたよ」

 いわば場違いな女性たちにも見えるのだが、「三島先生、大好きです。小説も読みました。最高です」と褒めまくりなので、むげに扱うこともできなかったという。

 ひと口に歴女と言っても、その嗜好や行動パターンは多種多様だ。しかし、三島もそれぞれの歴女の好みに対応できるような幅広い側面がある。『金閣寺』(新潮文庫)のような芸術的な観念を主題にしたような作品だけでなく、『潮騒』(新潮文庫)のような青春恋愛小説や、『永すぎた春』(新潮文庫)や『純白の夜』(角川文庫)といった、女性読者を想定した作品も少なくない。また、『仮面の告白』(新潮文庫)には主人公が親戚の少女から受け取る手紙がミッキーマウスの便せんに書かれているなど、身近な物を登場させることによってリアリティーを印象付けるようなテクニックも心得ている。また、セックスや同性愛を格調高く表現した描写も多いことから、いわゆる腐女子的なニーズにも対応できよう。さらに、整った目鼻立ちとボディービルやボクシングで鍛えた身体や、スタイリストたちからも賞賛される抜群のファッションセンスなど、ビジュアルの点も魅力的だ。

 ある三島ファンの女性(年齢不詳・20代前半か)は、三島について次のように話す。

「すごく男っぽい筋肉質のイメージがあったんですが、恋愛とか女性の心とか、ものすごく繊細なことを小説にしているんですよね。感動です」

 ほかにも、割腹自殺という最期を、あたかも戦国武将のようだと見る歴女の面々もいるようだ。三島も、武田信玄や上杉謙信、あるいは坂本龍馬や新選組の面々のような歴史上の人物として、歴女の皆さんに思いを寄せられる対象となっていくのだろうか。
(文=橋本玉泉)

『歴女 私の愛する戦国武将』

 
私の愛する文学者とかもできそうね

amazon_associate_logo.jpg

men's Pick Up