1週間ほど前、インターネットで話題になったが、「ゲイであることを理由に死刑にできる法案」が国会に提出され、可決されそうだという驚くべき知らせが報じられた。
場所はアフリカのウガンダ共和国(首都・カンパラ)。もともとウガンダには、イギリス統治時代に定められた同性愛を取り締まる法案が残っており、また国民の6割以上がキリスト教徒であることから、ゲイに対する偏見や差別的な意識が強い土壌であった。これまでにも、ゲイを擁護する人権活動家が自宅で惨殺される事件なども起きている。そこに、今回のゲイというだけで死刑を適用できる法律案が国会にかけられたということで、にわかに世論は沸騰した。
こうした動きは、以前から何度か見られていた。2009年にもやはりゲイに対する処罰の最高刑を死刑にする法案が提出され、世界中から批判が集中。そのためウガンダの法案推進派は死刑を終身刑に変更するなどしたが、アメリカの有力メディア「ワシントン・ポスト」紙が「野蛮な法案」などと非難するなど批判は収まらず、法案制定は見送りとなった。
ところが、約1年半を経た今年になって、再び同じ内容の法案が国会に持ち出されたというわけである。
その法案はウガンダ国民ならびにウガンダでの永住権を持つ者を対象として、同性愛者に罰則を科すというもので、HIVに感染した同性愛者が性交渉を持った場合には、最高刑が死刑というものらしい。
さらに問題となるのは「同性愛者を発見した場合の通報義務」である。例えば、ある人が同性愛者であることが判明した場合、その時点から起算して72時間以内に警察に通報しなければ処罰の対象となり、禁固刑が科せられることになる。また、同性愛者だと知っていながら医療行為などを施した医師や医療従事者に対しても、やはり禁固刑などの罰則が科せられるというのである。つまり同性愛者を処罰するというだけでなく、密告を奨励するような内容であるようだ。従って、仮に友人や親子、兄弟などであっても、同性愛者であることを知った時には「警察に知らせないと、おまえも刑務所にぶち込むぞ」という、実に脅迫的な法案の可能性が高い。
この知らせがインターネットで報じられると、たちまち世界規模での反対運動に発展。現地ウガンダのゲイ人権団体SMUGの訴えが取り上げられ、それに対して国際的なセクシャルマイノリティー団体が法案反対署名を呼び掛けるなどしたことにより、ウガンダへの抗議が集中した。
こうした動きがあってか、今回の同法案は見送りになった模様である。
この同性愛処罰法が何度も浮上する背景には、右派キリスト教勢力による動きや、政策面の不満から国民の目をそらさせたいという政府当局の思惑があるなどと言われている。
ともあれ、日本でも近年、異質な分子や少数派を排除しようという動きは見られる。ウガンダの例を、遠い国のまったく無関係な事件と見てしまうことはできないのではあるまいか。
(文=橋本玉泉)
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