インターネットが発達して、世界中のどこへでも瞬時に情報伝達が可能になった現代でも、信じられない風習が残っている国というのは多く存在する。ある所では常識でも、またある所ではとんでもない非常識に変わる。今回はそんなものの中でも、日本人の私たちなら誰でも「どう考えてもマジキチだろ……」と思わずつぶやいてしまうような例を紹介する。
【パプアニューギニアのヤモク村】皮膚切りの成人儀式
この村に住む部族の間では、ワニは神にも等しい存在なのだという。部族の若い男性だけに行われる成人の儀式では、ワニに近づくため、体中にワニの皮膚のような模様を刻み込むそうだ。
やり方はこうだ。まず、部族の男たちが、カミソリを使い、青年の胸、背中、足、腕、臀部などに傷をつけていく。そして、流れ出た血を汚れた布などで吸い取りながら儀式を進めるため、傷口から有害な菌が入り込んで死に至る場合もある。また、痛みだけでショック死してしまうことすらあるそうだ。それでも、この部族の若者は甘んじて受ける。なぜならそれが”風習”であり、また成人の儀式を受け入れないと、いつまでたっても女子どもと同じ扱いを受け、「大人」になれないからだという。
儀式が終わっても、痛みは何週間も続く。傷つけられた皮膚が腫れ、高熱にうなされる。2カ月ほど経って、ようやく傷が癒えたとき、青年の皮膚にはワニのような模様が刻まれ、硬くなる。そうして初めて、青年は「大人」になるのだ。
【南アフリカの一部地域】女性器切除・女子割礼
女性器切除、または女性器割礼と呼ばれるこの行為は、主にアフリカの赤道沿いの地域で行われてきた、女性の成人の儀式である。
方法はさまざまで、クリトリスを切除するもの、クリトリスと小陰唇を切除するもの、外性器と膣も含めて切除するもの、外性器を切除して膣を縫い付けるもの、など部族や地域によって多岐にわたる。この女性器切除を行ってしまうと、排尿障害や性交時の激痛、月経困難、難産などにつながるという。また、施術が不衛生な環境下で行われるため、HIV感染の被害も後を絶たない。また恐ろしいのは、これが昔のことではなく、現在でも当たり前のように行われている風習だということである。
【インド】未亡人の殉死行為・サティー
インドには、夫に先立たれた女性が、夫とともに生きたまま火葬にされるという習慣がある。これはヒンドゥー教の風習で、「サティー」と呼ばれ、貞淑な妻であることの証明として、紀元前から行われていたという。
夫が死ねば絶対に殉死しなければいけないのかというと、そうではない。しかし、インドでは、未亡人の生活はひどいものだった。貞淑であることが求められるために再婚は許されず、不吉な存在とされ、一生軽蔑されながら、家の中だけで過ごすしかない。そのため、周囲に「殉死した方が貞淑な妻としてあの世で幸せな暮らしができる」と諭されると、了承するしかないのだった。ほとんど強制のようなものである。
このサティー、20世紀の初めまでにはインド各地で禁止されてたが、今でも稀に行われることがあるのだという。
さて、いかがだっただろうか。どれもこれも、日本で行えば犯罪行為である。しかし、「そういう伝統だから守るべき」と言われてしまえば、真っ正面から「いや、悪いことだ」と言い切るのは難しい。常識とは、本当に不確かなものである。
(文=高野夏)
しかし、見た目とは裏腹に……