合成麻薬を一緒に使用した女性(当時30)の救命を怠り死亡させたとして、実刑判決をが言い渡されていた押尾学被告(32)。控訴審初公判が東京高裁で開かれた。
当時、保護責任者遺棄致死などの罪で起訴されていたが、東京地裁(裁判員裁判)は遺棄罪にとどまると判断。昨年9月、保護責任者遺棄など4つの罪で懲役2年6月の実刑判決が下され、これを不服として控訴していた。検察側は控訴していない。
控訴審初公判は今月22日の10時に開かれた。一審では一般傍聴席61席に対し傍聴希望者は1554人、倍率は約25倍だったが、今回は77席の一般傍聴席に対し、傍聴希望者は107人。2倍にも満たない倍率だ。押尾被告は出廷しなかった(控訴審は被告人に出頭義務はない)。
法廷で検察側は「被告人は女性の容体急変後、知人に電話をしていた」と、応急処置が遅れたことを指摘し、控訴棄却を求めた。弁護人は一審と同じく「女性は容体急変後、数分で死亡した。被告人は心臓マッサージなど適切な措置を取った」と保護責任者遺棄罪について無罪を主張し、麻薬取締法違反罪については執行猶予を求めていた。また、現在同居している押尾被告の母親が証人として出廷。昨年9月、まだ押尾被告の拘留時に面会したときの様子を涙ながらにこう語った。
「一瞬会ったときは……一般的に言われてるような平家の落人のようでした。『本当に申し訳ない事をした。自分が死んだ方がよかった』と土下座するように謝ってました。親として申し訳ない。(また薬物を使用したら)親子の縁を切るしかない」
また、弁護側からは女性の死亡時刻を不服として鑑定請求がなされていたが、裁判所は「一審で審理されている。控訴審で無にする必要はない」と却下した。控訴審はこの初公判で結審し、判決は来月18日に言い渡される予定だ。
押尾被告は今後どうなるか。まず一審は裁判員裁判だったことが、一審破棄の無罪判決となる展開を難しくしているところはあるだろう。08年に最高裁司法研修所が公表した「控訴審では、裁判員裁判の一審判決をできる限り尊重すべきだ」とする報告書があり、裁判所がそれに準じて判断を下す可能性があるからだ。最近ではチラホラと裁判員裁判の一審判決を破棄する向きもみられるが、この報告書はそこそこ影響力があるものと思われる。今回、検察側が控訴を断念しているので、一審判決より重くなる事はないが、弁護側からの鑑定請求が裁判所にあっけなく却下されたことも考慮すれば、押尾被告が望まないような結果となる可能性も否定できない。そうなれば、最高裁への上告が考えられるが、上告理由は控訴理由とは違って限定されており、量刑不当などの理由では上告ができないので、微妙なところである。
押尾被告が遺族のもとへ謝罪に訪れたという話は今のところまだ聞こえてこない。無罪を主張するからにはまだ謝罪はできない、という立場があるのかもしれないが、これは裁判的に不利になっている可能性もある。もっとも、裁判とは関係なく、拘置所で母親に見せた反省が本当ならば、すぐにでも遺族のもとへ赴いてもよいはずだが……。
ホントはどうなの!?