ももいろクローバー「ミライボウル」、Tomato n’Pine「旅立ちトランスファー」、
さくら学院『さくら学院 2010年度 ~message~初回盤「く」盤』、BiS『Brand-new idol Society』
3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震以来、毎日起きている間はずっとNHKばかり見ていたので、最初は周囲が「ポポポポーン」ネタを話題にしていても何のことか分からなかった。みんなストレスでおかしくなったのか……と思っていたらそれは自分のほうで、民放で放送されたACのコマーシャルのことだった。そのぐらいNHKのニュースしか見ていなかった。
さらに大地震の発生当日から、アイドルを含めてライヴやイベントが一気に中止もしくは延期となった。その影響は3月のみならず4月にまで及びはじめている。さらに、多くのメジャーレコード会社は、物流上の問題などから軒並み3月のCD発売を延期する事態となった。まだ新たな発売日の確定していないものも多い。特にライヴは、余震が続くなかでの安全性の確保、計画停電中の関東での節電問題のほか、どこか歌舞音曲への「自粛ムード」も漂いはじめた。
そこでここでは、最近のアイドルのリリース作品の中から注目作品を紹介していくので、ぜひ読者の皆さんにはせめてアイドル動画でも見て元気を出していただきたい……と、書いている私はNHKばかり見続けてぐったりしているのだが。とにかく、被災地の復興のためには非被災者が経済を回していくことも必要なので、ときにはアイドルでも見て元気を出していただきたい。
本誌で連載している「アイドル音楽評~私を生まれ変わらせてくれるアイドルを求めて~」では、「基本的に同じアイドルの作品を2作続けて紹介しない」という決まりがあるので、そのルールに沿って紹介していない作品もここでは取り上げていきたい。
まずは無事に3月9日に無事発売されたももいろクローバー「ミライボウル」(キングレコード)。ミュージカル調と思わせて予想外の展開をしていく楽曲。YouTubeにアップロードされているのは「Short ver.」で、初回限定盤AのDVDではドラマ部分が収録された「Long ver.」を見ることができる。
同じく3月9日に無事発売されたTomato n’ Pine「旅立ちトランスファー」(SMR)。穏やかながら高揚感をもたらす楽曲で、まさに春を感じさせる作品。全面プロデュースするagehaspringsの真価がいかんなく発揮されたメジャー・デビュー・シングルだ。公式動画はYouTubeにないので
GyaOでどうぞ。
3月23日に発売が予定されているBiSのデビュー・アルバム『Brand-new idol Society』(バウンディ)は、メンバーのUKが自らアポを取って決めたインストア・イベントが次々に中止になったものの、CDは予定通り発売されるとのことだ。次回の「アイドル音楽評~私を生まれ変わらせてくれるアイドルを求めて~」で紹介の予定。動画は『Brand-new idol Society』の収録曲「BiS」。
3月23日に発売予定だった、さくら学院のデビュー・アルバム 『さくら学院 2010年度 ~message~』(トイズファクトリー)は発売が延期され、執筆時点では「当面延期」とのみアナウンスされている。動画は収録曲から、シングル・カットもされていたさくら学院バトン部・Twinklestarsの「Dear Mr.Socrates」。元Cymbalsの沖井礼二が作詞、作曲、編曲を担当した見事な渋谷系アイドル・ポップス。
『さくら学院 2010年度 ~message~』初回盤「さ」盤
『さくら学院 2010年度 ~message~』初回盤「く」盤
『さくら学院 2010年度 ~message~』初回盤「ら」盤
4月6日発売予定のぱすぽ☆のメジャー・デビュー・シングル「少女飛行」(ユニバーサルJ)については、発売延期のアナウンスはない。通常盤のほか、各メンバーのジャケットの初回限定盤A~Jも発売される。動画の冒頭で歌われているのは、彼女たちの代表曲「Let It Go!!」だ。
4月13日発売予定の東京女子流のファースト・アルバム『鼓動の秘密』(avex trax)も発売延期のアナウンスはない。動画は、収録曲からセカンド・シングル「おんなじキモチ」。
このほか、4月27日発売予定のStarmarieのメジャー・デビュー・シングル「涙のパン工場コンセル・カマタ」(アスタエンタテインメント)も発売延期のアナウンスはない。そろそろビデオ・クリップが見たいところだ。
連日ニュースで被災地の映像を見続けると、被災者ではなくてもPTSD状態になってしまうこともあるという。被災された皆さんに心よりお見舞いを申し上げると同時に、こんな状況だからこそ「与えられた日常」を活力をもって生きていくよう心掛けたいと考える次第だ。
◆バックナンバー
【第1回】号泣アイドル降臨! ももいろクローバー「未来へススメ!」
【第2回】アイドルが”アイドル”から脱皮するとき amU『prism』
【第3回】タイ×ニッポン 文化衝突的逆輸入アイドル・Neko Jump
【第4回】黒木メイサ、歌手としての実力は? 女優の余芸を超える”ヤル気満々”新譜の出来
【第5回】全員かわいい!! 過剰なほど甘酸っぱく、幸福な輝きを放つ「9nine」のイマ
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【第9回】いよいよエイベックスが本気を出す!! 東京女子流という産業
【第10回】テクノポップが死んでも……Aira Mitsuki is not Dead!!
【第11回】アイドル戦争と一線を画す17歳美少女 そこにユートピアがあった
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【番外編】「ヲタがアイドルの活動を支えられるかどうかは、現場を見ればすぐに分かる」Chu!☆Lipsとチュッパーの幸福な関係
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