2010年に驚異的な売れ行きを見せたフェティッシュ写真集『SCHOOL GIRL COMPLEX』(イースト・プレス)。
風でスカートがめくれ上がった瞬間の太もも、思い切り背伸びした際に見えた白い脇腹、薄いワイシャツから透けて見える水色のブラジャーなど、漫然と過ごしていた学生時代にひっそりと堪能していた見えそうで見えないチラリズム。
これらの写真は、男性ひとりひとり違うであろうフェティッシュなツボをバッチリ抑えている。この作品で一躍注目を集めた写真家・青山裕企氏はその後、写真集『思春期』(ピエ・ブックス)でも独特のフェチ視線を存分に発揮。
この『絶対領域』(一迅社)では、ニーハイソックスとスカートの間にできる太ももの一部に焦点を絞り、なんとも言えないエロティックな1冊に仕上げている。
青山氏の作品がブームになるにつれ、類似の写真集は現在かなりの点数が出版されている。しかしこうした「フェチ心」や「エロ好奇心」をくすぐる作品はこの変態大国日本で、これまでにも数多く作られてきた。今回は、日常目にしているフツーの女の子たちの下着姿や、ぴっちり全身タイツ、拘束、そしてやっぱり学生などなど、いくつかの傾向を持った作品集を紹介したい。
青山氏の最新作と同じく”太もも”につくられる「絶対領域」を中心に集められた写真集。最近ではミニスカートやショートパンツが流行していることもあり、日常生活でも比較的容易に見ることができるエロポイントである太もも。
徹底して太ももだけを特写した『絶対領域』と異なり、こちらは見事な太ももをお持ちのモデルの顔も映っているため好みが分かれるところだろうか。
収録されているモデルたちは、秋葉原のメイドカフェで働くメイド。
そのためか、ニーハイソックスにもさまざまな趣向が凝らされており、リボンやレースがついたものや網目模様や薄手のレース地など装飾から素材にいたるまでこだわりが感じられる。
メイド服ならではの、フリル付きのスカートに挟まれ存在する絶対領域は、普段街で見かけるミニボトムの女性たちや女子高生のものとはまた違った趣があるだろう。
メイドさんの萌え~な魅力を再認識出来る1冊。タイトルに「メイド衣装編」とあり、また違った衣装での作品も多い。
ちょっと気になる可愛いあの子の下着はどうなっているのか、近くのショートカットのコンビニ店員は青い下着が似合いそう、ロングヘアーの子は白い下着、ちょっと粗雑な感じだからもしかして上下合わせていないのでは、などと妄想を募らせた男性も多いことだろう。
そんな日常生活で浮かぶ妄想を独特のビジュアルエフェクトを使い表現しているのが、この妄撮シリーズだ。
今作はこれまでグラビアアイドルが多く被写体となってきた妄撮シリーズとは異なり、「ViVi」(講談社)や「小悪魔ageha」(インフォレスト)など女性向けファッション誌の読者モデルが下着姿で登場。洗練された芸能人の美しさも捨てがたいが、半分素人と言ってもいい女の子を被写体に選んだことで生々しさが出ている。
何故に僕らは女子高生に引かれるか、それは、口にしたくとも出来ない禁断の果実だからだろう。もしも、運良く手にする機会が訪れることがあってもそれを口にしたとたん、神の怒りをかい、エデン(シャバ)からは追放されてしまう。
彼女たちと成人女性との垣根はどこにあるのか。実は、彼女たちを禁断の果実たらしめているのは、「制服」というこの甘美な衣装の魅力に過ぎないのではないだろうか。
この本は、そんな”制服に”焦点を絞ったイラスト集。全国津々浦々に存在する高校の制服の違いをセーラー服かブレザーかなどの大きな違いから、襟のありなし、スカーフ着用かまたはリボンなのか、そしてスカートの柄からひだにいたるまで、一見しただけでは分からない些細な違いが詳細に描かれている。制服フェチにはもちろん、学生にも楽しいスクールライフを送るための参考資料としてもよいのではないだろうか。
サディズム、マゾヒズムの代表格とされる人間の動きを奪う拘束。中世の拷問などに使われた恐ろしい敬具によって身体の自由を奪われた少女のイラスト集がこちらだ。
まず、特徴的なのは可愛らしい女性キャラクターすべてが着衣で自由を奪われているところだろう。
中世のドレスからメイド服、体操服、レオタードやアニメのキャラクターのような服装までよりどりみどりだ。
それに準じて、出てくる拘束道具もバリエーションに富み「ボールギャグ」、「拘束衣」と最近のAVでも見ることができるメジャーなものから、「異端者のフォーク」、「スペインの椅子」など名前を聞いただけではどのような器具なのか想像がつかないものや、果ては空想の触手まで揃えられている。
特別な道具などを使わずに縄だけで女性を縛りたいという緊縛嗜好の方には、縛り方がイラストつきで解説されているページもある。
日本が世界に誇る「HENTAI」文化の一種、「ZENTAI」こと全身タイツフェチ。人間がタイツを着ることにより、肉体の持つ生々しさが徹底的に排除され、空間の中に人間の形をした物体が表現されている。海や公園、神社などの場面で昼間に撮影されており、密室や暗闇などの特別な空間は使われていない。
日常の中に浮かび上がる、人の形をした「何か」に特別な興奮を感じ取れるかがフェティッシュを感じる境目となるだろう。
また、全身タイツは肉体に一定の圧迫感が加えられるため、プロポーションを整える働きもあり、肉体的たるみのないスッとした女性のシルエットを堪能することもできる1冊。
見るフェチ、着るフェチ、どちらもいるだろうが、着る者には、フィット感からくる圧迫感、拘束感が生じ、脱いだ際の開放感に繋がるとも言われている。
今やタイツフェチは国境を超えアメリカ、イギリスなどにも愛好家がいる。
「BUKKAKE」に続く日本から発信されたフェチカテゴリーのひとつとして頭の片隅に捉えておくのもよし。
日本が海外にも誇れる「OTAKU」文化にも負けない魅力を持つ、多数のフェティッシュ写真集。あなたの性癖を赤裸々に表現しているジャストマッチな1冊がきっとどこかにあるハズ。
(文=明日春人)