かつてAVがまだない時代、エロといえばピンク映画だった。このジャンルで、異彩を放った名物俳優、久保新二。出演作は800本以上にも及ぶ。当たり役となった『痴漢電車』(滝田洋二郎監督)や『未亡人下宿』(山本晋也監督)は大ヒットシリーズとなり、一世を風靡した。ピンクリボン賞主演男優賞やにっかつロマン大賞主演男優賞など受賞歴も数多く、まさにキング・オブ・ピンクという存在なのである。
そんな久保の波乱万丈に満ちた半生を描いたDVDがこの度、完成。『その男、エロにつき アデュ~! 久保新二伝』(マクザム)である。監督はピンク映画界の重鎮、池島ゆたか。女優陣は山口真理、日高ゆりあ、里見瑤子など。迫力満点の濡れ場シーンはもちろんのこと、当時のピンク映画の撮影秘話がぎっしり詰まった笑えて泣けるオトナの娯楽作品に仕上がっている。
この作品が作られたいきさつにいつて、久保は以下のように語る。
「昨年の5月に生前葬じゃなくて生前祭、お祭りみたいな感じで若松さん(孝二監督)や滝田(洋二郎監督)なんか呼んでやったんだけど、その頃に人生の区切りになるような映画を一本作っておきたいなと思って。監督は下火になってるピンクで100数本撮って頑張っていて、俺のこともよく知っている池島に、やらないかと声かけたら、『やらしてもらえるなら』ということで決まったんだね」
本当はフィルムで撮ろうと考えていたが、さまざまな都合でビデオ撮りとなったという。
「予算の都合がつかなくてね。撮影期間も丸々4日間。本当だったら先輩役者の、野上正義(故人)、港雄一も出るはずだったんだよね。でも、病院に入っちゃって。座っているだけでもと思ったけど、それも無理で。残念だったけどね。でも、やがて我々もそうなってくるんだから」
困難な状況でのスタートとなったが、画面からはそんなことは一切感じさせないテンポのいい笑いどころ満載の内容に仕上がっている。なかでも村西とおるとのやりとりのシーンは爆笑モノで、見どころのひとつといえよう。
「俺と村西は古いつき合いだから。あれはあれでよかったと思うよ。変に村西節で喋られたら、長いんだよあいつは。俺が(女優と)絡んでるシーンのとき、村西が『久保さん、久保さん、どうなりました?』なんて聞いてきたりしてるんだけど、あのへんは台本は無視。目で『ナイスですね、グーですね』って、ここで言えよって合図しても、言わねぇんだよあいつ(笑)。でも、仲間の村西が出てくれたってのは嬉しいよね」
濡れ場はもちろんのこと、その他のシーンにおいても頑張っていた女優陣についても、久保は大絶賛。
「みんなピンクやってる連中なんだけど、それとは違った味を出してたね。こいつらみんな凄いじゃんってさ。大蔵や新東宝でやってる芝居の2倍も3倍もいい芝居してるじゃない、自然にやってるじゃない。絶妙な芝居してますよ。むしろ俺が一番ダメじゃんっていうのが少しあったね」
ただ、久保にとって、自身の半生を振り返るのはいささか辛かったようだ。
「見てるとね、その当時の自分を思い出しちゃうんだよね。それもせつないなと感じるんだけど。俺にとっては娯楽じゃないんだよ。悲しい部分もあった」
とはいえ、作品の出来には満足の様子。そして今後は、自身の芸人たちとの交友関係を元にした作品の制作にも前向きとのこと。久保のピンク役者魂はまだまだ健在。さらなる活躍に期待したいものだ。
●タイトル:『その男、エロにつき アデュ~!久保新二伝』
●発売・販売元:マクザム
●発売日:2011年2月25日(金)
●品番:MX-423S
●価格:¥3,990(税込)
●規格:
カラー/16:9 ビスタ/片面1層/本編 約86分+特典 約31分
音声:1.オリジナル日本語〈ドルビー・デジタル・ステレオ〉
特典映像:久保新二 生前祭フェスタ
(C)『その男、エロにつき』製作委員会
●キャスト
久保新二『やる気まんまん』
野村貴浩『うた魂♪』
久保田泰也『アディクトの優劣感』
山口真里『団鬼六 女教師』
日高ゆりあ『くりいむレモン またの日の亜美』
里見瑤子『ナース夏子の暑い夏』
望月梨央『極妻任侠道~極妻一代邪道篇~』
竹下なな
小滝かれん『ルナベース 地球防衛軍女子部 小滝かれん少尉の妄想』
なかみつせいじ『奴隷船』
世志男『クジラ 極道の食卓』
村西とおる
写真出演:港雄一『荒野のダッチワイフ』/野上正義『快楽学園 禁じられた遊び』
●スタッフ
企画:菊池笛人『時空警察ハイペリオン』、久保新二
監督:池島ゆたか『肉体秘書 パンストのしたたり』
脚本:後藤大輔『新・監禁逃亡』
撮影監督:清水正二『奴隷船』
音楽:大場一魅『奴隷船』
編集:山内大輔『夫婦交換の虎たち~スワッピング・パーティー~』
久保新二オフィシャルブログ「アデユ~」
予告編はこちらから「MAXAM Official chanel」